コラム

農業法人化するメリット・デメリットとは?規模拡大を目指す農家必見

公開日:2019.01.23

1.規模拡大で検討したい法人化

農業で規模拡大したい!と考えた時に思いつくことは何でしょうか。
“作付面積の拡大”や”農地の集積”は真っ先に取り組みたいテーマだと思いますが、”法人化するかどうか”ということも避けられないテーマではないでしょうか。

法人化でよく聞くメリットといえば「節税」ですよね。他にも信用が高まったり、求人が集まりやすく後継者が得られたりと良い噂は色々流れています。
その反面、何か悪いことがあるに違いないと心配になったり勘繰ったりすることもあるかもしれません。


新しいことを始める際にメリットとデメリットの両方を知っておくことはとても重要です。そこで、ここからは農業法人化するメリットとデメリットの両面を紹介していきたいと思います。

2.法人化のメリットは?

「経営上」と「制度上」に分けてメリットを考えていきましょう。




経営上のメリット

●経営管理能力の向上
個人経営の農家の場合、記帳は単式簿記で事業費と生活費をひとつの口座から支出できるので経営がどんぶり勘定になりがちです。
法人化すると家計と経営が分離され、複式簿記になるため経営状況が把握しやすくなり、経営者としての意識向上が期待されます。

●対外信用力の向上
記帳が複式簿記になることに伴い、賃借対照表や損益計算書といった財務諸表の作成が義務化されます。財務諸表から法人の経営状況が一目で分かるので銀行や取引先からの信用が高まります。

●人材の確保・育成
社会保険へ加入する義務があり労働基準法も適応されるので、求職者から見ると「この法人に就職して長く働きたい」と思える魅力的な労働環境が整います。そのため優秀な人材の確保に加え、長年を要する知識や技術、経験の伝授といった人材育成も容易になります。

●経営継承の円滑化
法人の構成員や従業員に経営を継承することができるので、相続による継承の心配から解放され、意欲ある有能な後継者に事業を引き継いでもらうことも可能です。




制度上でのメリット

●節税
農業所得にかかる税金が、所得税から”法人税”に変わります。所得税は所得が多くなると税率も高くなりますが、法人税は定率のため法人化した方が節税になる場合があります。
また、役員報酬を給与所得とすると給与所得控除分が課税対象から引かれるのですが、所得が多い場合には青色申告の特別控除より有利な場合があります。
他にも
・欠損金の繰越控除が9年間と長期間になる(個人の場合は3年間)
・法人形態が農事組合法人の場合には原則として事業税は非課税
というメリットもあります。

●融資限度額の拡大
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)の貸付限度額が個人では3億円ですが、法人では10億円となり大きな事業を展開しやすくなります。

3.メリットばかり聞くと逆に不安…。デメリットは?

反対にデメリットはどのようなことが考えられるでしょうか。

●赤字でも税金の支払いがある
利益ゼロや赤字の場合でも、法人住民税として年間最低7万円を払う必要があります。また会計事務や税務申告を、税理士などの専門家に依頼する場合にはその分の費用がかかります。そのため売上が少ない場合には法人化による節税は望めません。

●社会・労働保険制度への加入が必須
社会(健康・厚生年金)保険への加入は義務であり強制適用されます。同様に労働(労災・雇用)保険も従業員1人から強制適用されます。従業員が少人数の場合には法人化によって人件費の負担が重くなることがあります。

●廃止手続きが複雑
法人を廃止(解散)する際には法人の財産を全て精算する必要があります。一般的に解散から精算完了までには2ヵ月以上かかります。


このように法人化には多数のメリットがある一方でデメリットもあるので、両方をしっかり頭に入れておきましょう。詳細については農林水産省や日本農業法人協会のホームページを参考にしてくださいね。


  • ●農林水産省HP
http://www.maff.go.jp/
  • ●公益社団法人 日本農業法人協会HP
http://hojin.or.jp/

法人形態や設立の手引き、助成金などの支援制度、法人化の事例などについても知ることができますよ。



【参考文献】
・法人経営のメリット、農林水産省 経営局経営政策課、2013.
http://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_seido/pdf/houjin_keiei_merit.pdf
・農業法人とは?、公益社団法人日本農業法人協会.
http://hojin.or.jp/standard/what_is/
・農業法人化のメリット、デメリット、一般社団法人福井県農業会議.
http://www.f-kaigi.jp/030_corporate/merit.html



ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。