コラム
公開日:2019.08.16
農業の中でも施設園芸における環境制御は技術進化が最も著しい分野です。
今回は、環境制御装置を導入したいけれどがたくさんあって、何から検討して良いかわからないという方のために環境制御の基本的な考え方等をご紹介します。
そもそもビニールハウスは、いわゆるパイプハウスであっても、植物を雨から守ったり保温したりと環境を制御するために存在しています。つまり環境を制御しようとする考え方は高価な装置を導入する・しないに関わらず、施設園芸の基本的な考え方にあるわけです。
現在、施設園芸分野で環境制御という場合、一般的には地上部の制御のことを指します。具体的には作物の周りの「温度・湿度・CO2濃度・光環境」の4つを調節することを言います。
天気を変えることはできませんが、光環境を制御できるポイントはたくさんあります。
被覆資材の素材、遮光(熱)ネットの遮光率、マルチの色、被覆資材の掃除する頻度、ハウスの柱の塗料といったもので光環境をコントロールすることができます。
「温度・湿度・CO2濃度・光環境」を制御する装置やシステムの導入を検討する前に、どの環境要因を変化させたらどの程度収穫量に差が出るのかという、環境と植物生理の基本的な知識を学んでおく必要があります。
生産技術や装置の開発が特に進んでいるトマト類は事例も豊富なため学びやすいです。私のおすすめ書籍を以下3点ご紹介します。
発行:(社)日本施設園芸協会/日本養液栽培研究会 共編
★「野菜園芸学の基礎(農学基礎シリーズ)」発行:農山漁村文化協会
「環境制御のための植物生理:オランダ最新研究」発行:農山漁村文化協会
例えばCO2発生器の導入を検討する前に、まずは圃場のCO2の推移を計測してみることをお勧めします。CO2濃度が低ければ、場合によっては数時間だけハウスを開け放ってしまう(外のCO2濃度は一般的に400ppm程度)ことで効果がでるかもしれません(例えば、促成栽培の場合は気温とのトレードオフになるかと思いますので慎重な検討が必要です)。装置導入する前に計測に基づいてできる実験はたくさんあります。
業者さんに環境制御に関する相談をする場合にはぜひ、導入実績のある農家さんを紹介してもらいましょう。使い勝手はどうか、実際に収穫量の変化はどうだったか等、生の声を聞くことが重要です。
まずは、制御すべき環境「温度・湿度・CO2濃度・光環境」についての概要を把握し、環境制御装置やシステムを導入しなくてもできることをやってみましょう。その上で、環境制御装置の導入を検討していくことが大切です。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。