コラム
公開日:2018.08.03
数ミリ程の大きさで白く細長い羽が特徴的なコナジラミ。植物の葉裏に寄生して汁を吸ったり“すす病”を引き起こしたり、トマトでは収量皆無も有り得る恐ろしいウィルス病を媒介する害虫です。どんなに気を付けていてもその発生を完全に防ぐことは難しいですよね。
農薬による駆除は効果的ですが、農薬を使用する限り抵抗性発達(※1)の危険は避けられず、実際に深刻な問題になっています。いつ農薬が効かなくなったとしても困らないように、コナジラミの生態を良く理解し農薬に頼らない防除方法を知っておくことが重要です。
そこで今回は化学農薬を使わずにコナジラミを駆除できる3つの効果的な方法について、コナジラミの生態にも触れながら紹介したいと思います。特に施設栽培においてコナジラミを一網打尽にできる「蒸し込み」という方法は一読の価値ありです!
(※1)病害虫が農薬に慣れてしまい効果が弱くなること
コナジラミのうち主な害虫はタバココナジラミとオンシツコナジラミの2種類です。4月~10月頃の高温乾燥期に良く発生し、約28日で卵から幼虫、蛹を経て成虫になります。体長は2mm程で白い羽を持っています。被害作物を触わると白い粉が舞うように虫が飛ぶので他の害虫との区別は容易です。
主な被害は吸汁により葉が白くかすれ生育が悪化すること、甘露と呼ばれるべたべたした排泄物による“すす病の発生”とそれに伴う“葉や果実の汚れ”です。またトマト黄化葉巻ウィルスなど様々なウィルスを媒介します。
無農薬で駆除する3つの方法をご紹介します。
寄生蜂のツヤコバチやスワルスキーカブリダニが代表的な天敵です。施設栽培の場合はJAS法に適合し農薬散布回数にカウントされない様々な天敵農薬が登録・市販されているので簡単に天敵を導入することができます。カビの仲間である糸状菌を利用した天敵微生物も市販されています。高い効果を得るには使用方法をしっかり守ることが重要です。また農薬が天敵に与える影響には十分注意しましょう。
コナジラミの呼吸器官である気門を塞ぎ窒息死させる方法です。市販の気門封鎖剤として有名な粘着くん®水和剤はJAS法で使用が認め認められていますが、「液剤」は認められていないので注意してくださいね。薬剤使用に抵抗がある方は牛乳のスプレーも効果的です。牛乳スプレーについては以下の記事も参考にしてくださいね。
施設栽培で有効な方法で、栽培終了後に施設内を密閉しコナジラミの死滅温度以上にします。トマトではタバココナジラミが媒介する黄化葉巻病の対策のため必ず実行されることを強くおススメします。ハモグリバエやアザミウマの駆除も同時にできますよ。
具体的な方法は以下のようになります。
1) 栽培終了後、株を引き抜くか根本で茎を切断する
2) ハウスの開口部を全て締切りハウスを密閉する
3) ハウス内の温度が40℃を超え期間が5日以上、できれば10日続くようにする。
4) 残渣株を処分する
夏場はハウス内の温度が70℃を超えることもあるので、熱に弱い設備の変形等に注意が必要です。対策としては1)の後、株を寝かせてビニールでべた掛けし、天窓の解放で温度調節を行うようにします。
これらの方法を組み合わせることで農薬に頼らなくても効果的にコナジラミを駆除できます。どれも薬剤抵抗性発達の心配が無い方法ですので、コナジラミをビシバシ倒してくださいね。
【参考文献】
○水越 小百合, 福田 充, 中山 喜一, 深澤 郁男, 石原 良行, 山城 都(2007)促成栽培トマトにおける蒸し込み処理によるコナジラミ類 (タバココナジラミ, オンシツコナジラミ) の防除、関東東山病害虫研究会報, 54 号, p109-112.
○JA全農いばらぎ(2017)施設トマトやキュウリなどの栽培終了後には、ハウス を密閉して蒸し込み処理を行い、コナジラミ類やアザミ ウマ類、ハモグリバエ類など害虫防除を実施しましょう、惚れ惚れ営農NEWS、2547号
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。