コラム

ナノバブル発生装置とは?農作物への効果や使い方をご紹介

公開日:2024.10.22

最近、展示会やWEB広告、テレビcmなどでナノバブルが含有した水をつくる装置やサービスを目にすることが増えてきました。ナノバブルの他にも、マイクロバブルやファインバブルといった名前も聞きますが、これらは一体何が違うのでしょうか?この記事では、まずナノバブルについて解説したのち、ナノバブル水を作る方法の原理や発生装置の具体例、農業分野での応用例をご紹介します。

1.「ナノバブル」とは?

「ナノ」という単位は、10-^9メートル、すなわち10億分の1メートルを表すSI単位系での接頭語です。「ナノバブル」とは、直径がナノ単位、つまり直径約100ナノメートル以下の泡を指します。

ナノバブルの大きさを具体的な物質と比較すると、ナノという単位がいかに小さなものかがうかがえます。
・髪の毛:直径50マイクロメートル(50,000ナノメートル)
・ヒトの一般的な細胞:10マイクロメートル(10,000ナノメートル)
・大腸菌:2マイクロメートル(2,000ナノメートル)
・コロナウイルス:0.1マイクロメートル(100ナノメートル)
・DNA二重らせん:直径2ナノメートル

マイクロバブルやファインバブルとの違いは?

一般にナノバブルと言われる泡の直径は、1~100ナノメートルですので、大きくてもウイルス程度の大きさです。これに対して、マイクロバブルの直径は、1,000ナノメートル(=1マイクロメートル=1ミクロン)~100マイクロメートル(0.1ミリメートル)程度ですので、ナノバブルよりも数十倍大きいものの、大腸菌や細胞のように顕微鏡でやっと見える程度の大きさです。
実際に、ナノバブルが含有された水は透明なのに対し、マイクロバブルが含有された水は白く濁っていることが多い等の違いがあります。




※マイクロバブルより大きい「ミリバブル」以上の泡は、水中に入れてもすぐに水面に上昇して無くなってしまうなどの大きな欠点があります。しかし、ナノバブルやマイクロバブルはこうした問題が起きないことから、ナノバブルやマイクロバブルを総称して、「ファインバブル」や「マイクロナノバブル」と呼んでいるのです。
よってこの記事では、便宜的にナノバブルだけでなくマイクロバブルを含んだ水も総称して「ナノバブル水」と呼ぶこととします。

2.ナノバブル水をつくる原理を解説!

微細孔方式

超微細孔方式は、①目標とする気体を一定の圧力でノズルに送り、②ノズルに空いているナノサイズの穴から気泡となったナノバブルを発生させる方式です。

長所:装置がシンプルでコストがかからない
短所:様々な直径を持つナノバブルが混在しやすい

旋回流方式

旋回流方式は、①ポンプで水を高速かつ高圧で入れて、②内部に高速の旋回流を発生させることで、③目標気体を粉砕することでナノバブルが発生する方式です。

長所:シンプルで直径が小さいナノバブルがそろいやすい
短所:泡の発生量が少なめ

加圧溶解方式

加圧溶解方式は、①水と目標気体の混合物をポンプで加圧することで過飽和状態にした後、②過飽和液を常圧に戻すことでマイクロバブルを発生させる方式です。

長所:マイクロバブルの発生量が多い
短所:ナノバブルの直径が大きくなりやすい

以上の方式で得たナノバブル水に「超音波を放射してマイクロバブルの発生量をさらに増やす」という新しい技術もあります。

※導入時にはコストや用途に応じて適切なものを選びましょう。




3.ナノバブル水の発生装置【おすすめ3選】

ここからは農業分野でおすすめの装置をご紹介します。

「ロッキィ」シリーズ

「超微細孔方式」でナノバブル水をつくる装置の代表例が「ロッキィ」シリーズです。ホースや配管にロッキィを装着するだけで、溶存酸素濃度が2倍以上になるという効果があります。
価格は数万円程度なので、他の装置と比べると安価なこともメリットです。ただし、方式がシンプルなため様々な大きさのナノバブルが混ざります。

