コラム

日射比例で潅水!生育アップにつなげる効果的な制御とは

公開日:2020.09.15

1.生育に直結する潅水の良し悪し

潅水(水やり)は作物の成育を左右する重要な要因です。いくら施肥をしても吸水がうまくいかなければ十分な養分を取り込むことはできません。少なすぎる潅水は 茎葉の伸長の衰えや果実の肥大の低下 などを招き、多すぎる潅水は 糖度の減少や裂果、根腐れ などに繋がります。

作物が必要とする適切な吸水量は生育ステージや時期で異なるのはもちろん、 天候や時間帯によっても異なります。 そのため品質の良い作物を沢山収穫するためにはいかに 植物が必要とするときに必要とする潅水量を与えられるか が鍵となります。



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2.日射比例潅水で効果的に生育アップ

日々変化する吸水量に応じたきめ細やかな潅水を実現するには 日射比例潅水 が有効です。日射量と吸水量は比例することが知られており、日射比例潅水とは 積算日射量に比例して潅水を調整する方法 を指します。

トマトやきゅうりなど様々な作物で日射比例潅水をすることによって 収量が増えたり、糖度などの品質が向上する ことがわかっています。養液栽培のように、常に十分な水を供給できる栽培システムでも、日射比例潅水を取り入れることで 給液や排液量を減らすことができコストダウンに繋がる などメリットもあります。

日射比例潅水では 日射量が多いときには潅水量も増やします。
例えば、春先からは気温に加え日射量も増加し、作物がぐんぐん成長する時期なので潅水量も増やしていきます。
ただし、生育が盛んでも 天候による吸水量の変化には注意が必要 です。日射量の多い晴れの日は吸水量が多く、晴れの日を100とすると曇りの日はおよそ50、雨の日は30と吸水量は大きく異なります。通常、朝、昼、夕と1日に3回の潅水を行っているのならば、雨の日は朝の1回だけにするなど 日射量に応じて潅水量を調整 するようにしましょう。


例:日射比例潅水 (株)ニッポー提供



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3.自動で出来る「日射比例潅水装置」がおすすめ!

作物にとっては嬉しい日射比例潅水ですが、実際には手動で行うことはなかなか大変です。夏場など急変する天気に振り回され複数のハウスのタイマーを、それぞれ何度も変更していてはそれだけで疲れ切ってしまいます。

そこで取り入れてみたいのが、各メーカーで商品化されている 自動で日射比例潅水を行ってくれる「日射比例潅水装置」 です。事前に制御機器であるコントローラにどれくらい日射が積算されたらどれだけ潅水するのかを設定しておくと、付属の日射センサーで測定した日射量に応じて自動で潅水を行ってくれるという優れものです。


例:日射比例潅水装置 (株)ニッポー提供



潅水と併せて液肥の混入もしてくれるものや温度、湿度、飽差、CO2濃度など他の制御機器と連動してより高度な制御ができる装置や、必要に応じてカスタマイズできる装置もあります。また、従来の土壌水分センサー(pFメーター)式の自動潅水装置よりも安く導入できる傾向があり、生産者にとって嬉しい点が多々あります。
さらにトマト養液栽培では、栽培期間中に潅水の設定条件を変更しなくても、収量を維持しながら給液や排液量が削減できる 日射比例制御と早朝の少量給液を組み合わせた管理方法 が開発されるなど、更なる効率化も進んでいます。


効果的に生育アップを達成するには栽培の肝である潅水に注目し、日射比例潅水を行うことがおすすめです。日射比例式の自動潅水装置を導入すると、より細やかな潅水制御をしつつ日々の労力をぐっと減らしたゆとりある農業の実現も可能ですよ。






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▼参考サイト
日射比例式潅水コントローラ 潅水NAVI、(株)ニッポー
https://www.nippo-co.com/products/nogyo/kansui/kansui.html
トマト養液栽培の給液を効率化する日射比例・早朝給液管理、農研機構、2014.
https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H26/yasaikaki/H26yasaikaki006.html
根域制限栽培での日射比例かん水制御による高糖度トマトの多収技術、農研機構、2009.
https://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/research_results/h21/05_yasai/p133/03_518.html
▼参考文献
佐賀県農業試験研究センター ニュース、佐賀県、11号、2019.
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00322996/3_22996_123976_up_ed4z71o3.pdf

ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。








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