コラム
公開日:2021.05.06
葬儀や仏花に使われることが多く、日本の代表的な花のひとつでもある菊。最近ではマムと呼ばれる洋菊の需要を新しく作り出すという動きもあり、フラワーアレンジメントや結婚式などさまざまなシーンで選ばれているのをご存知でしょうか。
今回は菊農家を目指している方向けに、きれいな花を咲かせるために押さえておきたいポイントなどをご紹介します。
電照栽培とは人工的に光を当てて開花時期を遅らせることのできる栽培方法です。
日照時間が短くなると開花する菊の性質を活かした栽培方法で、年間を通した出荷が行えて安定した収入を得ることができるのがメリットです。デメリットとしては電照機器の導入にかかる初期費用がかさむことが挙げられています。
菊栽培では挿し芽で増やす方法が一般的です。挿し芽に使用する土は水はけがよい川砂やパーライト、バーミキュライトなどが混合されているものが適しています。湿度を保つためにトンネルを張り、強い光が当たって萎れることのないよう遮光資材をかけるようにしましょう。
菊は弱酸性~中性で肥沃な土壌を好み、排水性と通気性がよく保肥力の高い土で育てることが重要なため、堆肥や有機質肥料を使って土づくりを行います。堆肥には牛糞、稲わら、もみがら、腐葉土などを混ぜたものがおすすめです。施用量は10aあたり約3tが目安となっています。肥料食いと言われることもある菊ですが、過剰に施肥をすると病気の原因にもなってしまうので注意が必要です。
菊栽培では倒伏を防止するためフラワーネットを張る必要があります。また、菊の生育に合わせてフラワーネットを上げていく作業も行います。
たくさんの花を咲かせるため植え付け後、活着したら中心にある生長点を摘芯します。摘芯の細かな方法は品種によっても微妙に違ってきますが、小菊であれば摘芯後、芽の数が一株当たり3~4本になるように整理しましょう。
ここからは菊栽培において注意したい主な病害虫と対策方法についてまとめてお伝えしたいと思います。主な病害虫は下記の通りです。
主な病気 | 主な害虫 |
---|---|
・黒斑病 |
・アブラムシ |
●病気
菊は雨が多くなり低温気味になると病気が発生しやすくなる植物です。
病気が出てからでは被害が甚大になってしまうこともあるので、マンネブダイセンⓇやダコニールⓇなど病気に合った農薬を散布して予防することが重要です。また窒素過多にならないよう気を付けることも心がけましょう。万が一病気が発生してしまった場合は、発生個所を摘除するなど早めの対処で広がらないようにします。
●害虫
害虫を発見した場合には発生した害虫を判別し、それに合った薬剤を使用するようにしましょう。
また、同一薬剤を繰り返し使用していると抵抗性が付くこともあるので何種類かの薬剤を用意し、交互に使用することをおすすめします。
今回は菊栽培に欠かせない基本的な栽培方法のポイントをご紹介しました。
高品質な菊を栽培するには栽培管理に気を使わなくてはならない分大変ではありますが、やりがいのある品目に挑戦してみたいという方におすすめです!
▼参考文献
○土づくりを基本とした高品質なキク生産,青森県
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/sanzen/files/jireisannpachi.pdf
○令和元年度花き産業成長・花き文化振興調査報告書の公表について 2-2.主要品目の状況,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/pdf/2-2_zittaityousanokekka.pdf
▼参考サイト
○日本の華「キク」,公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会
https://www.jataff.or.jp/kiku/kiku05.htm#kaikaki
○病害虫とのつきあい方, 菊の豊幸園
https://www.rakuten.ne.jp/gold/hokoen/growth/pesticide.html
○農薬の検索,農薬インデックス
http://agro.jp/search.php?searchbyparam=1&sakumoku=&sakumotsu=49&byogai=&gaichu=&zasso=
○電照栽培とは?育てやすい作物と導入のメリット・デメリット,セイコーエコロジア
https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single068.html
○いきいき菜園生活 「小菊」の栽培方法,JA京都
https://jakyoto.com/garden/%E3%80%8C%E5%B0%8F%E8%8F%8A%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%A0%BD%E5%9F%B9%E6%96%B9%E6%B3%95/
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。