根域空気供給機「ロッキィ」/環緑(株)






「根活」&ナノバブル水製造装置

△画像提供:株式会社セイコーステラ



「旋回流方式」でナノバブル水をつくる装置の代表例が「『根活』&ナノバブル水製造装置」です。ナノバブルがマイナスに帯電しているためカルシウムやカリウムなどの陽イオンを吸着しやすい性質を利用して、メーカーが勧める液肥と組み合わせることが推奨されています。
価格は50Lタイプで89万円、300Lタイプで206万円程度です。




「オーラジェット」農事用

△画像提供:株式会社オーラテック



「加圧溶解方式」に近いマイクロバブル発生量を目標としている「オーラジェット」は、井戸とポンプの間に「オーラジェット」を装着するだけで、溶存酸素濃度を10倍にすることができます。「加圧溶解方式」に必須の処理タンクなどが不要です。
価格は20万円程度で、通常の「加圧溶解方式」の10分の1程度と安価なのが特徴です。

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4.ナノバブル水の農業分野での効果と利用例

農業分野では根張りの向上や品質の向上を目的にナノバブル発生装置の導入が増えています。

水耕栽培でサンチュを栽培した結果、ナノバブル水(文献ではマイクロバブル水)処理は、無処理に比べて葉の大きさが約1.5倍になったと報告されており、溶存酸素濃度の差が影響したと考察しています。

※文献:マイクロバブルによる野菜の水耕栽培





土耕栽培でキュウリやトウモロコシをナノバブル水(オーラジェット)と普通の水で栽培した結果、特に側根の発生が増えることで根量が多くなるという結果が得られました。

※文献:日本混相流学会 混相流シンポジウム 2016 講演論文集,農作物土壌栽培へのマイクロバブル水の適用





キクの切り花を用いて実験したところ、花持ちが延長するという結果が得られました。この理由は不明な部分があるものの、今のところナノバブル処理により蒸散速度が低下したためと考えられています。

※文献:滋賀県立大学,発表番号:2H02-14,切り花の鮮度保持におけるナノバブルの作用機構






以上、ナノバブル水について、定義、製造方法の原理、農業分野で使用されている製造装置の例、農業分野での利用例について紹介しました。マイクロバブル水の製造方法は、今から20年ほど前に経済産業研究所が特許出願したことがスタートであり、まだまだ新しい技術です。 それだけに、今後の技術開発がまだまだ期待できる分野と思われ、ゆくゆくは施設園芸分野の生産性向上に貢献すると考えます。




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▼参考文献
〇国立研究開発法人産業技術総合研究所,軽量標準総合センター
https://unit.aist.go.jp/nmij/library/SI_prefixes/
〇九州環境エネルギー産業推進機構,ファインバブル活用事例集
https://k-rip.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2018/03/finebubble_ver4.pdf
〇株式会社ナック,様々な発生方式
http://www.foamest.shop/hasseihousiki.html
〇新技術説明会,従来に無い高濃度マイクロ・ナノバブルの製造とその応用
https://shingi.jst.go.jp/pdf/2019/2019_fukuoka-u_8.pdf
〇株式会社環緑,ロッキィ
https://canrock.jp/item/rocky/
〇セイコーエコロジア, 根活&ナノバブル水製造装置
https://ecologia.100nen-kankyo.jp/agri/konkatsu.html
〇株式会社オーラテック,オーラジェット
https://aura-tec.com/products/type1-agr/
▼参考文献
〇マイクロバブルによる野菜の水耕栽培
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00549/2010/62-02-0044.pdf
〇日本混相流学会 混相流シンポジウム 2016 講演論文集,農作物土壌栽培へのマイクロバブル水の適用
https://aura-tec.com/pdf/type1-agr_01.pdf
〇滋賀県立大学,発表番号:2H02-14,切り花の鮮度保持におけるナノバブルの作用機構
https://www.usp.ac.jp/user/filer_public/5c/04/5c0421b6-c057-4734-accd-3ca7b6cff464/2h0214_kenkyuugaiyou.pdf

ライタープロフィール

【石坂晃】
1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。










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