コラム

ハダニ駆除に効果的な農薬とは?薬剤と散布方法まとめ

公開日:2019.05.13

ハダニは水に弱い害虫ですが、雨が降らず乾燥しやすい施設栽培では難防除害虫として恐れられています。一度大量発生してしまうと完全に駆除することは非常に難しい害虫なので防除には農薬の定期散布が欠かせません。しかし、ハダニは農薬に対する抵抗性が発達しやすく効果的な殺ダニ剤は減ってきています。全国一律に「この殺ダニ剤さえ使えば大丈夫!」という薬剤は存在せず、圃場ごとに適切に農薬を選択し正しく使用することが必要です。
そこで今回はハダニに効果的な農薬の選択方法や散布方法についてご紹介します。

1.ハダニ防除に必要な農薬の選択

ハダニの防除では同一薬剤や同一系統の農薬を連用することは避けます。
殺ダニ剤と言っても色々なタイプのものがあるので、ハダニの発生状況に応じて農薬を選択しましょう。主な殺ダニ剤とその特徴がわかり易くまとめられていますので、ぜひ以下の表を参考にしてみてください。


  • ●奈良県HP:農作物病害虫防除参考資料
http://www.pref.nara.jp/secure/42654/7-1_spider_mites.pdf



ポイント1

定植時や栽培中の定期散布など低密度時には、殺卵性・残効性に優れ天敵への影響が少ない薬剤を選択します。




ポイント2

大量発生時には緊急的に、成虫に対して効果の高い即効性の薬剤を選択します。




※イチゴなどに発生するナミハダニ黄緑型は農薬選択には特に注意が必要です。薬剤の効き難い場合が多いので、状況に応じて県の試験場などに感受性検定の相談をするようにしましょう。




◆農薬の使用について

農薬はラベルの記載内容をよく読んで正しく使いましょう。適用作物、使用量、希釈倍率、使用時期や使用回数をしっかり守ることが重要です。誤った使用は効果が得られないばかりか散布者の危険や農産物の汚染に繋がります。またハダニは昆虫ではなくクモの仲間です。殺虫剤は効かないので必ず殺ダニ剤を使用しましょう。



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2.農薬の散布効果を高めるために

ハダニは葉裏を好むので、散布前に余分な葉を掻いたり整枝したりして風通しを良くしておくと農薬がかかりやすくなります。
散布は農薬のかけ残しが無いよう丁寧に行いましょう。中途半端な防除は抵抗性発達の原因になります。

3.生物農薬、物理的防除の併用でハダニを撃退!

殺ダニ剤の効きが悪いハダニが増えてきたことから抵抗性発達の心配が少ない生物農薬や二酸化炭素を使った物理的防除が用いられる場面が増えてきました。従来から用いられてきたハダニを窒息させる気門封鎖剤も有効です。状況に応じてこれらを併用しましょう。
※ただし、気門封鎖剤は成虫への効果が高いのに対し殺卵効果は弱いとされています。


くん蒸とは?
害虫駆除や防カビ・殺菌を目的として、気体になっている薬剤を浸透させる方法です。身近なものでは家庭用殺虫剤である「バルサンⓇ」がよく似た方法といえます。



抵抗性発達が問題となっているハダニですが、早期発見に努め正しく農薬を使えば恐れることはありません。発生状況に応じて適切な農薬を瞬時に選択できるように日頃からそれぞれの農薬の特性を把握しておきましょう。



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【参考サイト】
・作物管理ワンポイントアドバイス,花き,6月,ハダニの防除方法について、香川県農業普及情報提供システム,かがわアグリネット,香川県農業経営課 農業革新支援グループ.
<https://www.pref.kagawa.lg.jp/agrinet/dougubako/06/kaki/byougaichu_6.htm>

ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。








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