コラム
公開日:2018.08.31
ピーマンなどナス科の害虫として知られるホオズキカメムシ。集団で現れて茎や葉を吸汁します。被害が酷い場合には新芽が萎れ生育が悪化します。果実を吸汁することは少ないですが、手で捕まえようとするとカメムシ特有の嫌な臭いを発し、臭いが果実についてしまうといった被害が生じます。
ホオズキカメムシの対策には他の害虫と同様に初期防除に努めることが重要です。特に天敵のいない施設栽培では1度でもカメムシの侵入を許すと大量発生に直結する危険があります。カメムシはアブラムシなど他の吸汁害虫に比べると大きくて見つけ易いとはいえ、広いハウスに侵入してきた数匹をすぐに探し出すことは困難です。
そこで今回はホオズキカメムシの防除方法について、その生態などにも触れつつ具体的な対策をお伝えしたいと思います。
体長1cm程で灰褐色をした扁平なカメムシで短い毛が生えています。多く発生するのは6月~10月です。作物を吸汁するのは体が白い幼虫と茶色の成虫で、集団を形成してサツマイモやナス科の野菜を食害します。雌は葉裏に10~30粒程の金色をした卵を塊に産みます。
▲ホオズキカメムシの成虫(上)と白さの残る幼虫(下)
▲ホオズキカメムシの卵
害虫対策の基本は”侵入させない事”です。施設の出入口など開口部に目の細かいネットを張りホオズキカメムシの侵入を防ぎます。(露地栽培の場合は防虫ネットを掛けトンネル栽培にします)
またハウスや圃場周辺の雑草がカメムシの温床となる場合があるので除草に努めます。
発生数が少ない場合や発生株が限られている場合は手作業で取り除くことが効果的です。幼虫や成虫は茎を揺らすと簡単に落ちるので、ホオズキカメムシの下にバケツやビニール袋等を用意して落ちてきたものを捕えます。直接手で捕えようとすると強烈な匂いを出して落下するので注意が必要です。葉裏に卵が見つかった場合は葉ごとちぎり取ります。
アブラムシ類の対策に農薬を使用している場合は、ホオズキカメムシを含むカメムシ類の発生を抑えられることが知られています。
大量発生した場合は、農薬を使うことで迅速に広範囲のホオズキカメムシを駆除することができます。例えばピーマンではカメムシ類に使える農薬としてアルバリン®顆粒水溶剤やスタークル®顆粒水溶剤、マラソン粉剤3などがあります。農薬を使う時には注意事項を良く読んで正しく使ってくださいね。
カマキリやクモなどが成虫を捕食しますが成虫を好んで食べる天敵は知られていません。カメムシタマゴトビコバチなどカメムシ類の卵に卵を産み付ける寄生蜂が土着の天敵として知られています。寄生蜂を用いた防除方法が盛んに研究されていますが、現段階では生物農薬として販売されているものは無く、実用化に向け更なる研究の進展が期待されます。
ホオズキカメムシが集団で作物の茎に群がっていると早くなんとかしなくてはと焦ることもあると思いますが、病気のように急激に株が弱ってハウス内の作物が全滅するようなことは滅多にありません。まずは落ち着いて被害状況を把握して、被害に応じて補殺したり農薬を使ったり確実に駆除してくださいね。
【参考文献】
○あいち病害虫情報、愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室、1996.
○病害虫 生理障害台帳、こうち農業ネット、高知県、2012.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。