コラム
公開日:2023.05.23
メロン栽培で多いトラブルとして、収穫前に突然葉が枯れてしまったり、果実が割れてしまうことがあります。また、なんとか収穫できたけど糖度が低かったという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ハウスを利用したメロン栽培で失敗しないためのポイントや栽培しやすいおすすめ品種をご紹介します。
メロンはウリ科キュウリ属の一年草で、栽培日数が90~100日程度と他の果菜類と比べると生育速度が速い植物です。他のウリ科の野菜と同様に高温性の野菜に分類され、発芽適温は28~30℃、生育適温は25~28℃とされています。
果菜類の中でも根の酸素要求度が高いため、通気性と排水性のよい土壌が適しています。メロンは浅根性で乾燥や加湿、地温の変化など環境の変化に敏感なため、日当たりがよく低湿度の環境を選んで育てるようにしましょう。
メロンのハウス栽培では、生育ステージによって水やりの量やタイミングに注意が必要です。育苗から収穫までの期間に行う水やりのポイントを紹介するので参考にしてみてください。
土が過乾燥や加湿状態にならないように天候を考慮して行います。午前中の気温が上がり始めたころに行い、極端に冷たい水は避けるようにしましょう。本葉が出てからは葉が萎れない程度に水やりをし、根を張らせます。定植間近になると水の吸収量が多くなるので乾燥しないように注意してください。
定植後は活着を促進するためにしっかりと水やりをします。
根の伸長を促進させるため水やりは控えめに行います。
結果させる11~13節が1cm程度の頃に、伸長を促進させるための少量の水やりを行います。
結果を安定させるために水やりを控えます。
メロンの肥大を促進させるために水やりを行います。このタイミングで水分を多くあげすぎるとネット発生期に影響が出るため注意して行いましょう。
土壌水分が多すぎるとネットが太くなるので、葉が萎れない程度の水やりを日中に行います。
ネットを多く発生させるため、多めに水やりをします。また、葉面蒸散を抑制して株の水分圧を高めるために午前中は換気を行わず多湿状態にしましょう。
果実の糖度を上げるために水やりを控えめにします。葉が萎れないように少量の水をあげるようにしましょう。
網目模様が特長のネット系のメロンは、生育の途中で表皮の成長が止まり、表面が硬くなります。一方中身は成長を続けるため、表皮にひび割れが起こります。その割れ目を塞ごうとして自然にできるカサブタがメロンのネットです。
メロン栽培では、園芸用のネットなどを設置して上に伸ばしていく「立体栽培」と地面を這わせる「地這い栽培」の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットを知り、育てる品種などによって使い分けるようにしましょう。
・ネットをきれいに発生させることができる
・食味がよくなる
・上に伸ばしていくので株数を多く作ることができる
・整枝作業がやりやすい
・果実付近の温度が低くなるため、地這いと比べて生育が1週間ほど遅くなる
・地這いと比べて玉肥大が劣る
▲立体栽培の様子
・地温を利用できるため立体栽培と比べて生育が早い
・受光率が高くなるため玉肥大しやすい
・立体栽培と比べて果実の成熟までが早い
・園芸ネットの設置が不要
・立体栽培と比べて見た目や食味は劣る
・作業性が悪い
・高温多湿になりやすい
・立体栽培よりも栽培面積が必要になる
▲地這い栽培の様子
ここからは、メロン栽培初心者の方でも失敗しにくいおすすめの品種を3つご紹介します。
ムーンライトは、放任栽培を前提に育種されたネットメロンの品種です。定植後の整枝作業を行わなくても高糖度のメロンを収穫できます。糖度は16度~20度になることもあり、果肉は白色でとろけるような食感です。
整枝作業は不要ですが、最初に親ヅルの摘芯だけ行うと子ヅルが発生しやすくなります。より糖度を高めたい方はしっかりと整枝作業を行うようにしましょう。
収穫時期になると果皮が黄色く色づくので収穫適期を逃すことがありません。家庭菜園にもおすすめの品種です。
マリアージュは地這い栽培でもアールスメロンのような美しいネットが発生する品種です。果皮は薄い緑色、果肉は濃いサーモンピンクで高級感を感じることができます。
初期草勢はややおとなしめですが、中期から収穫までは草勢を維持しやすいという特徴もあるので、元肥は控えめにするといいでしょう。また、赤肉系の品種の中では早生にあたるため、収穫時期を逃さないように注意が必要です。
フェーリアは、整枝作業や摘果作業の省力化を目的に作られたメロンの品種です。他の品種と比べて側枝の伸長が短く抑えられ、さらに余分な果実の発生を少なくできる特性を持っています。半促成栽培に適している品種で、東北から九州までの広い範囲で栽培可能です。着果させる枝までは整枝作業を行い、それより上の側枝は放任でかまいません。
種子は一般販売されておらず、農研機構の野菜茶業研究所と「原種苗提供契約」を締結することで入手できます。
今回は、果菜類の中でも難しいとされているメロン栽培で失敗しないためのポイントを紹介しました。失敗やトラブルが多いメロン栽培ですが、適した環境を用意し生育に合わせた管理を行うことで成功しやすくなります。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
▼参考文献
〇JAなんと「メロン(ハウス半促成・普通・抑制)」
https://www.ja-nanto.or.jp/farming/document/family-farm/melon.pdf
〇家庭菜園 趣味のメロン栽培「メロン栽培の基本」
http://1995hide.blog29.fc2.com/blog-entry-574.html
〇家庭de菜園「ムーンライト(超高糖度放任栽培メロン)」
https://kateide-saien.com/?pid=128790110
〇e-taneya「マリアージュ[メロン]」
https://www.e-taneya.com/item/007570
〇農研機構「省力栽培が可能な メロン「フェーリア」」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/vt_feria_booklet_20150401.pdf
〇株式会社秀農業経営コンサルタント「メロンの栽培」
https://www.hidefmc.com/melon/”
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!