コラム
公開日:2023.07.04
栄養価の高い野菜として知られる「つるむらさき」。露地栽培では夏の限られた期間しか収穫できませんが、ビニールハウスを利用することで収穫期間を延ばすことが可能です。本記事では、つるむらさき栽培に関する基礎知識や挿し芽での増やし方についてご紹介します。
つるむらさきは、ツルムラサキ科ツルムラサキ属の一年草の植物です。原産地は熱帯アジアとされていて、耐寒性はありません。主に食用として栽培されていますが、グリーンカーテンに利用されることもあります。茎の部分が緑色の「緑茎種」と赤紫色の「赤茎種」の2種類があり、加熱すると独特なぬめりが出るのが特徴です。
△赤茎種(左),緑茎種(右)
生育適温は20~30℃で、日なたの環境を好みます。一般的に5~6月頃が種まき時期とされていますが、ビニールハウスを利用すれば3月上旬に種をまくことも可能です。ツル性の植物のため、支柱などを利用してつるを巻きつけながら育てていきます。
ここからは、つるむらさきを栽培する際のポイントをご紹介します。つるの仕立て方や収穫方法についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
ポットやセルトレイなどを用意し、種まき用の培土を詰めて土を湿らせます。そこに、つるむらさきの種を2~3粒まいたら覆土をし、上から軽く鎮圧すれば種まきは完了です。発芽して本葉が3~4枚になったら、生育がよさそうなものを1本だけ残し間引きをします。
※つるむらさきの種は硬い殻で覆われているので、種まきの前日から一晩水に浸けておきましょう。
つるむらさきの栽培に適した土壌酸度は、ph5.0~7.0です。強酸性の土壌の場合は、植え付けの2週間くらい前までに石灰を施し耕しておきましょう。
また、植え付け前に元肥として堆肥と配合肥料を施し、よく耕しておきます。堆肥については、1平方メートルあたり2kgを目安に、配合肥料については60~100gと使用する肥料によって量を調整してください。元肥を入れたら幅90cm、高さ10cmほどの畝を立てておきます。プランターで育てる場合は、野菜用の培土を使用してもかまいません。
本葉が5枚に育ったら定植を行います。株間30cm、条間45cm位の間隔で植え付けていきましょう。つるむらさきは移植を嫌う植物のため、根を傷めないように植え付けるのがポイントです。植え付け後は、たっぷり潅水をします。
追肥は月に1回を目安に、生育を見ながら状況に合わせて行うようにしてください。使用する肥料については、配合肥料や液肥などで構いません。
植え付け後、本葉が6枚くらいになったときに摘芯し、1株ごとに支柱を立てて誘引します。ネットに這わせて育てることも可能ですが、つるは丈夫なものに巻きつく性質を持つので、支柱で仕立てるのがおすすめです。
△支柱に巻きつくつるむらさき
伸びてきたわき芽を収穫します。茎の先端から15cm~20cmのところでカットするとよいでしょう。
つるむらさきは挿し芽(挿し木)で増やすことができます。茎を15cm程度に切り、水揚げをしてから挿し芽用の土に挿しておきます。7~10日ほど経ち、根が出てきたら植え付けましょう。ただし、つるむらさきは耐寒性がなく越冬することはできません。翌年も栽培する場合は、種か苗を入手してください。
つるむらさきは、黒くなって腐敗したり、白い綿状の菌が派生することがあります。これは、ピシウム菌と呼ばれる菌によるもので、雨水などを介して伝染するのが特徴です。高温多湿の条件になると発生しやすいので、圃場の水はけをよくするなど排水対策を行うようにしてください。生育途中に発病が見られた株はすぐに抜き取って処分するようにしましょう。
害虫については、あまり心配いりません。しかし、ヨトウムシやアブラムシが発生する場合があります。害虫を発見したら取り除くか、適合する農薬を使用して防除しましょう。
ビニールハウスを利用することで、収穫期間を長くすることが可能になります。それにより、収益の向上も見込めるでしょう。つるむらさきは比較的病害虫の心配が少なく、育てやすい作物です。ビニールハウスを活用して夏野菜を栽培したいと考えている方は、ぜひチャレンジしてみてください。
▼参考サイト
〇アタリヤ農園「つるむらさき(蔓紫)」
https://www.atariya.net/yasai/tumura.htm
〇住友化学園芸「ツルムラサキの育て方」
https://www.sc-engei.co.jp/cultivation/details/158
〇宮城県「作 物 名:つるむらさき 病害虫名:腐敗病」
https://www.pref.miyagi.jp/documents/8593/713142_1.pdf
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。