コラム

夏は農作業計画の見直しを!従業員を守る熱中症対策と予防法

公開日:2019.06.07

初夏からの農作業で気を付けたいのが熱中症です。毎年20人程が農作業中に熱中症になり亡くなっています。多発するのは7, 8月ですが、気温の上がりやすいビニールハウス内などでは5月でも死亡事故の発生が報告されており一層の注意が必要です。
今回は熱中症から自分と従業員を守るための、作業計画作りに役立つ「熱中症対策と予防法」についてお伝えします。

1.農作業中の熱中症による死亡事故に注意

ハウス内の気温が高くなり始める5, 6月頃からは、しっかりと熱中症対策を講じた作業計画を立てましょう。「自分も従業員も経験豊富だから大丈夫」という油断は禁物です。農業経験50年のベテランでもハウスでの作業中に熱中症で亡くなっています。農林水産省の調べによると、過去10年間で農作業中の死亡事故は193件発生しています。(平成19~28年)
年齢別でみると70~80代が全体の79%。高齢になると発汗量が多く脱水しやすくなるため、こまめな水分・塩分補給、十分な休憩が必要になります。死亡事故は20代~40代でも発生しています。「まだ大丈夫」と頑張り過ぎてはいけません。

熱中症の具体的な症状が分からず、知らず知らずのうちに熱中症にかかる方が多いようです。

そもそも熱中症とは


“体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のこと。“

【引用:全日本病院協会】



気温が高い中で、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、体に力が入らない、まっすぐに歩けない、身体が熱いなどの症状が出たらすぐに熱中症を疑いましょう。

2.熱中症の対策・予防法【4つのポイント】





1. 水分と塩分の補給

作業計画を立てる際にはこまめな休憩時間を設けるようにしましょう。従業員にはハウスなどに水筒を持ち込むようにしてもらい、20分おきにコップ1~2杯の水分補給をするように働きかけましょう。足がつったり筋肉がぴくぴくしたりする症状がみられる場合には塩分も補給することが重要です。0.1~0.2%の食塩水やスポーツ飲料で水分と塩分を同時に摂るようにします。

▲写真提供:大塚製薬





2. 高温多湿の環境を避ける

できるだけ気温の高い時間の作業は避けることが重要です。暑さ指数計、温湿度計で作業環境をチェックしましょう。暑さ指数(WBGT)は暑さの厳しさを教えてくれる指数で、数値が高い程熱中症になりやすくなります。熱中症対策には気温よりWBGT値の方が重要となります。



WBGTとは、Wet-Bulb Globe Temperature index(湿球黒球温度)の略称で、気温・湿度・輻射熱から算出される「暑さの指数」です。湿球温度、乾球温度、黒球温度を測定し、算出されます。単位は気温を同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温と異なります。

【引用:ミドリ安全.com、WBGT測定器で温度をチェックして熱中対策】


※引用:農林水産省、農作業中の熱中症対策について(令和元年5月9日技術普及課長通知)



環境省では地域別の暑さ指標を毎朝メールでお知らせしてくれるサービスもありますので活用してみるのも良いでしょう。



  • ▼環境省「熱中症予防情報サイト」
http://www.wbgt.env.go.jp/mail_service.php


また、WBGTの測定器「熱中症指数モニター」を設置するのもおすすめです。データロガ式のものなど様々な測定器が市販されています。
㈱エー・アンド・デイの「みはりん坊プロ」はハウスの作業場に設置したり、腕章のようにして個人が腕に装着するなど様々な場所で簡単に測定ができ、作業環境の状況が一目でわかります。WBGT値が28℃以上または31℃以上になると自動でアラームが作動するので、作業に没頭してしまいつい見るのを忘れてしまう方にも安心です。


測定したWBGT値が基準値より高い場合には負担の少ない軽作業に変えたり、作業時間を短くして休憩をこまめに取るなど作業計画を変更します。また、作業場や体を冷やす対策をしてWBGT値を下げていきましょう。





3. 暑さ対策グッズを利用する

従業員には通気性が良く吸汗速乾性素材の通気性の服を身に付け、キャップなど帽子をかぶるように周知しましょう。熱中症対策ウェアとして市販されている保冷剤入りのベストや送風機能付きの作業服、熱を遮断する帽子などを導入することも効果的です。
最近では夏の作業服として空調服が人気を集めています。

▲写真提供:㈱空調服


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4. 単独作業を避ける

作業は2人以上で行いすぐに異常に気付けるようにしましょう。
29度のビニールハウス内で単独作業をしていたベテラン農家さんが亡くなっています。単独作業者が出る場合にはこまめな声かけや状況確認をしましょう。高齢者程、熱中症の自覚症状が無いことが多いので周りの人が気を付けるようにしたいですね。

3.これって熱中症?応急処置と判断基準

手足がしびれる・冷たい、汗をかかない、めまい、吐き気、意識がはっきりしないなど熱中症が疑われる場合にはすぐに作業を中断し応急処置を行いましょう。涼しい場所へ避難させ、服をゆるめます。水をかけたり扇いだりして体を冷ますと同時に水分・塩分の補給をしましょう。意識が無い、自力で水が飲めない、応急処置をしても良くならない場合はすぐに病院へ行きましょう。



ハウスなどの農作業では特に熱中症に注意する必要があります。しっかり熱中症対策を講じた農作業計画を立てて熱中症から自身や従業員を守りましょう。




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▼参考サイト
●「平成30年度農林水産省の熱中症に対する取組」平成30年5月15日(火)平成30年度第1回熱中症関係省庁連絡会議 参考資料1-4
●全日本病院協会<https://www.ajha.or.jp/guide/23.html>

ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。