コラム
公開日:2018.09.21
日本の施設園芸を語る際によく引き合いに出されるのが施設園芸先進国と言われているオランダの技術です。今回はオランダ園芸農業の特徴と日本の園芸農業の現状を整理し、日本がオランダから学べることについて私見をまとめます。
例えばリンゴと言えば青森県というように、日本国内では都道府県単位で「産地」が形成されています。ユーロ圏では国内地域ではなく、国単位で産地形成・役割分担が行われており、その中でオランダはトマト、パプリカ等の少ない作物に注力してユーロ圏内各国に輸出を行なっています。このような栽培品目の選択と集中により、農業用設備の開発や栽培技術が加速度的に進み、現在に至ったのではないかと推測できます。
オランダの園芸用施設は環境制御を行うのに良いとされるフェンロー型(軒高)ハウスが一般的です。また、被覆資材も日本のような農ビ・POではなく、ガラスを使用することが多いです。これは高緯度地域のオランダの場合、日射量が少ないため被覆資材の透光率等にシビアにならざるを得なかったことが背景のひとつにあります。
環境制御についてもITを駆使して温度・湿度・CO₂濃度・日射量を見える化し、高度な制御を行なってます。昨今、このような地上部の制御に注目が集まっていますが、地下部の養液管理技術もITを利用した先端的な取り組みを行なっています。
農家(農事法人)は民間の農業コンサルタントと契約するのが一般的です。コンサルタントは大学や研究機関、農業関連企業と連携しながら最先端の知見を現場の農家に伝えています。このような手数料に見合った結果を出せる知識・経験を持ったコンサルタントの存在はオランダ農業の大きな特徴の一つです。
日本でもITを活用して生産効率を上げるスマートアグリが盛んになってきています。
例えば、これまで篤農家の勘で行われていた潅水(水やり)も、飽差や日射量に比例してデータを蓄積しながら自動制御することが一般的になってきています。
このようなスマートアグリの盛り上がりを受けて企業の農業参入も増加傾向にありますが、大規模経営を行う施設の45%が赤字だと言われています。
オランダのとある農業コンサルタントから「日本の大規模経営の施設は、高度化した設備・IoT等すごいものがある。むしろ過剰投資に近い。一方で確かな知見を持った人材が現場に少ない。」という旨の話を伺ったことがあります。高度なハード(設備)があっても高度なソフト(知識)を持った人材がいなければ成り立たないのは当然です。「設備投資だけでなく、オランダの農業コンサルタントのような人材育成に投資をすること」を日本はオランダから学ばなければならないのではないでしょうか。農家や農事法人社員のオランダへの視察・留学などは具体的な解決策のひとつだと考えます。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。