コラム
公開日:2020.11.27
イチゴ栽培の盛んな地域では、冬になると夕方頃からそこら中の農業ハウスに灯りがともるようになります。これは 電照栽培に特有の光景です。電照栽培というと菊が有名ですが、私たちが真冬に当たり前のようにイチゴを食べられるのは電照栽培のおかげです。 そこでここからは、施設イチゴに欠かせない電照栽培の仕組みやメリットについてわかりやすくお伝えしてゆきます。
植物の成育は日長に影響されることがわかっています。そのため、人為的に日照時間を調整すると野菜や花きなどの生長や収穫、開花時期をある程度コントロールすることができます。電照栽培とはこの
日照時間の調整に照明設備を用いる栽培方法です。
イチゴの場合は
日照時間が短くなる冬の夜間に電照を行い、長日条件にすることで生長を促します。電照には電球が用いられることが多く、
白熱電球や蛍光電球、LED電球が普及しています。
電照方法は主に3タイプあり、日没から3~4時間くらい電照を行う
日長延長方式、夜間の適当な時に3時間くらい電照を行う
光中断方式、夜間の1時間ごとに1回、数分間電照を行う
間欠電照方式があります。
イチゴの場合、電照栽培は
冬季の草勢維持を目的に行われます。
メリットとしては
冬の寒い時期に葉の生長を良くすることで収量を確保できることが挙げられます。
実を付けたり果実を肥大させるためには沢山のエネルギーが必要です。エネルギー源は光合成産物のため、
葉でしっかりと光合成が行われることが重要です。
しかし、冬の施設栽培で果実の肥大が始まるころには次の花房の生長も始まっており、葉の生長まで養分がまわらなくなります。ハウスの加温をしてもそれだけでは必要な葉の成長は確保できません。冬が深まるにつれ、葉のサイズは小さくなり展開速度も遅くなっていきます。これではイチゴの稼ぎ時のクリスマスシーズンや厳寒期に収量を確保し売りあげを伸ばすことは望めません。
そこで電照の出番です。電照を行い夜の時間を短く長日条件にすることでイチゴは春を感じ、十分に葉を展開させ葉面積を増やすようになります。その結果、
日中にしっかり光合成を行うことができ冬でも収量を確保できるというわけです。
ちなみにデメリットとしては、 電照設備の導入に費用がかかることが挙げられます。メリットがデメリットを補って余りありますが、白熱電球の代替品として期待されるLED電球は農業用のものは1個で数千円程とまだまだ高額です。
寒い冬でも沢山のイチゴを収穫するには日中にしっかり光合成をしてもらうことが重要です。そのためには日没後の電照で夜の時間を短くして葉の生長を維持することが欠かせません。クリスマスシーズンやお正月に向け高値のイチゴをどんどん売りましょう!
▼参考サイト
〇セイコーエコロジア,㈱セイコーステラ
https://ecologia.100nen-kankyo.jp/
〇11月 イチゴの電照栽培について,かがわアグリネット,香川県
https://www.pref.kagawa.lg.jp/agrinet/dougubako/11/yasai/ichigo_11.htm
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。