コラム

【企業インタビュー】開発コンセプトは「オープンイノベーション」施設園芸業界をけん引する誠和の新たな挑戦!

公開日:2019.03.15

栃木県下野市にある株式会社誠和は、施設園芸業界の先駆的な総合メーカーとして40年以上業界をけん引しています。トマト栽培のスペシャリストを目指す「トマトパークアカデミー」他、全国7ヶ所に拠点があり(※記事執筆時)栽培セミナーや講演会も頻繁に開催されているため、施設園芸農家の方ならほとんどの方がご存知の会社ではないでしょうか。
施設園芸先進国オランダでは、生産者同士のデータ共有化や研究機関でのデータ解析と、生産者へのフィードバックにより収量を向上させてきました。このような先進的な取組みを、いち早く日本の施設園芸界に持ちこみ、広く流行らせたのは誠和だといっても過言ではありません。
この見える化を可能にした環境測定装置「プロファインダー」や世界水準の環境制御システムである「マキシマイザー」、スウェーデンから輸入している究極の内張りスクリーン「LSスクリーン」が有名です。その他、植物工場・施設園芸に特化した様々な測定装置を自社開発しています。

▲企業キャラクター「ペンたん」君



今回は企業インタビュー第一弾として、 株式会社誠和の研究開発部:大出部長へ【新商品】灯油式低温CO2局所施用システム「真呼吸」の開発経緯や企業の取組みについてお伺いしました。

1.誠和の開発コンセプトは「オープンイノベーション」

2011年、私たち誠和は業界でどこよりも先に“環境の見える化”に着目し、環境モニタリング装置「プロファインダー」を開発・販売しました。
そして現在。IT技術は日進月歩、とてつもない速さで進化しています。見える化の次は「プロファインダーのクラウド化」に着手し、昨年2018年8月、販売をスタートしました。クラウドのメリットはデータが集約できるようになることです。現段階で誠和が目指す最終地点は「農業経営一貫体系システムの構築」です。作り手の問題、売り手や販売の問題、売った後の会計処理の問題など、様々な問題を解消します。しかし、これは誠和一社だけではできません。そこで、開発コンセプトを「オープンイノベーション」とすることに決め、KDDIさんとユニシステムさんに協力していただき現在のプロファインダークラウドを作ることができました。
そして今回、「真呼吸」を開発するにあたってはノーリツさんに協力していただいたのです。
オープンイノベーションとは、企業や大学、外部から新たな技術やアイディアを集約して革命的な新商品やサービスを開発する、イノベーションです。今後も自社で出来ることは自社でやりますが、出来ないところは技術をお持ちの方々と連携しやって行こうと思っています。




新商品「真呼吸」の開発経緯

誠和にはプロファインダーという環境測定装置があります。ハウス内の環境要素(温度・湿度・CO2・光)の測定ができる装置です。このプロファインダーをご購入いただいく農家さんの中には、同時にCO2発生器を購入される方が多くいらっしゃいます。その際「CO2発生器から出る熱でハウス内の温度が上がってしまい、困っているんだよね」というお話をよく耳にしました。温度を気にして生ガスを利用される方もいらっしゃいましたがランニングコストが非常に高く、「経済的に厳しい」との声がありました。
それならば「誠和で新しいCO2発生器を作ろう!」と社内から声が上がり開発を決意しました。
しかし、自社で作るとなれば長い時間がかかってしまう。誰よりも早く生産者の方々を支援したい!との思いから、ガス風呂釜、給湯器の業界ですぐれた技術力をもっていらっしゃる「ノーリツ」さんに、声をかけさていただき、住宅用ボイラーの技術を利用した“農業専用品”を作っていただきました。
ノーリツさんも何か新しい取り組みをしたいと考えていらっしゃったようで、今回の「農業界」への進出は新しい一歩になったようです。

2.【新商品】灯油式低温CO2局所施用システム「真呼吸」

植物が成長するためには光合成が必要です。 光合成の原理は水と光とCO2の三要素。そこで今回注目したのがCO2です。「真呼吸」って名前かっこよくないですか?入社1年目と2年目の女性社員が考案しました。植物の“深呼吸”というところからたどり着いたそうです。

光合成を活発化させるためには調和のとれた環境をつくる必要があります。
従来のCO2発生器は灯油を燃やすことでCO2を発生させますが、同時に熱がでるので環境制御を難しくさせます。また、夏場の施用ができません。熱を出さないために「生ガスを施用する」という手もありますが、ランニングコストは灯油式の5倍近い価格となってしまうため、なかなか手が出せないのが現状です。そこに真呼吸は冷却用ラジエーターを通すことで「低温のCO2」を施用することができます。

▲クリックで拡大

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局所施用にしたことでムダなCO2の排出を抑えます。過不足なく与えることで収量のアップ、生育の安定につながり、ムダな資源利用を減らすことで環境にも配慮しました。
また、ダクトにもこだわって径が小さいものを選びました。あまり大きいと膨らんだときに作業の邪魔になってしまうし、植物にぶつかってしまう可能性もあります。そういったことにも配慮して極力小さいものを使うことにしました。
子ダクトから親ダクト、ファンなどここにあるもの(下図①~⑥)はシステムとしてすべて販売します。

▲システム一式



  • ▼農機具情報

3.誠和という会社

今回大手企業であるノーリツさんが私たちとお付き合いいただけたのは誠和社員の姿勢をみていただけた結果だと思います。うちの研究開発の人間は本当に一生懸命やっています、非常にレベルが高いです。営業も一緒です、勉強会でやっている内容も間違いなく誠和だからできること。
社内にはみなさんにご紹介したい優秀な人材がたくさんいて、オープンマインドの人が多いです。それは、うちの社長が「情報はどんどん発信しなさい」「コミュニケーションを取りなさい」と常々言っているからなのです。このカフェ(※今回の取材場所)も福利厚生ですけど、やろうと言ったのは社長です。「社員が自分の意見を言いやすい環境を作ろう、居心地のいい会社を作ろう」と考えているから私たちも自由に発言ができます。
私も部長だからと言って偉そうにしたくないのです。「上司だってバカなんだ!」と本気で思っているし、それを部下たちにも見せています。「おもしろいは正義!」です。もちろん仕事は妥協しませんよ。明るい職場にしたいと思っています。

■大出部長のお話を聞いていると会社の雰囲気の良さが伝わります。この気さくさが社内の言いやすい雰囲気を作っているのでしょう。

4.農業の変革!アグリトランスフォーメーション

今まで農業のために尽力してきた先人たちの歴史があるから、いまこの技術にたどり着いています。技術の発展は経済の発展そのもの。農業の明日を本当に変えていこうと思った時にはメーカーも研究機関も、生産する人も販売する人も、みんなが一緒に協力する必要があると考えます。
「アグリトランスフォーメーション」と名付けた“農業の変革“に、取り組んでいきたいと思っています。


~次回、「収量予測ソフト」が日本の農業の夜明け。誠和が目指す農業の流通革命(仮)」をお届けします~

今回取材させていただいたのは…

株式会社誠和 研究開発部
部長 大出 浩睦さん

元銀行マンという異色の経歴。
「農業に変革を!」との大きなビジョンに向けた強い意志と、熱い情熱がひしひしと伝わってくる。社長や部下に対するリスペクト精神も熱い。一方、「おもしろいは正義!」をモットーに自らが先頭をきって明るく何でも言い合える職場の雰囲気作りを大切にしている。ユーモアに溢れ接する人みなを笑顔にしてくれる温かい方だ。
好きなアイドル:乃木坂46

施設園芸.com編集部より

ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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