コラム
公開日:2019.03.12
石灰肥料で野菜を元気に!<1>、<2>では地上部に焦点を当て石灰肥料の葉面散布で植物を元気にする方法をお伝えしてきましたが、石灰には発根を促進するなど根を元気にする働きもあります。根は養分吸収の最重要器官ですがカルシウムが欠乏すると伸長が停止してしまいます。
養液栽培のように施肥以外の養分が期待できない場合にはカルシウム欠乏に注意が必要です。ちょっとした養分バランスの崩れや根傷みが欠乏に繋がることもあります。また土耕栽培でも施設栽培の場合には雨で養分が流出せずカルシウムが土壌に過剰に蓄積すると鉄欠乏などが生じることがあります。
そこで今回は石灰質肥料の追肥で根を元気にする方法を紹介するとともに、石灰の過剰使用によって鉄欠乏が出た場合の応急処置の方法も併せてお伝えしていきたいと思います。
植物の栄養状態は地上部の様子から判断することが多いのですがNFT(薄膜水耕)やDFT(湛液水耕)のような養液栽培では根の状態からも判断することができます。カルシウムが欠乏すると根の伸長が抑えられ、太く短い根になり茶色っぽく褐変します。根が傷むと養分吸収に悪影響を及ぼすので観察する時には根を痛めないように注意して下さいね。
欠乏症の予防・改善には肥料バランスに気を配ることが大切です。曇天続きから急に晴れるなどして植物の生育に養分吸収が追い付かない場合には追肥としてカルシウム肥料を葉面散布すると効果的です。
アンモニア態窒素が多すぎてカルシウムの吸収が抑えられている場合には応急処置として葉面散布によるカルシウムの追肥を行い、同時に窒素施肥の方法を見直すことが重要です。欠乏症が改善されると根の伸長は回復し新しい白い根が認められるようになります。
石灰は土壌改良材剤に基肥に追肥に防除資材にと用途が広く使い勝手が良いのでついつい使いすぎる場合があります。カルシウム自体の過剰症が問題になることはあまりありませんが、土壌がアルカリ性に傾きすぎて鉄欠乏が生じることがあります。その場合には石灰の使用量を減らしつつ、応急処置として植物が吸収しやすいキレート鉄を1~2%濃度で葉面散布しましょう。特に欠乏症の出やすい新葉に重点的に散布すると効果的です。
植物活性材「鉄力あくあ® F10」/愛知製鋼(株)
石灰窒素などの石灰質肥料を基肥に使うことで根菜類に甚大な被害を及ぼす根こぶ病を軽減できます。石灰窒素の主成分であるカルシウムシアナミドは根こぶ病菌に対し殺菌効果を持ち、激発圃場でなければ植え付け2~3週間前に100~200kg/10aを土壌に混ぜ込むだけで根こぶ病の発生を抑制できます。
養分吸収に不可欠な根を健全に育てることは美味しい野菜を作る基本です。状況に応じて石灰質肥料や鉄肥料を上手に追肥して元気な根を育ててくださいね。
【参考サイト】
●日本石灰窒素工業会/技術情報Q&A (3)農薬効果 Q-3-6 ハクサイ、キャベツの根こぶ病防除にはどのように使ったらよいのでしょうか?
http://www.cacn.jp/technology/qa/q3_6.html
●日本養液栽培研究会/養液栽培用語解説 イラスト版/養液栽培方式の分類/2019.3.7アクセス
http://www.w-works.jp/youeki/series/04.html
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。