コラム
公開日:2018.04.03
突然ですが、ヒトは水だけを飲んで生きていくことはできるでしょうか?
諸説ありますが概ね10日から1ヶ月ほどしか生きることができないと言われており、それ以上経つと栄養が足りなくなります。これは植物も同様で、栄養を与えずに育った野菜は色が悪かったり、実りが悪くなってしまうこともあります。人間がバランスよく栄養を取らなければ体調を崩しやすくなるのと同じく、植物も適切に栄養を与えないと健康に育ってくれません。
すくすくと病気に強い作物を育てるためには三つの肥料成分が欠かせないのです。それこそ、「肥料の三要素」と呼ばれるN(窒素)・P(リン酸)・K(加里)の三つです。
それぞれが植物の成長にどのような効果をもたらすのか確認していきましょう。
葉緑素の素となる窒素成分は主に作物の葉を大きく育てる効果があります。欠乏してしまうと作物の生育が遅れ、葉色が黄色がかってくるのが特徴です。しかし、逆に過剰に与えてしまうと軟弱になったり、徒長の原因となってしまうので注意が必要です。
窒素成分を含む代表的な肥料には、硫安や尿素などがあります。作物の収量や品質を大きく左右する肥料なので、与える時期や量を慎重に選びましょう。
リン酸には作物の花や実を肥らせ効果があります。トマトなどの果菜類と呼ばれる作物を作る際に大切になります。
代表的なリン酸肥料は過リン酸石灰や米ぬかなどがあり、欠乏すると下葉が赤っぽく変色し始め、実肥が悪くなるのが特徴です。
過剰に施肥してしまうと鉄と拮抗作用(キッコウサヨウ)を起こし、作物が鉄を吸収するのを阻害します。葉の葉脈だけを残して黄色がかって来たらリン酸の過剰施肥と鉄の欠乏症を疑うようにしましょう。
加里(カリ・カリウム)は主に作物の根や球根を肥らせ、根菜類を育てる際には決して欠かせない肥料のひとつです。カリウムが欠乏してくると、葉のフチから徐々に色が抜けるような枯れ方をするのが特徴です。また、加里はマグネシウムと拮抗作用があるため過剰に施肥するとマグネシウム欠乏を引き起こす原因となるので欠乏することより過剰に与えないように注意しましょう。
加里成分を含む肥料には、苦土石灰や塩化カリなど元肥として使用するものが多いのが特徴です。
ここまで解説してきたように、肥料成分には拮抗作用を引き起こすものがあります。肥料を与えたのに状況が改善されないときは、この拮抗作用が起きている可能性があります。
たくさん与えればよいのではなく、適量が最重要です。
作物ごとに定められた目安を守り施肥を行いましょう。
ライタープロフィール
【Sandersonia(サンダーソニア)】
花とスケートボードを愛するフリーライター。サンダーソニアとは好きな花の名前。
IoT技術による農業生産の革新と農協改革の今後に関心を寄せる。花屋、JA営農指導員を経て独立。生産から流通、花束やフラワーアレンジメントまで花の知識ならお任せを。