コラム

収穫ロボットで作業効率アップ!注目の「ロボット4選」

公開日:2022.04.22

△提供:㈱デンソー



日本の農業は、高齢化と人手不足という深刻な課題を抱えています。この課題の解決に期待されているのが、野菜などの作物を自動で収穫する「収穫ロボット」です。今回は、今注目されている収穫ロボットについてご紹介します。

1.収穫ロボットとは?

「収穫ロボット」とは、農作物を自動で収穫するロボットのことです。農林水産省が公表した「農業労働力に関する統計」によると、農家の高齢化と農業人口の減少は年々進んでいて、農業における大きな課題となっています。

この課題の解決に期待されているのが、ロボットやAI、IoTなどの最先端技術を活用した「スマート農業」です。農業の中でも施設栽培は、スマート農業が最も活用されている分野で、温度や湿度、潅水、光の管理などで、さまざまな自動制御のシステムや機器が開発されています。

施設栽培において、最も労力と時間がかかる収穫作業には、自動化や機械化への期待が集まっていました。その期待に応えるために、さまざまな企業で収穫ロボットの研究や開発が進められています。

2.収穫ロボットに必要な技術

△提供:AGRIST(株)



施設栽培での収穫の基本的な流れは、①栽培棚の間を移動し②作物が出荷に適した状態か見極め③収穫して容器に入れる、です。これらの動作を収穫ロボットが行うためには、センサーなどで検知しながらぶつからずに移動する「自立走行」、カメラで作物の状態を認識して収穫するべきかどうか判断する「画像認識」、認識した作物を切り取って収穫して容器に詰める「摘み取り動作」の技術が必要です。

特に重要なのが、収穫すべき状態を見極める「画像認識」です。そのための人工知能(AI)の技術開発が大きく進みました。

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3.今注目されている収穫ロボット4選

ここからは、今注目されている収穫ロボットについてご紹介します。

ピーマン自動収穫ロボット「L」

AGRIST(アグリスト)株式会社は農業の労力不足解消の課題を解決するため、宮崎県新富町の農家と一緒に吊り下げ式ピーマンの自動収穫ロボット「L」を開発しました。 従来の地面にレールを敷くタイプのロボットとは異なり、ワイヤー上を移動するため、初期工事が簡素化されています。シンプルな機能と構造により収穫ロボットの中でも低価格です。多関節アームで最適な角度から収穫するため実を傷つけにくく、AIによる枝切り防止機能も搭載されている優れものです。 また、収穫機能に加えて遠隔操作機能の導入も予定されています。これにより身体の不自由な方が自宅にいながら収穫でき農福連携の実現が期待されています。






イチゴ自動収穫ロボット「ロボつみ」

今年の展示会でも注目を集めたのが、アイナックシステムが開発中の世界初のイチゴ自動収穫ロボット「ロボつみ」です。イチゴの色づきからAIが判断した最適な状態の実を傷付けずに収穫することができます。自動式でレールやワイヤーなどの設置は不要です。人の監視が不要なため、早朝や夜間の収穫作業も任せることができ、人手不足や作業負担の軽減が期待できます。最新モデルでは玉受けネットが設置されているあまおうのような品種の収穫も可能になりました。難易度の高いイチゴの収穫がスムーズに行えるようになったことで、今後別の作物への技術転用も期待されています。
※福岡県久留米市の自社農場で見学可能(事前予約が必要です)






トマト収穫ロボット「FARO(ファーロ)」

自動車関連企業のデンソーが農家と合弁会社を設立して開発しているのが、大規模施設園芸向けのミニトマトの自動収穫ロボット「FARO(ファーロ)」です。地面に敷いたレールの上を動きながら、カメラとセンサーでトマトの熟成度合いを検知。AIモデルを改良してロボットに搭載することで、理想的な条件下では90%を超える収穫成功率となっています。夜間作業にも対応できるため、人手不足や労力削減への貢献が期待されています。2020年度のグッドデザイン賞を受賞するなど見た目もスタイリッシュです。






自動授粉・収穫実証試験ロボット XV2

HarvestX株式会社が、農業の人手不足解消のために研究開発を進めているのが、授粉ロボット「自動授粉・収穫実証試験ロボット XV2」です。 従来ハチやハエに依存していたイチゴの受粉から収穫まで、イチゴ栽培の完全自動化を目指しています。植物工場での実証実験を開始し、世界で初めて、ロボットを使ったイチゴの受粉実証を成功させました。今後、ハチや人間を超える精度の受粉が期待されています。

現在では、「収穫できる農作物が限られている」「導入価格が高い」など、収穫ロボットにはまだ課題が残されています。しかし、多くの企業が開発や研究が進める中、日に日に精度が上がり、進化しています。今後、手ごろな価格で使いやすい収穫ロボットのサービスが展開されることに、大きな期待が膨らみます。

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▼参考サイト
〇農林水産省,農業労働力に関する統計
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
〇 ロボスタ
https://robotstart.info/2022/03/23/green-pepper-robot-l-market-model.html
〇DIAMOND SIGNAL
https://signal.diamond.jp/articles/-/1118
〇デンソー,トマト収穫ロボットFARO
https://thecores.denso.com/ja/robot01/
〇 株式会社アイナックシステム
http://www.inaksystem.co.jp/

ライタープロフィール

【都良TORA(田口 忠臣)】
北海道在住のフリーライター。
6次産業化やグリーンツーリズム、農産加工品開発のコンサルティング・ブランディングを行う仕事をしていたことから、その知識を活かして食や観光・農業に関する記事を書いています。
保有資格:北海道観光マスター、食生活アドバイザー、日本酒ナビゲーターなど









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