コラム
公開日:2026.10.30

ブロッコリーは花蕾を小房に分けて調理でき、機能性成分が豊富なことから、日本では栽培面積が伸び続けている数少ない野菜の一つです。
しかし、作型により栽培の難易度が大きく異なるため、特に難易度の高い初夏出しや春出し(4月)では目標収穫期に合った品種選びが欠かせません。
また、栽培現場でも、「品種改良されて毎年品種が増えるので、何を植えたらよいか分からない」という声もよく聞きます。
そこで、この記事では、ブロッコリーの品種選びの基本について、作型や収穫時期と関連づけて説明します。また、主要作型別のおすすめ品種を紹介するとともに、ハウス栽培など被覆資材を用いて栽培する品種選びの考え方や栽培の要点を示します。
※本記事の説明は、主に関東以西の地域を対象としています。あらかじめご了承ください。

ブロッコリーを農家経営に取り入れ収益性を確保するためには、できれば11月~翌年3月まで連続して出荷できるのが望ましいです。実際、品質が良いことで古くから市場で人気があり、他産地に先駆けて「地理的表示」を取得したことでも有名な大山ブロッコリーは、11月~翌年3月に出荷を切らさないような品種選びをしています。
しかし、ブロッコリーは作型によって栽培の難易度が大きく異なります。
筆者の経験から順位付けすると、年内出し(11~12月収穫)→厳寒期出し(1~3月中旬収穫)→早出し(~10月以前に収穫)→初夏出し(5月~6月上旬収穫)→春出し(4月収穫)の順に栽培が難しくなります。
特に、4月収穫は、冬が温暖な地域での栽培が必須で、かつ品種選びはもちろん育苗期の温度管理や定植後の被覆資材使用などを総合して栽培技術を組み立てる必要があります。
以下に、各作型における品種選びの考え方を示します。
8月上中旬に播種し、播種25~28日後に定植、冬の寒さが本格化しないうちに収穫を終える作型です(地域によっても異なりますが、概ね11~12月収穫です)。
年内出し作型では、「90日~100日タイプ(播種~収穫開始までの所要日数が90~100日かかる)」の早生品種を選ぶとよいです。

先述した年内出しの延長線に位置する作型です。8月中下旬に播種し、播種28~30日後に定植、冬の寒さが厳しい時期に収穫する作型です(概ね1~3月中旬収穫のイメージです)。「年内出し」と収穫期が重なることを避けるため、「105~120日タイプ」の中生品種を選ぶようにします。
また、この時期は花蕾が赤紫色になりやすい時期です。これは、耐寒性獲得の過程でアントシアンが花蕾に出ただけであり病害ではありません。加熱すると多くは緑色に戻ります。そのため、「アントシアンフリー」表記がある品種を選ぶとよいでしょう。

△アントシアニンで赤紫色になったブロッコリー(イメージ)
さらに、花蕾が凍って傷が入りやすく、花蕾腐敗病が発生しやすい時期です。
冬の寒さが厳しい地域では比較的寒さに強い品種を選ぶとなおよいです。それが難しい場合は、12月からPVA製割繊維不織布をべたがけするとよいでしょう。
先述した年内出しよりも早い時期に収穫する作型です。
7月中下旬に播種し、播種25~28日後に定植、早秋の10月に収穫する作型です。
この時期は、高温期のブロッコリーに発生しやすい生理障害が少ない品種を選ぶようにします。
高温期に発生しやすい生理障害として特に問題になるのが、ごく一部の蕾が枯死する「死に花(ブラウンビーズ)」です。「死に花」は食味には影響を及ぼしませんが、わずかな発生でも鮮度が落ちていると誤解されるので、品種選びではまず「死に花」が発生しにくい品種を選びましょう。
その上で、10月上旬には極早生品種、10月末には早生品種を用いるなどで、収穫期の分散を図りましょう。
ブロッコリーは、植物体が一定期間低温に遭遇することで花芽が分化します。よって、育苗期が低温であると、定植時にはすでに花芽が分化(ボトニング)してしまい、非常に小さな花蕾しか収穫できなくなります。
このことから、初夏出しでは、ハウスでの温床育苗を行うとともに、低温に鈍感(≒花芽分化が遅い)品種を選ぶのが重要です。
具体的には、苗床の温度が日中20~25℃かつ夜間10℃以上を確保できる場合は、早生品種(定植~収穫までの期間が65日以内)の栽培が可能です。苗床の温度を確保しにくい場合は、中生品種(同65~80日程度)の使用が無難ですが、この場合は収穫期が6月上旬と遅くなるので、「早出し」で説明した「死に花」が少ない品種を選びましょう。

