コラム
公開日:2018.05.08
野菜の成分で最も多いものはなんでしょう?そう、水分ですね。すなわち上手に野菜を育てるには上手な水やりが欠かせません。ですが「水やり3年」という言葉がある程、水やりは奥深く難しい作業です。水やりに失敗して根が腐ってしまった、乾燥しすぎて枯れてしまったというのは良くある話です。
植物が話してくれるか、土の中を見ることができたら話は簡単です。しかし、そうはいきません。じっくり時間をかけて経験を積み重ねますか?そんなに時間はかけられないという方、市販の土壌水分計を使えばすぐに効果的な水やりができるようになりますよ。ただし、どちらの場合にも土壌水分の知識が欠かせません。そこでここからは土壌水分と土壌水分計の基礎についてサクッとみていきたいと思います。
土壌は土壌粒子と隙間からできており、隙間には水か空気が入っています。雨や水やり等で隙間が水で満たされると大きな隙間の水は1日程で重力によって下方に流され、隙間には空気が入ってきます。小さな隙間の水は重力に逆らって毛細管現象で保持されます。良い土壌とは排水性の良い大きな隙間と保水力の高い小さな隙間の両方を併せ持つ土壌で、植物は主に大きな隙間から酸素を、小さな隙間から水を吸収します。
このことを踏まえると、水のやりすぎは大きな隙間が常に水で満たされている状態で、植物の根は酸欠になり腐ってしまうということですね。逆に水をやらないでいると小さな隙間の水が無くなり、やがて植物は枯れるということがよくわかると思います。
ということは、隙間の水の状態を知ることができたら効果的な水やりができそうですね。隙間の大小によって水が土壌にくっついている力を測定することで隙間の水の状態を知ることができます。ちなみに土壌の水分量を測定するだけでは、その水が植物にとって使いやすい水かどうかはすぐにわかりません。
水が土壌にくっついている強さはpFという値で表され、値が大きいほど強い力でくっついていることを示します。植物が利用しやすい水はpF 1.5~3.0です。pF 1.5は雨が降った後に重力で大きな隙間の水が排水された状態の値です。pFは農作物ごとに適した値があり、例えばピーマンならpF 1.5~2.0です。
市販のpFメーターはセンサー部分を直接土壌に差し込むことで簡単にpF値の測定ができます。上手な水やりの心強い味方になってくれると思いますので、水やりに困ったら購入を検討してみてくださいね。アナログ式、デジタル式、土壌用、鉢用など様々なタイプがあるので、ご自身の栽培方法にぴったりのものが見つかると思いますよ。
▼参考文献
鳥取県農林水産部農林総合研究所企画総務部技術普及室編 (2011) らくらく土壌診断の手引き、13土壌透水性・保水性の診断.
五島 康 (1977) 施設園芸野菜の水管理とかん水施設、農業および園芸、52号, 177-184.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。