コラム
公開日:2018.07.12
農業では作物の栽培方法を大きく「露地栽培」「雨よけ栽培」「施設栽培」の3つに分けています。今回はその中でも施設栽培のメリット・デメリットを整理した上で、おすすめの作物をご紹介します。
施設園芸とはビニールハウスやガラスハウスなどの施設の中で栽培する方法です。温度などの栽培条件を人為的に操作できるため、夏の野菜を冬につくることもできます。露地栽培と比較して一般的に資本集約的・労働集約的な経営がなされることが多いのも特徴です。
栽培方法の違いから施設園芸は土耕栽培と水耕栽培とに分けられます。 水耕栽培とは施設の中で土を使わずに栽培する方法です。
水耕栽培
季節的な分類の方法もあります。自然の季節に合わせた通常栽培、通常よりも早い時期につくる促成栽培、遅くつくる抑制栽培などがあります。
作物や品種、時期にもよりますが、露地栽培とハウス栽培が同じ面積で同じ野菜を栽培すると、ハウスの方が何倍も収穫することができます。単位面積当たりの収穫量(=土地生産性)が高いということです。これはハウスが温度・湿度等、作物に適した栽培環境を整えることができるからです。
ハウス建設費用や設備費用が多額になるというデメリットがあります。加えて、露地栽培と比較して「手間をかける」ことで収穫量を増やすため、単位面積あたりに必要な労働力が多いこともデメリットです。
作物にとって、なるべく良い環境を人為的に整えて栽培しようとする施設園芸ですが、昨今はより高いレベルで環境制御を行う次世代の環境制御装置も出てきています。このような設備を導入するには相応の初期投資が必要ですが、多くの園芸農家は行政の補助金をうまく使って導入しているようです。補助金により初期投資は相当に抑えられます。
また、次世代の環境制御装置を導入することで必要な労働力を削減することもできます。つまり、労働生産性を高めることができるのです。就農or参入を検討する際は導入をお勧めします。
施設園芸で栽培される作物は大きく分けて4種類(農林水産省の野菜の分類)あります。
「葉茎菜類」「果菜類」「果実的野菜」「根菜類」です。
果菜類の中でも特に需要が安定しているトマト類がおすすめの作物です。
付加価値の高い高糖度トマトなどの栽培方法が確立されてきており、大変魅力的です。また、ミニトマトは比較的強い作物のため新規就農者でも育てやすいことから人気があります。
なお、農林水産省の統計から、施設園芸で作られる野菜を1,000㎡(1反)当たりの所得が高い順に並べると下記の通りとなります。
1位
ピーマン 2,690千円/反
2位なす 2,414,千円/反
3位いちご 1,797千円/反
4位きゅうり 1,716千円/反
5位ミニトマト 1,586千円/反
6位大玉トマト 1,229千円/反
農業をされる地域、季節によっても金額は異なります。新規就農・新規参入する際は戦略を持って作物の選定を行いましょう。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。