コラム
公開日:2024.03.12
ぷっくりとした見た目でかわいらしい多肉植物。比較的簡単に育てられることから、インテリアグリーンとして人気があります。本記事では、農家さん向けに多肉植物のおすすめ品種や育て方のポイントを紹介します。栽培に必要な設備についても紹介するので、多肉植物栽培に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
ひと口に多肉植物と言っても、種類や品種はさまざまです。ここでは、多肉植物の代表的な種類とおすすめ品種を紹介します。
日本でも古くから馴染みのあるアロエは、500以上の種類があるとされています。中でも、木立ちアロエは比較的暑さ寒さに強く、日本の家庭でもよく栽培されています。鑑賞用としては、葉に縞模様が入った「千代田錦」と呼ばれる品種も人気です。この品種はほかの多肉植物に比べて肥料を多く要するという特徴があり、葉が黄色くなったら追肥を行います。
セダムも人気の多肉植物のひとつです。品種は数多くあり、葉の色や形もさまざまなものがあります。とくにおすすめの品種は、「パープルヘイズ」です。多肉植物らしい肉厚で丸みのある見た目が特徴で、秋以降は葉が紫色に変化して紅葉を楽しめます。比較的耐寒性に優れている品種ですが、高温多湿には弱いため夏の管理は注意が必要です。
エケベリアは、花びらのように広がる葉が特徴の多肉植物です。セダムと並んで人気のある種類で、日本でも数多くの品種が流通しています。エケベリアのおすすめは、桃太郎という品種です。暑さや寒さにも強く、比較的栽培しやすい多肉植物といえるでしょう。夏以外であれば葉挿しも容易に行えます。
ハオルチア属は、根元から放射状に広がる葉が特徴の多肉植物です。品種によって見た目が異なるものが多く、さまざまなタイプが存在します。代表的な品種のひとつに、細長い葉の外側に縞模様が入った「十二の巻(じゅうにのまき)」というものがあります。また、ぷにぷにとした質感が特徴の「シンビフォルミス 」という品種も人気です。どちらも栽培はしやすい品種ですが、葉挿しの難易度は高いとされています。
多肉植物には、春秋型・夏型・冬型と3つの生育タイプがあります。多肉植物を栽培する際は、どの生育タイプなのかを知っておくことが重要です。ここでは、それぞれの管理のポイントを紹介します。
春秋型と呼ばれるタイプは春と秋が生育期で、夏は生育が緩やかになり、冬は休眠します。生育適温は10~25℃で、夏は水やりをせずに休眠させると根腐れ防止になります。冬の休眠期についても水やりは控え、月に1回程度葉水を行うとよいでしょう。春秋型に該当する種類としては、セダム・エケベリア・ハオルチア・センペルビウムなどが挙げられます。
夏型は夏によく生育し、春と秋は生育が緩やかになり、冬は休眠するのが特徴です。生育適温は20~30℃で、比較的高温に強いとされています。一方で、極端に湿度の高い状態を嫌うため、夏の間は風通しのよい場所で管理する必要があります。夏型の種類には、アロエ・アガベ・カランコエ・ユーフォルビアなどがあります。
冬型は冬によく生育し、春と秋は生育が緩やかになり、夏は休眠します。低温を好む一方で、霜が降りるほどの極端な寒さは苦手なものが多いので、冬季の加温は欠かせないでしょう。冬型の多肉植物には、リトープス・アエオニウム・コノフィツム・オトンナなどがあります。
多肉植物の生産農家として栽培を行うのであれば、ビニールハウスは必須の設備ですが、それ以外にも必要な設備がいくつか存在します。ここでは、多肉植物を栽培する際に、どのような設備が必要になるのかを見ていきましょう。
多肉植物の葉は多くの水分を含むため、霜が降りるような寒さの時期にはビニールハウス内であっても凍ってしまうことがあります。耐寒温度は品種によって異なりますが、冬の時期は暖房を利用して5~10℃以下にならないよう管理するとよいでしょう。また、保温効果の高い内張りカーテンなどを使用することで、暖房費を抑えながら暖かさを保つことができます。
多肉植物は日光を好む種類も多くある一方で、夏の暑い時期は直射日光によって葉が焼けてしまうことがあります。必要な日射量は種類や品種によっても異なりますが、遮光ネットなどを利用して植物に最適な光を取り入れることが重要です。
とくに夏の時期は、暑さで植物の表面温度が上がりすぎてしまうことがあります。扇風機やサーキュレーターなどを利用して葉の表面温度を下げ、葉焼けを防ぎましょう。また、冬は暖房をつけていてもハウス内の温度にムラが生じてしまい、ハウス上部は暖かいけど下部は寒いということがよくあります。このような場合もハウス内の空気を循環させることで、温度の偏りを防ぐことができです。
多肉植物の栽培では、花き栽培などで利用される栽培ベンチがあるとよいでしょう。栽培ベンチの上に連結ポットや鉢を置くことで、管理の際に腰をかがめる必要なく楽に作業が行えます。多肉植物は比較的栽培がしやすい植物ですが、休眠期に入る夏と冬の管理には注意が必要です。品種によっても管理方法が異なるため、まずは栽培する品種を明確にしましょう。ひとつのハウス内で複数の品種を栽培する場合は、同じ生育タイプの品種を選ぶのがおすすめです。
必要な設備については、これまで施設栽培を行ってきた方であれば、新たに用意するものはそれほど多くありません。空いたビニールハウスを活用して多肉植物の栽培を行いたいという方は、本記事で紹介した品種や育て方のポイントをぜひ参考にしてみてください。
▼参考サイト
〇サボテンと多肉植物図鑑
http://cactoloco.jp/dic/index.html
〇みんなの趣味の園芸,多肉植物の生育タイプとは? 生育型別の育て方を知ろう!
https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_s_cactus_type
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。