コラム

ゲノム編集食品とは?遺伝子組み換えとの違いとメリット・デメリット

公開日:2021.07.20

近年見聞きするようになった「ゲノム編集」という言葉。なんとなくは知っていても詳しいことはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回はゲノム編集とはどういった技術であるのかを中心に、遺伝子組み換えとの違いについてもわかりやすく解説します。

1.ゲノム編集技術とは

ゲノムとは各々の生物が持つDNA全体のことを指しています。生物の細胞の中では紫外線などによってゲノムが切断されることがあり、本来はそれを元通りにする仕組みを持っていますが、まれに修復ミスにより元の状態とは違った並び方になる突然変異が起こることがあります。ゲノム編集技術は、この現象を利用して目的の場所に人為的に突然変異を起こす技術で、狙った場所に突然変異を起こすことができるので、これまでの品種改良とは違って求める性質を持った品種を効率的に作り出すことができるというのが特徴です。

ゲノム編集を行うためにはゲノムを切断するハサミの役割として開発されたタンパク質を利用します。このタンパク質を細胞に入れて狙ったゲノムだけを切ることで数万個ある遺伝子の一部分だけを変えることが可能になります。

2.機能性表示食品の開発も

実は2020年にゲノム編集を利用した農作物の第一号としてGABA高蓄積トマトの「シシリアンルージュハイギャバ」が開発されていたのをご存知でしょうか。GABAはストレス軽減血圧を下げる効果がある栄養機能成分です。トマトには元々GABAを合成する酵素がありますが、その酵素のブレーキをゲノム編集技術で抑えることでGABAの蓄積量が通常の品種と比べて5~6倍高いトマトが誕生しました。

さらに2021年には農研機構、琉球大学、沖縄県農業研究センター、サンエーの4者が共同でヘチマを真空パックにすることでGABAを安定的に増加させる方法を開発。6月に販売が開始されています。

3.遺伝子組み換えとの違いは?

遺伝子組み換えは生物が持っていない遺伝子を外から追加して、元々持っていない性質を加えることにより、特定の除草剤に耐性を持った品種などを作り出すことができる技術です。先述した通り、ゲノム編集は持っているゲノムを切断し突然変異を起こす技術なので、遺伝子の組み換えとは似ているようで全くの別物であることがおわかりいただけるかと思います。


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4.ゲノム編集のメリット・デメリット

メリット
従来の品種改良で利用されている育種交配という技術では、望む性質を持つ品種が出来上がるまでに、何度も交配を重ねる必要があり長い年月とお金がかかるものでした。一般的な品種改良では販売できる品種になるまで短くて数年長いと数十年かかることもあります。

一方でゲノム編集は、1年~4年ほどで商用利用できるものが作れると言われているため、品種改良にかかるコストを大幅にダウンさせることが可能です。新しい優良品種を次々に生み出すことができるだけでなく、地球規模の課題として急務とされる食糧生産の向上気候変動対策としても有効な技術であると考えられています。


デメリット
とても画期的な技術であるゲノム編集ですが、デメリットが全くないという訳ではありません。それはオフターゲット変異と呼ばれ、狙っていない部分のゲノムを切ってしまう現象です。これは狙ったゲノムとよく似た配列のゲノムを切って変異させてしまうため不安を覚える方もいますが、オフターゲット変異が起こる確率は極めて低いことがわかっています。また、ゲノム情報が解読されている物であれば事前に似た配列の有無を調べるなど、オフターゲット変異を防ぐ対策が講じられています。

一般的に広まっている品種改良でもオフターゲット変異は起こり得るため、ゲノム編集を危険とするのであれば、従来の品種改良も危険ということになってしまいます。


ゲノム編集技術は効率的で人々の生活を支える技術になり得る一方で、不安を覚えるという声があるのも事実ですが、科学が人間の生活にたくさんのメリットをもたらしてきたということは誰もが実感しているはずです。新技術については科学的な観点から物事を判断し、関心を持ち続けることが重要なのではないでしょうか。



▼参考文献

○「ゲノム編集~新しい育種技術~」,農林水産省
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/attach/pdf/genom_editting-11.pdf

▼参考サイト

○「あなたの疑問に答えます(ゲノム編集の特徴は? 遺伝子組換えとどう違うの?)」,農林水産省
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting/interview_1.htm
○「(お知らせ) 機能性表示食品ギャバへちまを発売」,農研機構
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/142490.html
○「GABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」について」,サナテックシード
https://sanatech-seed.com/ja/20201211-2/embed

ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。


    
    


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