コラム

農地を相続したら?相続登記の義務化で必要な手続きを解説します

公開日:2023.12.05

2024年4月1日から相続登記が義務化されます。人口減少と少子高齢化の影響が広がるなかで、所有者が不明な土地の増加を抑えることを目的としています。農地を相続する場合は宅地などの相続とは異なる手続きが必要です。今回は、農家の農地相続について解説します。

1.そもそも相続とは?

相続とは、亡くなった人の財産を特定の人が引き継ぐことです。財産を引き継ぐことになった原因が人の死亡によるものが相続であり、契約によって財産を譲る贈与とは異なります。 財産を引き継ぐ人のことを相続人、亡くなった人のことを被相続人といいます。相続人は被相続人の親族である場合が一般的でしょう。親族が複数いる場合には、相続した財産を分ける必要があります。分ける方法によって相続には次の3種類があります。




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2.農地を相続したら。2024年から義務化される「相続登記」の手続き

相続が発生した場合(農地の名義人が亡くなった場合)、税務署への相続税の申告と法務局への農地の名義人を変更するための相続登記(所有権移転登記)を行う必要があります。また、相続した農地を売却する場合や他の用途に転用する場合は農業委員会への届出と許可を得る必要があります。
※相続登記は2024年4月1日から義務化されます。

相続税の申告

税務署に相続税の申告をしなければならないのは、すべての相続財産の評価額が基礎控除額を上回る場合です。 相続税の基礎控除額は以下の計算式で求めます。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められており、期限を過ぎて申告する場合は、無申告の理由(期限後の自主的申告、税務調査を受けての申告など)により罰則として無申告加算税が課されます。

農地かどうかの判断

土地の相続税評価額は土地の用途、さらに農地であった場合は農地の種類によって異なるため、農地の区分を知っておく必要があります。また、相続した土地が農地かどうかは登記簿上の地目が「田」「畑」として登記されているかどうかではなく、実際に耕作されているかどうか、休耕地など耕作しようとすれば耕作可能な土地かどうかで判断されます。

農地の相続税評価方法

土地の相続税評価額は土地の用途、さらに農地であった場合は農地の種類によって異なるため、農地の区分を知っておく必要があります。また、相続した土地が農地かどうかは登記簿上の地目が「田」「畑」として登記されているかどうかではなく、実際に耕作されているかどうか、休耕地など耕作しようとすれば耕作可能な土地かどうかで判断されます。

● 農地法上の区分
・農振農用地区域内農地(農業振興を目的とする農用地区:転用原則不許可)
・甲種農地(農家が集積する農業に適した地域:転用原則不許可)
・第1種農地(農業に適した地域:転用原則不許可)
・第2種農地(市街地化を見込む地域:代替地で転用の目的が果たせる場合には不許可)
・第3種農地(市街地区域の農地:転用原則許可)

農地は国が食糧政策を進める上で重要な位置づけとされており、農業以外の用途に使う場合には制限が設けられています。相続を期に農業以外の用途に土地を使用する場合や売却を行う場合は、相続税の申告と相続登記以外に、農業委員会への届出と許可を得なければなりません。

● 税法上の区分
・純農地
(農振農用地区域内農地・第1種農地:他の用途への転用が難しく相続後も農地に使用されることを想定。相続税評価は最も低い。)
中間農地
(第2種農地:市街地化が見込まれるが、他の用途に転用されないことを想定。純農地よりも相続税評価は高い。)
市街地周辺農地
(第3種農地:市街地化が見込まれ他の用途に転用される可能性が高い。)
市街地農地
(転用許可を受けた農地、または転用許可が不要な農地。相続税評価額は最も高い。)

農地がどのような地域にあるかが農地法上の区分であり、それによって税法上の評価区分が異なります。農家が多い農業主体の地域ほど相続税評価額は低く、市街地に近づくほど相続税評価額は高くなります。相続税評価額が高いと納付しなければならない相続税が増えることになります。

農地を相続した場合の納税猶予の特例

農地の相続税が高いと相続を期に離農したり売却したりするケースが増えることが想定されます。農地の区分と同様に、農地として存続する可能性が高い土地ほど納税額を低く抑える制度が農地の納税猶予の特例です。農地の納税猶予の特例は、相続後も農地として使用される場合には納税額を低くし、農地を相続した相続人の負担を軽減することを目的としています。







相続登記

法務局への相続登記の申告期限は、相続が開始したことを知った日から3年以内です。正当な理由なく登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料という罰則が定められています。
相続登記以前の登記上の地目が「田」「畑」であり、土地の現況も耕作可能な農地と認められる場合には名義変更登記をすることが可能です。農業委員会からの許可を得る必要はありませんが、届出が必要かどうかは自治体によって異なるため市区町村に問い合わせてみるのがよいでしょう。

3.農業を続けない場合の相続手続き

相続人が相続した農地で農業を続けることを辞め、他の用途に使ったり、宅地などに整備して売却したりすることを農地転用といいます。相続で農地転用を図る場合には、農業委員会に届出を行い、許可を得る必要があります。農業委員会は市町村に設置される行政委員会であり、農地売買や転用、賃借の許可、遊休農地の調査などを行う機関です。

農地転用を図る場合には農地を相続した相続人が申請書の届出を農業委員会に行います。農地転用を図る土地が4ha以下の場合は都道府県知事の許可、4ha以上の場合は農林水産大臣の許可を得て転用が可能になります。 許可申請を専門家に依頼する場合は書類作成費用がかかるほか、転用のための造成費用などが発生すること、また、相続税も農業を続ける場合と比べて高くなることを認識しておく必要があります。





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▼参考サイト
〇相続税のチェスター
https://chester-tax.com/
〇相続税申告相談プラザ
https://www.zeirisi.co.jp/
〇ベリーベスト法律事務所大分オフィス
https://www.zeirisi.co.jp/

ライタープロフィール

【矢射尽春】
宮城県の米どころに住んでいます。調査会社に所属し大手シンクタンクの地方振興プロジェクトに携わるなどの経験から、マーケティング視点の重要性を農業にも広めていきたいと考えています。農協に務めていたこともあるので、ハウス栽培に役立つ情報を広く発信していきます。








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