コラム
公開日:2023.02.16
甘味料として知られるステビアは、南米原産のハーブです。葉に甘味成分を豊富に含み、砂糖に代わる天然由来の甘味料として、お菓子や飲料に使用されています。また、ステビアの葉茎を液肥として活用するステビア農法は、いちごやみかん、トマトなどの果物や野菜の品質向上が期待される農法です。この記事では、ステビアを使った栽培事例や使用方法をご紹介します。
ステビアは南米パラグアイを原産とするキク科の植物です。南米では古来より薬用ハーブとして使われてきました。154種以上の種類があるステビア属のうち、葉に豊富な甘味成分を持つのは「ステビア・レバウディアナ・ベルトニー」の1種類のみです。主に日本においてステビアの持つ甘味成分の研究が進み、甘味料として製品化されました。
ステビアには糖質がほとんど含まれていないため、糖尿病などの疾患を持つ方も摂取できます。また、砂糖と違い、虫歯の危険もありません。近年では茎に含まれる成分が着目され、農業のほか、畜産、水産、環境浄化など、さまざまな領域で研究、実用が進んでいます。
農業の分野では、ステビアの葉や茎を肥料として活用する方法が注目を集めています。ステビア肥料を土壌改良に使用した結果、作物の品質が向上する効果が報告されています。(ステビア農法)
いちごは、ステビア肥料を使った栽培によって成果を上げている代表的な農作物です。茨城県や千葉県では、多くのいちご生産者がステビアを利用しています。いちごは栽培期間が長く、生育環境の影響を受けやすいのが特徴です。群馬県の品種「やよいひめ」や、奈良県の品種「アスカルビー」など、ステビアを取り入れた栽培によって糖度が高く、生育のよい果実が実るなどの成果が出ています。
また、ステビアはメロンの栽培にも活用されています。
メロン栽培は、品種によって根に癌腫ができる根こぶ病が発生します。根こぶ病に感染すると、地上の作物は成長が弱まり、収量に影響を及ぼします。根こぶ病に対抗性を持つステビアは、発病を抑えるのに有効です。
ステビアを農業に活用するには、堆肥として土壌に入れる方法が一般的です。作物の生育には、有機微生物の活動が欠かせません。微生物は、土壌中に含まれる物質を分解し、植物が吸収しやすい栄養素を作ります。ミネラルや抗酸化を促す有効成分を含んだステビアの葉茎を発酵堆肥にして土壌に入れると、微生物の活動が活発になり、植物の生育に適した環境が整います。
ステビアは簡単に栽培できるため、収穫後に刈り取って発酵させる方法が手軽です。種まきのほか挿し木でも増やせるハーブで、草丈は50cmから1mまで生長し、夏に開花期を迎えます。株元の茎は樹皮のように固くなりますが、晩秋から初冬には茎葉が枯れるため、刈り取って堆肥として土壌へすき込みます。
ステビアを液肥として使用する、ステビア農法を取り入れるのも効果的です。ステビア農法とは、ステビアの茎や葉を煮沸、濃縮し、醗酵熟成した濃縮液を栽培に利用する手法です。ステビアを液肥として利用すれば、土壌散布だけでなく、葉面散布も可能になります。液肥はステビア資材として販売されています。
天然の甘味料として利用されるステビアは、肥料として葉や茎の有効活用が進んでいます。注目を集めているのは、ステビアに含まれるミネラルや抗酸化物質などの成分です。発酵堆肥を利用すると、圃場を良好な状態に保ち、作物の成長を助ける効果が報告されています。みなさんも自然由来のステビアを肥料として取り入れて、収穫物の味の変化を実感してみませんか?
▼参考文献
〇農林水産省,茨城県農業総合センター「花き栽培基準」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/iba02-21.pdf
〇タキイ種苗「ガルビネア(苗)品種カタログ」
https://www.takii.co.jp/flower/catalog/wgb/
〇サカタのタネ「ガーベラ フェスティバルシリーズ」
https://www.sakataseed.co.jp/product/search/code01ad.html
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!