コラム
公開日:2018.04.20
ハウス内は密閉空間のため、炭酸ガスが不足しがちです。炭酸ガス発生装置を使って、人工的に“炭酸ガスを施用”することで植物の生育アップ、収量・品質アップにつながります。(炭酸ガスを与えることを”炭酸ガス施用”または“炭酸ガスを炊く”とも言います)
しかし、炭酸ガスは名前の通り「ガス」なので、目には見えません。作物が呼吸をしたり、炭酸ガスを吸い込んでいる様子を見ることは出来ませんよね。いくら炭酸ガスを施用しても作物が吸収してくれなければ、“ムダ炊き”になってしまい、経費も“ムダ使い”する残念な結果となってしまいます。そこで今回は“効果が出る炭酸ガス施用ができているのか?”を知るための4つのチェックポイントをご紹介したいと思います。
「作物には炭酸ガスを与えると良い!」との情報はほとんどのハウス栽培農家さんがご存知かと思います。環境制御の第一歩として炭酸ガス発生器の導入から始める方も多いのではないでしょうか。実際に“炭酸ガスを与えることはトマトやイチゴ、ピーマン、キュウリなど全ての植物の生育上とても効果的な方法”なのです。
植物は光合成をすることで“自分が成長するために必要な養分”を作ります。植物の光合成を最大限活性化させることで収量・品質アップすることができるのです。
この光合成をするときに必要な原料が「水」と「二酸化炭素=炭酸ガス」です。
植物は太陽光をエネルギーとして、葉からCO2、根から水を吸収し、糖を作って生育します。これが光合成です。植物は光合成と同時に「呼吸」をしています。光合成とは逆の活動で、光合成によって作られた糖を分解してエネルギーを作り出し、生育に利用しています。植物は自分の成長に必要なエネルギーを自分で作っているのです。まさに自給自足ですね。
トマトやイチゴなどの果菜類では、呼吸に利用しなかった糖を適切な部位に転流させるので、実が大きくなり、品質が高まります。
植物が光合成する為には根から水を吸い上げると同時に、気孔から“蒸散”と“炭酸ガスを吸収”する必要があります。ここで大切なのは、“気孔を閉じさせない事”です。気孔が閉じていては蒸散も炭酸ガスの吸収も出来ません。
そのため、最近では “飽差を管理”をする方が増えています。飽差とは、飽和水蒸気量と絶対湿度の差で、あとどれくらい水蒸気を含むことができるのかを示した値です。(数値が大きいほど乾燥していることを示します)飽差が6g/m3以上は“乾燥状態”なので、植物は乾燥を防ぐため気孔を閉じて、蒸散をしません。
また、飽差が3g/m3以下の場合は“湿り過ぎ“のため、気孔が開いていても、空気が湿っているため蒸散しにくくなります。蒸散と炭酸ガス吸収を促進させるためには“気孔を閉じさせない環境作り”が必要なのです。
植物は炭酸ガスを施用すると光合成が盛んになるため、土から多くの水分を吸い上げます。しかし、灌水が間に合わず存分に水分を吸い上げることができないと、蒸散量が減少し、不足のストレスで気孔の開度が小さくなります。すると、炭酸ガスを吸収しづらくなってしまうのです。植物の場合、水のほとんどが身体を冷やすための蒸散に使われているため、光合成で使われる水は少量です。
人も、動き回って身体がほてっているのに飲み水がなかったら、汗をかくことが出来ず体温を下げることができません。とてもストレスに感じますね。
気孔とは植物が呼吸をするときに開閉するところで、口のようなものです。
ハウス内が無風状態では、炭酸ガスを気孔に送り込めていない可能性があります。
葉の表面にできる空気のよどみを“葉面境界層”と言いますが、この層を破壊して植物に炭酸ガスを吸わせるためには“循環扇や多孔ダクトで風を送る”必要があります。植物の気孔を閉じさせないためには、吸水、蒸散、光合成が必要です。葉面に乾燥した空気を送ることで蒸散を促します。
他にも、空気を循環させることで、温度ムラの解消や病害予防対策にも効果が期待できます。ハウス内は常に風が流動している状態を作りましょう。
天窓が換気設定温度を超えて開き、急に湿度が下がって乾燥すると、植物がストレスを感じて気孔を閉ざしている可能性があります。植物に急激な温度・湿度の変化を与えると、気孔が閉じてしまうのです。一度気孔が閉じると2時間は活動が停止すると言われています!
急激な温度・湿度の変化を与えない為にも天窓は少しずつ開けるようにすると良いでしょう。
炭酸ガスの不足は生育を止めてしまい、与えすぎは経費のムダになってしまうので、どちらも良い事ではありません。本当に炭酸ガスが足りているのか?植物にとっていつが必要な時なのか?見た目には分かりませんよね。また、天気によっても炭酸ガスの必要量は変わってきます。炭酸ガスの”必要な時・必要な量”知るためには、炭酸ガスの濃度を測定する必要があります。数値化してみることで、現在のハウス内の環境が正確に”見えて”植物の状況を”知る”ことができ、”いつ何をしたら良いのか”が分かります。炭酸ガス濃度を測定してみることをおすすめします。
いかがでしょうか?実践できていない項目は見つかりましたか?
これから炭酸ガスを施用してみたいと考えている方も、すでに施用しているけれど効果が実感できない方も、まずはこの4つのポイントを押さえて生育アップや収量・品質アップを目指しましょう。
▼参照文献
斉藤章(2015)『ハウスの環境制御ガイドブック:光合成を高めればもっととれる』農文協.
CO₂貯留・供給装置「agleaf (アグリーフ)」/フタバ産業(株)
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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