コラム
公開日:2019.04.05
アザミウマは沢山の種類が知られていて、農業分野ではメジャーな害虫として世界中で厄介がられています。しかし肉眼では見つけにくく、家庭菜園ではあまり取り上げられることがないので一般にはあまり知られていません。農業経験が浅く、「アザミウマについては何となく聞いたことがあるが、被害には遭ったことが無い」、という場合は要注意です。ひょっとしたら既にアザミウマの被害が出ているのにアザミウマだと気づいていないだけかもしれません。
そこで今回はアザミウマの基礎知識として、生態や被害症状、他の害虫との見分け方について紹介していきたいと思います。
アザミウマ類の昆虫を総称して“アザミウマ”と呼びます。世界では5000種ほどが確認されていて、日本では作物を害するアザミウマだけでも40種以上います。体長1~2mm程の小さな吸汁害虫で、花の害虫として有名ですが花だけでなく葉や果実も吸汁するので野菜の害虫としても恐れられています。花の中や葉の付け根など見つけにくい場所を好み、体色は種により黄色や茶色、黒色など様々です。
卵→幼虫→蛹→成虫という生活環(せいかつかん)を持ち、孵化からおよそ20日で成虫になります。
よく発生するのは4月から10月です。
作物の様々な部位に被害をもたらし酷い場合には株が枯死します。
かすれたような白い小さな斑点ができたり褐色の斑点ができたりします。新芽は縮れや奇形になります。
◆花の症状花弁が茶色く褐変したり蕾のまま開花しなかったりします。
◆果実の症状縦方向にかさぶた状の傷ができたり、奇形や着色不良になったりします。
被害を実際に見たことが無い場合には直売所などの野菜を観察すると、太ネギの緑色部分にアザミウマによる白い小さな斑点を、ナスに縦長の傷を見つけられることがよくあります。
アザミウマの見た目の特徴は細長いことで、パッと見は1~2mmの線のようです。よく見ると頭部から2本の触覚が生えていることがわかります。見たことのない人はよく三つ葉のクローバーと一緒に咲いている“シロツメクサ”の花を手のひらの上で振ってみてください。落ちてきた細長い小さな虫がアザミウマです。
似た大きさの吸汁害虫にはアブラムシやハダニ、コナジラミがいます。
アブラムシやハダニはアザミウマと同じく黒い体色をしている場合もありますが、アブラムシはふっくらと丸い見た目をしており、ハダニは葉裏を好みクモの巣状の糸を張るので区別できます。コナジラミは白い羽を持ち白い粉が舞うように飛ぶので区別できます。
アザミウマ自体は小さく見つけにくいですが、葉の白いかすれや果実の傷など特徴的な被害は肉眼でしっかり確認することができます。今回紹介したような症状が野菜に見つかったら直ぐにアザミウマの被害を疑うようにしてくださいね。
【参考サイト】
・病害虫ナビ アザミウマ、住友化学園芸
<https://www.sc-engei.co.jp/resolution/pestanddisease/photolist/details/1203.html>
・大害虫アザミウマ、奈良県
<http://www.pref.nara.jp/20455.htm>
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。