△ブロッコリーの苗(イメージ)
この作型はブロッコリーではもっとも栽培が難しく、現在でも各産地で研究が進められている作型です。具体的には、4月上旬収穫では極晩生品種「ゆめさくら」を10月下旬、「クリア」を11月上旬に定植するとともに、4月中下旬収穫は「おはよう」を1月下旬~2月上旬にマルチを敷いた畝に定植し、トンネルやべたがけ栽培するというものです。
現地実証は千葉県山武市や君津市で行われているため、これらの地域より気温が低い地域では、うまくいかない可能性があります。そのため、本圃(定植後に作物を育てる圃場)でも簡易なハウスで栽培するなどの対策が考えられます。

ここからは、上記で説明した作型ごとの主なおすすめ品種をご紹介します。
発売されて20年以上経つ品種ですが、今も人気が高い品種です。その理由は、花蕾の粒が小さく舌触りがよい一方で各種の生理障害に比較的強く、収穫後の日持ちもすることが挙げられます。そして、早生品種でもあるため、仙台で8月末に定植しても、12月下旬までには花蕾が12cm以上に生長し収穫できるなど、栽培が安定しているからです。
ただし、「ピクセル」は、冬場の低温が続くとアントシアンが出やすい特性があるので、注意が必要です。
「ピクセル」同様に収穫後に日持ちし、粒がそろっているなど花蕾の品質が良く、栽培適性も安定している品種です。大まかには『同じ日に播種・定植すると、「ピクセル」より15~20日程度収穫期が遅い』と覚えておけばよいでしょう。
ただし、低温・乾燥時にアントシアンが発生する場合があります。
厳寒期でもアントシアンが全く出ない品種です。また、低温期でも花蕾がよく伸長する品種です。反面、暖冬年は生育が早まりやすく、予想より早く収穫期を迎える(≒他の品種と収穫期が重なる)ので注意が必要です。
なお、「おはよう®」同様にアントシアンフリーの特性を持つ品種に、「こんにちは®(110日タイプ)」、「こんばんは®(150日タイプ)」もあります。「おはよう」の収穫目標期を1月上旬とした場合、「こんにちは®」は2月、「こんばんは®」は3月上中旬が収穫目安になります。
発表当時は、一般平暖地では9月下旬播種・10月下旬定植で、3月下旬~4月上旬の収穫に適すると公表された品種です(現在は温暖化により3月下旬収穫の場合が多いと考えられます)。
「晩緑100」は、佐賀県の試験成績によると、11月5日に定植しても4月2日には花蕾径12cmと商品化できたというデータもあります。
1980年代からある品種ですが、「ピクセル」より若干収穫までの日数が短く、「ピクセル」同様に高温期にも異常花蕾になりにくい品種です。
また、昔の品種でよくみられる「頂側兼用種(頂花蕾を収穫した後、側花蕾も収穫できる)」でもあります。
「ピクセル」と同様90日タイプの品種ですが、耐暑性に優れ、「キャッツアイ(花蕾粒が不揃いになり、生長の遅れた部分が黄色く残って猫の目のような模様になる)」が少ないとされています。また、北海道での試験事例(7月、9月収穫)で作型は異なるものの、「花蕾品質やそろいがよく一斉収穫しやすいが、茎長が短いので手収穫では手間がかかる」との評価が得られています。
いわゆる茎ブロッコリーの定番品種です。頂花蕾を500円玉大で収穫すると、その後15本程度の側花蕾が収穫でき、冬出し(11~1月)と初夏出し両方で栽培できます。

△スティックセニョール(イメージ)
頂花蕾を収穫した後、側花蕾を取り続けるタイプの「頂側兼用」品種です。頂側兼用品種は、1980年代まではごく一般的でしたが、現在は「ハイツSP」しか生産されていない状況です。
栽培自体はしやすいですが、頂花蕾の直径は専用品種に比べて1~2cm劣る傾向があります。
主要品種の一覧表や栽培資料が種苗会社ごとにありますので、併せてご参照ください。
●タキイ種苗株式会社
●株式会社サカタのタネ
●トキタ種苗株式会社
●株式会社野崎採種場
●朝日アグリア株式会社
●株式会社ブロリード

