コラム
公開日:2023.02.06
種類が豊富で切り花や鉢植えの花としても人気の高いガーベラ。今回はそんなガーベラの栽培にチャレンジしたいと考えている農家の方へ向け、種類や育て方をはじめとしたガーベラ栽培の基礎知識をまとめました。
ガーベラは南アフリカ原産のキク科の植物です。多年草の植物なのでしっかりと管理を行えば定植後2~3年間は採花することができます。そのため、定植の際は品種の特性をよく把握してから導入するようにしましょう。温暖で乾燥した気候を好み、夏期の高温多湿や冬期の低温には注意が必要。肥沃で排水性の高い砂質土壌や火山灰土壌が適していますが、圃場の水はけが悪い場合はロックウールを使用して栽培することもできます。
ガーベラの品種は500種類以上あると言われています。色はオレンジ・イエロー・ピンク・ラベンダー・ホワイト・グリーンなどさまざまな色があり、色によって花言葉も異なります。また、ガーベラは花びらの形や数によって咲き方の種類も豊富で、一般的な「一重咲き」、ボリューム感のある「八重咲き」、花弁が糸のように細い「スパイダー咲き」などがあります。ここでは、ガーベラの代表的な品種とその特徴を紹介します。
キムシ―は、発色のいいピンク色が特徴のガーベラです。収量性も良好で、ピンク色のガーベラの中でも代表的な品種のひとつと言えます。また、白に近い淡いピンク色が特徴のブライダルキムシ―も人気の品種です。その名前の通り、結婚式などのお祝い事にも適しています。
ガルビネアは氷点下5℃まで耐えることができる耐寒性に優れた品種です。また、耐暑性にも優れているので比較的育てやすく、ガーデニングからプロの生産者など幅広く利用されています。ガルビネアには八重咲きタイプの「マジェスティック」、大輪タイプの「スイート」があり、ピンクやパープルをはじめイエローやホワイトなど花色のバリエーションが豊富な品種となっています。
フェスティバルは鉢植えとして出荷するのに適した大輪わい性品種です。生育環境に敏感で低温になると生育が遅くなることがあるので、栽培温度は15℃以上を保つ必要があります。花色はイエロー・ピンク・ホワイトなどさまざまで、中心が黒くなっていてコントラストを楽しめるタイプや半八重咲きタイプ、花径6cm程度の小輪タイプなど咲き方のバリエーションも豊富な品種となっています。
サンディは、ビビッドな黄色が特徴のガーベラです。多収性に優れていることもあり、数ある黄色のガーベラの中でも代表的な品種のひとつとなっています。
ガーベラは種まきから育てることも可能ですが、購入した苗を植え付けるのが一般的です。ここからは、切り花として出荷するガーベラの栽培ポイントや管理方法を見ていきましょう。
土耕栽培の場合、ガーベラの定植準備として土壌に堆肥を投入し、ふかふかな土を作ります。このとき、立ち枯れ性病害予防のための土壌消毒と適した土壌酸度(pH5.5~6.0)になるように調整も行いましょう。土壌の準備が完了したら、4月~7月上旬までに株間30~35cm、条間30~40cmの二条植えで定植を行います。ロックウール栽培の場合は4~6月が定植の適期です。活着が遅れることがあるので定植する際は、深植えにならないよう注意してください。
ガーベラの生育適温は20~25℃です。特に夏の時期はハウス内が暑くなるので日中は換気をしたり、寒冷紗でハウスを被覆するなどして25℃以上にならないようにします。夜間の温度が10℃以下になると着色不良や奇形花などが発生し、収量に影響するので12℃~13℃を保つようにしてください。
定植後すぐは少量多回数かん水を心がけ、全体に水分が行き渡るようにします。 活着後は徐々に控えて乾燥気味の状態にします。ロックウール栽培の場合、pHとEC(電気伝導率)の測定を毎日行うようにしましょう。ECの適正値は品種や季節によっても異なりますが、基本的に1.5~1.8dS/mになるように制御します。ロックウール栽培でのかん水は、夏は多めで冬は少なくするのが基本です。回数や水分量は排液率の状況に合わせて行います。また、水分の拡散が悪くなるのでロックウールを乾燥させないように注意が必要です。
葉の数が多くなると病害虫の発生や茎が曲がるなどの品質低下が起こりやすくなるので摘葉を行います。株間が30cmの場合、一株当たり20枚程度残るように葉を取り除きます。
ガーベラは定植後2~3ヶ月程度で収獲が可能になります。花の中心部にある筒状花が外側から2列開いたときが収獲適期です。収穫作業はよく切れるハサミを使用し、朝の涼しい時間帯に行うようにします。また、鮮度をキープするためにも収穫したらなるべく早く出荷するようにしましょう。
病気…根腐病・灰色かび病・うどんこ病・立ち枯れ性病害など
害虫…アザミウマ類・アブラムシ類・ハダニ類・ハモグリバエ類など
ガーベラは比較的病害虫に強い植物ですが、日当たりや水はけの悪い場所で栽培すると病気が発生することがあります。万が一病害虫が発生した場合は、薬剤などを利用して防除を行いましょう。
本記事では、ガーベラの特徴や種類、栽培方法についてまとめました。ガーベラは種類が多く品種選びは大変な作業ですが、生産性と需要のある花色・花形を見極めながら選定するのがポイントです。ハウスを活用して新しい作物の栽培をはじめたいと考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。
▼参考文献
〇農林水産省,茨城県農業総合センター「花き栽培基準」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/iba02-21.pdf
〇タキイ種苗「ガルビネア(苗)品種カタログ」
https://www.takii.co.jp/flower/catalog/wgb/
〇サカタのタネ「ガーベラ フェスティバルシリーズ」
https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code01ad.html
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。