コラム
公開日:2021.07.16
夏イチゴは6~11月にかけて生産されるイチゴのことで、「夏秋イチゴ」と呼ばれることもあります。イチゴはケーキの飾りとしても使用され通年で需要があり、日本での生産が減少される夏場は主に外国からの輸入に頼っている状態です。しかし、輸入品は輸送に伴う品質面で不安が多いため、近年は国産の夏イチゴのニーズが大きくなっています。 そこで今回は、夏イチゴの栽培にチャレンジしようと考えている方へ、日本における主産地である長野県安曇野市の事例をはじめ、おすすめ品種や適した栽培方法をご紹介します。
長野県安曇野市と松本市を包括するJAあずみでは元々キャベツなどを生産していた農家が高齢化に伴い軽量品目への転換を視野に入れたことをきっかけに、2004年から夏イチゴの栽培が開始されました。 2012年には製菓メーカーのシャトレーゼとの契約生産をスタートしたことから栽培面積が急速に拡大し2018年には生産者数48戸、栽培面積6.5ヘクタール、年間売り上げは3.7億円を達成しています。
イチゴには一季成り性のものと四季成り性の二種類があります。ここでは夏イチゴの栽培に適した四季成り性のおすすめ品種とその特徴をご紹介します。
すずあかねは主に岐阜県や長野県で栽培されています。果実はやや大きく、ふっくらとして丸みの帯びた形と濃い赤色で、果肉は白くて空洞ができづらいのが特徴です。香りと酸味は強めですが甘みも感じられ夏イチゴの中では美味しいと言われている品種です。
6月上旬~11月初旬
なつおとめは栃木県が開発した夏イチゴの品種です。果実の大きさはそれほど大きくはならないですが、果実全体がきれいに赤く色づくことが特徴で中の空洞ができづらいといった特徴を持っています。糖度と酸味のバランスがよく、柔らかくジューシーな食味で夏イチゴとしては優秀な品種です。
7月中旬~11月中旬
ペチカほのかは北海道で開発された夏イチゴの品種で、なつみずきと呼ばれることもあります。きれいな円錐形でつやがあり、甘みと香りが強くみずみずしい食味が特徴です。収量性や秀品率も高く北海道ではよく栽培されています。
7月上旬~9月上旬(生産地:北海道)
四季成り性イチゴは土耕栽培、養液栽培ともに可能ですが、収益性が高い品目であることや高温期の栽培であるため環境制御が必要なこと、土壌病害をはじめ病害虫対策を行う必要があるといった点から養液栽培の方を採用する生産者が多く、高い結果が得られています。
夏の時期に栽培することになるため、養液栽培であってもアザミウマやハダニなどの害虫が発生しやすく、計画的な防除が必要です。また、梅雨時期になると灰色カビ病の発生リスクも高まるので、多湿にならないよう注意しましょう。炭素病や萎黄病など育苗時に罹患した苗を持ち込んでしまうと被害が拡大する恐れもあるので、予防を徹底しておくことが重要です。
今回は夏イチゴの主産地である長野県の事例と共に、おすすめの品種や適した栽培方法を紹介しました。国産夏イチゴの需要は多く、国産品の安定供給が望まれています。夏イチゴ栽培を始めようと考えている方はこの記事を参考に品種や栽培方法を検討してみてください。
灯油式低温CO₂局所施用システム「真呼吸」/(株)誠和。
▼参考文献
○農林金融2019年7月号「夏秋イチゴの国内生産の課題と産地育成」,農林中金総合研究所
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1907js1.pdf
○「四季成り性いちごの栽培技術」,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/miyagi_yasai18_30.pdf
▼参考サイト
○「すずあかね」いちごの品種:旬の果物百科,旬の食材百科
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/Strawberry-Suzuakane.html
○「なつおとめ」いちごの品種:旬の果物百科,旬の食材百科
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/Strawberry-natsuotome.htm
○「イチゴ苗事業」,株式会社ホーブ
https://hob.co.jp/business/strawberry_seedling/
○「なつみずき」,サンフルーツ
http://www.sunfruits.co.jp/gallery/item/?f=st0028
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。