コラム
公開日:2021.11.08
近年、台風によるビニールハウスへの被害が全国各地で増えてきています。これを受け、農林水産省は施設園芸の台風被害防止と早期復帰の対策マニュアルをホームページで公表しています。今回は施設園芸の台風対策例と、メーカーに聞いたおすすめの台風対策グッズをご紹介します。
△画像提供:日建リース工業株式会社「48ストロングハウス」
パイプハウスの台風対策は、まず「台風接近時(事前対策)」と「台風通過後(事後対策)」の2つに分けられます。
●ビニールハウスの構造材の強度を確認し、耐えられる風速を把握しましょう。
●耐えられない強風が予想される場合には補強を行います。
●施設に水や土砂が流れ込む可能性がある場合は、排水や防水の対策をします。
●急な台風の接近にも間に合うように、日頃から構造材に錆びや腐食、金具や被覆のゆるみなどがないか、点検やメンテナンスを行うことが大切です。
●台風の接近中は、進路や風速、到着予想日時など小まめに情報収集しましょう。
●台風が近づいてきたら、ハウス内への風の吹き込みを防ぎます。補強では対応ができない強風が予想されるときには、アーチパイプなど構造材の保護を優先し、ビニールなど被覆材の巻き上げ、切断、引き落としを行うことも必要です。
●台風の通過中は人的被害を避けるため無理な作業は絶対に行わないようにします。
●台風の通過後は、施設を見回って破損個所があれば修繕しましょう。
●窓の自動開閉装置や換気扇の電源を元に戻すなど、換気を行って施設内が高温になるのを防ぎます。
●雨による施設内や周辺の浸水がある場合は、排水を行います。
●泥の跳ね上がりを動力噴霧器で洗い落とす、必要に応じて薬剤を散布するなど作物に対して当面の対策を行います。
●潮風を受けてしまった場合、散水して作物に着いた塩分を洗い流します。
●作物への被害が大きい場合、蒔き直し、植え直しなども含めて、今後の栽培計画を検討します。
ハウスを建てる際に「台風に強いハウス」を選定することも台風対策の一つと言えます。 日建リース工業株式会社の「48ストロングハウス」は、通常のパイプハウスで使用されるものよりも太い、家屋を建設する際に使用する足場のパイプを使って建設したハウスです。耐風速は43m/sとなっており、台風が頻繁にくる沖縄県内のハウスでも、4年間一度も壊れていないという事例があります。
ここからはおすすめの台風対策グッズを「事前の対策」と「台風通過後の対策」に分けて5つご紹介します。
1.ハウス押さえネット(東京戸張株式会社)
単棟ハウスの上に網を被せることで、風によるビニールのバタつきや破れを防ぎます。丈夫な身糸と耳糸を使用しているため高耐久性があり、台風による強風対策にぴったりの商品です。網の力でハウスを守ってくれます。
2.ワイドラッセル防風網(日本ワイドクロス株式会社)
最新型ラッセル機により、ポリエチレン繊維を特殊編みした生産資材で、目ずれ・ほつれが起きにくく軽いため、防風だけでなく防雹・防霜などさまざまな用途で利用できます。
必要に応じて薬剤の散布、窒素やカリを与えて草勢を回復させる、液肥を与えるなど当面の対策を行います。
3.タキイトレエース(タキイ種苗株式会社)
トレハロースを50%配合、他に微量要素や有機酸を含んだ肥料です。幅広い農作物に利用可能で、環境ストレスなどによって引き起こされる障害を軽減して生育を促進します。
※「試験結果」について
左:タキイ トレエース800倍希釈100mLを14日間隔で2回散布。右:対照区、水100mLを14日間隔で2回散布。
4.オキソパワー5(タキイ種苗株式会社)
土壌中の水分と反応して酸素が発生することで根の酸欠を防ぎます。粒状で散布しやすく台風やゲリラ豪雨などの後の対策に効果的です。
5.M・O・X(保土谷化学工業株式会社)
酸素供給期間は施用直後から1~2日間と短いですが、緊急対策におすすめの即効性の酸素供給財です。台風や豪雨などで冠水した場合には、土壌に原液を流し込むこともできます。
今回は、施設園芸の台風対策についてご紹介しました。一番大切なのは、日頃から施設の点検やメンテナンスを行っておくことです。また、必要なものは予め準備しておくようにしましょう。
▼参考サイト
〇農林水産省, 施設園芸の台風、大雪等被害防止と早期復旧対策
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/saigaitaisaku.html
▼参考文献
〇園芸ハウス台風対策マニュアル
https://www.pref.kyoto.jp/nosan/news/documents/fukyuverall.pdf
〇グリーンレポート№627(2021年9月号)
https://www.zennoh.or.jp/greenreport/pdf/627/Gr627_13.pdf
ライタープロフィール
【都良TORA(田口 忠臣)】
北海道在住のフリーライター。
6次産業化やグリーンツーリズム、農産加工品開発のコンサルティング・ブランディングを行う仕事をしていたことから、その知識を活かして食や観光・農業に関する記事を書いています。
保有資格:北海道観光マスター、食生活アドバイザー、日本酒ナビゲーターなど