コラム
公開日:2021.09.17
ハウス栽培において、冬場の温度管理に欠かせないのが暖房機です。暖房機は長年使用していると、暖房効率の低下や故障などのトラブルが発生する可能性が高くなります。それを防ぐためには、日頃のメンテナンス作業が重要です。暖房機には蓄熱式やガス式などの種類がありますが、今回は代表的な重油式暖房機を例にメンテナンス方法を解説します。
冬のハウス栽培で使用する暖房機が故障すると、寒さによって作物に重大な被害が及んでしまいます。暖房シーズンに入る前に、余裕を持って清掃や点検などメンテナンスを行いましょう。
安全のために、元電源を切って給油バルブを閉じてから点検を行いましょう。バーナは暖房機の要とも言える部品です。さまざまな部品から構成されていて、定期的に整備や部品の交換が必要となります。バーナ周りの清掃・点検を怠ると、不着火など重大な故障になる可能性があります。
燃料噴射ノズルは、使用するうちに摩耗していきます。ノズルが摩耗すると、燃油を噴霧するための溝が大きくなり、燃油量が増えてオーバーロードの原因となります。故障を予防するためにも、シーズンごとにノズルを交換するのがおすすめです。ディフューザーは、汚れていたらワイヤーブラシなどで汚れを落とすか、灯油または洗油などで洗います。
燃料の中には、わずかですが不純物があります。オイルタンクや配管の中に溜まった汚れは、バーナ周りの配管にも流れてきて、ノズルを詰まらせます。これを防ぐための機能を持っているのがオイルストレーナやギアポンプストレーナという部品です。ストレーナが詰まると、燃料が流れなくなり不着火の原因となります。ストレーナは定期的に清掃しましょう。
火炎検出器は、バーナの着火や消火を検出するための部品です。ここがススで汚れていると、炎が明るく見えません。また部品は3年~5年で消耗して使用できなくなるため交換が必要です。火炎検出器が燃焼時に炎を検出できないと、自動運転が機能せず不着火の原因となるため、定期的な清掃や部品交換がおすすめです。
清掃と点検が終了したら、試運転を行います。試運転の手順は次の通りです。
①電源を入れて給油コックを開き、運転スイッチをONにします。
②油配管内のエア抜きを行います。
③作業した場所から油漏れなどがないか確認します。
④新しい燃料で5分ほど運転します。
運転開始後は、煙突から出る排気ガスの色を確認します。着火時に白煙が出たり、燃焼時に黒煙が出る場合には、エアシャッターのネジを緩めて空気量の調整が必要です。
春になり暖房機の使用が終了したら、カバーをかける前にもメンテナンス作業を実施しましょう。
A重油を燃料としている場合、燃料に含まれる硫黄や灰分などがカスとして缶体の中に溜まります。そのままにしておくと、煙管が詰まってしまい黒煙が出たり、不着火の原因となります。このカスは、長期間放置しておくと缶体を腐食させるため、暖房シーズン終了後には清掃を行いましょう。
オイルタンク内の燃料が残っている場合、流失事故を防ぐためにも必ずバルブを閉めておきましょう。
制御盤内は、梅雨時期の湿気などで水滴がつく可能性があります。漏電による事故防止や節電のために元電源は切っておきましょう。
夏場、高温のハウスの中に放置しておくと故障の原因となります。制御盤やコード類は取り外して涼しい場所で保管しましょう。
今回は、暖房機のメンテナンスについて紹介しました。暖房機は使用前や使用後に清掃や点検などのメンテナンスを行うことで、故障やトラブルを防いで製品を長く使うことができます。また定期的に部品を交換するほうが、故障してからの修理より保守費用を抑えることができます。
ぜひ冬に向けた暖房機のメンテナンスを実施してください。
※故障により修理が必要な際は、購入をした販売店や製造メーカーへ問い合わせするようにしましょう。
施設園芸用温風暖房機「ハウスカオンキ&小型温風機」/ネポン(株)
▼参考文献
〇施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル(改定2版),農林水産省生産局
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/ondanka/pdf/manyual-kaitei2.pdf
○ハウスカオンキのメンテナンスについて,ネポン株式会社
https://www.toyotane.co.jp/ufile/library/2691_file.pdf
ライタープロフィール
【都良TORA(田口 忠臣)】
北海道在住のフリーライター。
6次産業化やグリーンツーリズム、農産加工品開発のコンサルティング・ブランディングを行う仕事をしていたことから、その知識を活かして食や観光・農業に関する記事を書いています。
保有資格:北海道観光マスター、食生活アドバイザー、日本酒ナビゲーターなど