コラム

遮熱シートのプロに聞いた暑さの原因「輻射熱」とは? 資材の効果を引き出すポイントもご紹介

公開日:2023.07.26

施設園芸にとって夏の暑さは大敵です。対策の一つとして遮熱シートがありますが、遮熱シートがもたらす本来の効果を知らない方も多いのではないでしょうか。この記事では、遮熱のプロである日本遮熱株式会社に聞いた暑さの原因(熱移動の原理)をご紹介しつつ、遮熱シートの効果を引き出す3つのポイントを解説します。

1.夏はなぜ暑い?熱の移動原理をみてみよう

熱の移動方法には、伝導熱(熱伝導)、対流熱(熱伝達)、輻射熱(放射熱)があります。 伝導熱は温度の異なる物体を接触させることで熱が移動することです。例えば、フライパンを火にかけるとフライパンに熱が移動します。この伝導熱の伝わりが遅くするのが断熱材です。 次に対流熱とは、気体や液体など流体が動くことで熱が移動することです。対流の特徴は上下に熱が移動すること。例えば、冷房の冷たい風は下がっていき、暖房の温かい熱は上がっていくのと同じ現象です。 そして今回注目したいのが輻射熱(ふくしゃねつ)です。そもそも暑さは、気温と輻射熱によって決まります。輻射熱とはガンマ線やX線、紫外線や赤外線など太陽から放射される電磁波のことで、何かにぶつかったときに熱に変わります。例えば、気温が同じであっても、輻射熱が体にぶつかると熱になります。



つまり遮熱資材を利用して輻射熱の量を減らすことが、暑さ対策においてとても重要となります。遮熱資材は反射率が高い=放射率が低いため、輻射熱の阻止に有効です。農業分野で活躍する遮熱シートには輻射熱を反射する働きがあり、この働きが暑さ対策には欠かせません。

※目次1参考:日本遮熱(株)

2.農業用の遮熱シートはどんな効果があるの?

△提供:日本ワイドクロス様




ここからは農業用遮熱シートが与える3つの効果について解説します。

高温障害を防ぐ

遮熱シートは、作物の葉が萎れるなどの高温障害を防ぐ効果があります。暑さの原因となる輻射熱を反射して、ビニールハウス内に熱がこもりすぎるのを防ぐ機能があるためです。高温障害は、野菜や花きにダメージを与えて、生育不良を引き起こします。遮熱シートは真夏のハウス内の極端な温度上昇を防ぎ、作物の収量や品質の向上につながります。




作業者を守る

遮熱シートは、作物だけではなく農作業も熱から守ります。遮熱シートはビニールハウス内の高温多湿を防ぐ働きがあり、例えば遮熱シートを使用せずにハウス内の温度が上がりすぎると、熱中症や脱水症状など命に危険を及ぼす場合もあります。遮熱シートを使えば、働きやすい環境づくりが可能です。




潅水作業を減らす

遮熱シートは、潅水作業を減らす効果も期待できます。土の温度や湿度の上昇を防ぎ、土が水分量を保持しやすくなるためです。土の水分量の低下は、作物の蒸散を妨げ、生育阻害を招きます。遮熱シートを利用すれば、潅水作業の回数が減り、コストダウン効果が望めます。

3.遮熱シートの効果を最大化する3つのポイント




ポイント1.育てる作物に合わせた素材を使う

育てる作物に合わせた遮光率の素材を選びます。遮熱シートにはさまざまな遮光率の素材があり、作物の好む遮光率にすることで、より育てやすい環境にできます。比較的光を多く必要とするトマトやナスなどは遮光率の低いものが、逆に弱い光を好むホウレンソウや小松菜などは遮光率の高いものがおすすめです。育てる作物の性質に合わせた遮熱シートを使いましょう。






ポイント2.用途によってタイプを選ぶ

・カーテンタイプ
ビニールハウス内に設置できます。カーテンのように開閉できる点がポイントで、ハウス内の環境を調節しやすくなっています。
・塗料タイプ
ビニールハウスの外に塗料を吹きかけるタイプです。濃度によって遮熱率や遮光率が変えられるため、作物にあわせて調整しやすいのが利点です。
・フィルム
ビニールハウスに直接貼れるフィルムです。フィルムに材料が塗布されているものやフィルムに材料が練り込まれているものがあります。
・被せるネット
ビニールハウスの外側から被せるものや、内側に使用できるものがあります。自分で取り付けできるネットもあり、不要な季節は取り外しが可能です。

遮熱シートといってもさまざまなタイプがあるため、用途によってタイプを選びましょう。






ポイント3.耐久性や軽さを確認する

素材を選ぶ際には耐久性や軽さも確認します。遮熱シートは夏の太陽に毎日さらされているため、効果の持続性も大切なポイントです。すぐに効果がなくなってしまうものは、かえってコストが高くついてしまいます。他にも取り付けや取り外す場合には、遮熱シートの重さも作業のしやすさにつながります。耐久性や軽さも確認して選びましょう。






⚠遮熱シートを使う際の注意点
遮熱シートを使ってビニールハウス内の温度を下げたい場合は、換気も併用するとより効果的です。構造上、ハウス内は熱がこもりがちですが、遮熱シートと換気を併用することでさらに効果が上がります。また、遮熱が不要な季節は取り外すことも大切です。作物の生育に悪影響がないように、必要がなければ取り外しましょう。






遮熱シートは夏の暑さ対策としておすすめの資材です。遮熱シートを効果的に活用して、夏の暑さ対策にしっかりと備えおきましょう。

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▼参考資料
〇日本遮熱(株),トップヒートバリアー資料
▼参考サイト
〇サーモバリア,ブログ
https://www.e-lifetech.com/○局所加温の部位および時間帯がナスの形態および生理に及ぼす影響,園芸学研究 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/11/3/11_337/_pdf

ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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