コラム

AI(人工知能)×農業ってこんなにすごい!活用事例と未来の農業

公開日:2024.12.13

近年のIT技術の急速な進化に伴い、様々な分野で技術革新が起きています。もちろん農業も例外ではなく、日々新しいテクノロジーの研究が行われています。今回はその中でもAIにフォーカスを当て、農業の未来について考えてみましょう。

1.AI×農業

「スマート農業」とは、ロボット技術や情報通信技術を活用し、作業の省力化や精密化を推進する新しい農業のスタイルのことです。日本の農業界は労働力不足や生産者の高齢化が大きな問題となっており、こうした課題を解決する糸口になるのではと期待を集めています。

AI技術の農業への応用は、このスマート農業の中のひとつとして位置づけられています。一般にAIというと「人工知能」のことを指しますが、農業においては「アグリインフォマティクス」という意味合いも持っています。Agri(農業)informatics(情報学・情報処理)からくる言葉で、膨大な量の情報から最適解を導こうとする技術です。
作物の状態や気象条件といったデータをもとに、人工知能とアグリインフォマテイクス両面から課題を分析して最適な解決策を提案するのが、農業におけるAI技術の活用と言えるでしょう。


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2.農業×AIのメリットとデメリット

農業にAI技術を取り入れる場合、多くのメリットを享受できます。しかし、効果的に活用するためには、検討が必要なデメリットがあるのも実際のところです。

メリット

農業×AIにより、膨大なデータの定期的な収集、利用が可能になります。気温や湿度、天候などの情報をIoTによって解析し、最適な播種や収穫、灌水時期を見極めることが可能です。 また、作業の予測が可能になることで、労働力や電力、燃料の削減、時間コストの削減につながるのもメリットです。蓄積されたデータを加工、分析することで、さらなる技術革新が期待できます。

デメリット

圃場の環境や農作物の種類、地域ごとに特徴が異なるため、情報の標準化は容易な事ではありません。また、新しい技術には導入コストの問題が付いてまわります。しかし、導入により収量や品質が向上すれば収益アップも期待できるため、検討の余地は十分にあるのではないでしょうか。

3.農業におけるAI技術の活用事例

現在、様々な企業や団体が農業におけるAI技術の活用に乗り出しています。ここではAIが活用されている機器やサービスについてご紹介します。

農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」

△画像提供:株式会社セラク



施設園芸と特に相性が良いのが、農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」です。温度や湿度はもちろん、日射量やCO2濃度、カメラ画像など様々なデータを計測・記録できるシステムです。
リアルタイムの圃場の様子や、過去の圃場の状況等、クラウドに保存されたデータは「みどりモニタ」アプリを利用することで、PCやスマートフォン、Apple Watchなど、様々なデバイスからいつでもどこでも確認可能です。圃場環境の異常時にはPUSH通知やメールで通知されるため、いち早く気づくことができます。課題の迅速な解決は、収量や品質維持に直結する重要なポイントです。

△画像提供:株式会社セラク




また、分析に関する知識が無い方でもデータの利活用ができるよう、蓄積された圃場データをAIが分析し、光合成状況や病害リスク、圃場の管理状況を可視化します。具体的な改善点や問題点をレポートにまとめLINEやメールでお伝えする「データ分析」サービスも提供開始。これまで経験や勘に頼っていた方や、経験の浅い新規就農の方でも、データの利活用により圃場環境の改善が可能となり、収量や秀品率の向上に期待ができます。

しおれ検知式自動かん水制御システム「Hamirus」(ハミルス)

△画像提供:クボタアグリサービス株式会社



2022年10月にリリースしたしおれ検知式自動かん水制御システム「Hamirus」(ハミルス)は、作物の潅水状況をAI技術により管理するシステムです。作物にムラなく潅水できているかどうかは、人の眼では判断が難しい場合があります。定期的なかん水には労力がかかるのも実情です。
「Hamirus」は、作物の上部に設置されたしおれ監視カメラで葉面積の割合を数値化します。 “しおれ率”を一定化することが可能になり、最適な潅水のタイミングを見極めることができます。その結果、高品質のトマトを安定的に生産することができるようになります。
まさに「プロ農家の観察眼による高度なかん水技術をAIが忠実に再現」しているといえるでしょう。