ハウス、トンネル、べたがけ等の被覆資材を用いた栽培は、初夏出しのうち、1月に定植する作型では必須です。
また、3月定植であっても、トンネルにPVA割繊維不織布を被覆することで、5月に収穫できるという東京都の試験事例があります。中でも、「ピクセル」と「すばる(ブロリード)」は5月中旬から収穫可能なので、初夏出しでも「短期決戦型」の作型に向いていると言えます。
保温性は、ビニールハウス>ビニールトンネル>不織布トンネル>不織布べたがけの順で高くなるので、寒冷な地域の場合は最初はビニールトンネルで栽培して大丈夫だったら不織布のトンネル掛けやべた掛けに移行するとよいでしょう。
苗床の温度は日中20~25℃かつ夜間10℃以上の確保が優先です。
育苗期の温度が不足した場合は、定植後に被覆資材を使用しても小さな花蕾になることは注意しましょう。
以上、本記事ではブロッコリーの品種選びの基本について主要作型や収穫時期を関連づけて説明したあと、主要作型別におすすめ品種を紹介し、最後に被覆資材を用いて栽培する場合の品種選びや栽培方法の要点を示しました。
ブロッコリーは、同じアブラナ科野菜のキャベツと栽培方法が似ています。そのため、キャベツと同様の栽培管理で定植遅れを取り戻せると考えている人が多いようです。
しかし、近年の研究で、収穫時の花蕾重は花蕾形成期の葉面積と高い相関関係にあることが分かっています。すなわち、適期に定植できなければ、少ない葉面積で花蕾形成期を迎えることになり、その結果、市場が求めるサイズの花蕾が得られなくなるのです。
作型別に適品種を選定するのも重要ですが、それと同じくらい、適期定植と良好な活着が重要だということも覚えておくとよいでしょう。
▼参考文献
〇西貞夫 監修「新編・野菜園芸ハンドブック」p817~828,2001
〇神奈川県農業技術センター 北相地区事務所「ブロッコリー厳寒期栽培の簡易被覆による安定生産技術」,2024
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/128369/5241buroccoli.pdf
〇長野県野菜花き試験場 中村憲太郎「ブロッコリーに発生するブラウンビーズはなぜ問題か」,2014
https://www.pref.nagano.lg.jp/nogyokankei/letter/documents/ntk458_veg1.pdf
〇千葉県「4月のブロッコリー端境期を短縮する栽培体系」,2026
https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/seikanokouhyou/h29/documents/r4n0308broccoli.pdf
〇宮城県農業・園芸研究所「宮城県におけるブロッコリー「ピクセル」の定植晩限」,2024
https://www.pref.miyagi.jp/documents/60672/r06sankou05.pdf
〇上越農業普及指導センター「R5年度 JA えちご上越ブロッコリー栽培マニュアル」,2023
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/375340.pdf
〇平田 真紀子,増田 欣也,八田 聡,大段 秀記「有機農業を安定的に営農するための生産技術体系」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/11kyusyusaga_20180627.pdf
〇柳田 大介ほか「一斉収穫に適したブロッコリーの品種特性」,2018
https://www.hro.or.jp/upload/18074/04.pdf
〇佐賀県「有機栽培技術マニュアル(アブラナ科野菜)」,2016
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00343583/3_43583_8_201622514194.pdf
▼参考サイト
〇JAとっとり西部「大山ブロッコリー®」
https://www.ja-tottoriseibu.or.jp/agri/product/broccoli.php
〇株式会社サカタのタネ「茎ブロッコリー スティックセニョール」
https://sakata-netshop.com/shop/g/g10700011/
〇タキイ種苗株式会社「ハイツSP」
https://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?breed_seq=00000697
〇野口 貴,沼尻 勝人,荒木 俊光,海保 富士男「無加温ハウス育苗・トンネル栽培による初夏どりブロッコリー」
https://www.naro.go.jp/org/carc/seika/kanto20/06/20_06_08.html