“しおれ率”は、朝一番のかん水後を100%とし、10%葉面積が減った状態をしおれ率90%としています。そのため、潅水時間だけではなく「しおれ率が90%になったら潅水する」といった“しおれ率”で潅水のタイミングを設定することも可能です。
撮影した画像やデータはスマートフォンからリアルタイムで確認することも可能です(日中のみ) 潅水状況がデータ化されるため、管理の省力化による労力が経験されるほか、高糖度トマト生産といった潅水タイミングの見極めが重要な作物の生産者にとっておすすめのAI技術です。

収量予測サービス「プロフィットナビ」

△画像提供:株式会社誠和



大玉トマトの収穫量を増やしたい農家におすすめなのが、株式会社誠和が提供する収量予測サービス「プロフィットナビ」です。プロフィットナビは、同社の「プロファインダークラウド」が収集した温度、日射量、CO₂濃度のデータを使用して大玉トマトの1作の最大収量を予測します。作物の光合成に最適な温度、日射量を割り出し、CO₂濃度を計測することで、植物の光合成度合いを判別するAI予測サービスです。
使い方は品種名や定植日、栽培終了予定日といった栽培スケジュールを入力するのみ。一度登録を済ませてデータが蓄積されれば、予測が見やすいグラフで表示される仕組みです。栽培環境のデータ収集により、栽培環境を見直すきっかけにもつながります。

AI×ドローン 「いろは」

△イメージ画像



空中を自在に飛行しながら撮影を行えるドローンは、AI農業との相性が良いとされています。ドローンの撮影技術とAIの画像解析技術を組み合わせたのが、葉色解析サービス「いろは」です。 これまで、広い圃場を回り作物の生育状況を観察するのは、時間も労力もかかる大変な作業でした。しかし「いろは」であれば、ドローンで圃場を上空から撮影・解析を行うことで、作物の生育状況を短時間で確認できるようになります。 また、撮影した画像データをもとに、収量予測や収穫適期の判別、圃場の高低差診断など様々な有益情報を受け取ることができます。

AI技術の農業への活用はこれからも急速に進んでいくことでしょう。未来の農業、ひいては食糧生産のため、こうした新しい技術は上手に利用していきたいですね。

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※本記事は2020/2/25に更新した記事をリニューアルした記事です





▼参考サイト
〇スマート農業とは、どのような内容のものですか。活用によって期待される効果を教えて下さい,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/17009/02.html
〇AI(アグリインフォマティクス)農業の展開,農ledge
http://nou-ledge.com/2017/06/20/agri_infomatics/
〇葉色解析サービス「いろは」,株式会社スカイマティクス
https://smx-iroha.com/
〇みどりモニタ,みどりクラウド
https://info.midori-cloud.net/production/monitor/
〇農林水産省,農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン~農業分野のノウハウの保護とデータ利活用促進のために~
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/keiyaku.html
〇AI農業,TASC MONTHLY,公益財団法人 たばこ総合研究センター
https://www.tasc.or.jp/educate/monthly/article_2/pdf/article_2_1812.pdf
〇クボタアグリサービス株式会社,製品情報,Hamirus
https://agriculture.kubota.co.jp/product/facility/control-hamirus/
〇(株)誠和,2022.05.11リサーチパーク鶴だより-第4便-
https://www.seiwa-ltd.jp/useful/2829/



ライタープロフィール

【オオタニ コウスケ】
北海道出身。
酪農経営について学んだ後、大手農業機械メーカーにて勤務しました。現在は機械メーカーで培った経験と知識を元にライターとして活動しています。得意分野は酪農、トラクタ、作業機、噴霧器やポンプに関することです。








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