コラム

チューリップをハウスで栽培する方法とは?育て方と水やりのポイント

公開日:2023.03.16

チューリップは3月~5月に旬を迎える花ですが、ハウスを利用した促成栽培では12月の寒い時期にも出荷することができます。今回は、チューリップの栽培にチャレンジしたい方向けに、おすすめの品種や育て方のポイントをまとめました。ハウスの有効活用としてチューリップの栽培を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

1.チューリップの基礎知識



チューリップといえばオランダのイメージが強いですが、実はトルコから中央アジアにかけた地域が原産であると考えられています。主に地中海沿岸を自生地としており、冬は湿潤で夏は乾燥した涼しい気候を好みます。チューリップの切り花栽培は比較的栽培期間が短いため、ハウスの有効利用を図りたいという方にはおすすめの作物です。また、単位面積当たりの植え付け本数が多く、小規模のハウスで栽培を行うことも可能です。
一方で、毎年球根を購入するための種苗費がかさむ傾向にあるため、経営計画に合った適切な品種選定が重要になります。

2.【出荷月別】チューリップ栽培おすすめ品種6選

品種の選定では消費者に好まれる花形や色はもちろん、開花時期に合った種類を選ぶことも重要です。ここでは、11~12月、12~1月、2~4月それぞれの出荷時期に適合した品種をご紹介します。品種選定の参考にしてみてください。




●11~12月出荷の場合


△クリスマスドリーム





クリスマスドリーム

クリスマスドリームは、定番カラーともいえるピンク色のチューリップです。一重早咲き系に分類され、露地栽培では4~5月が開花期とされています。ハウスを利用した促成栽培では、11~12月に出荷することが可能です。






アプリコットビューティー

アプリコットビューティーは淡いオレンジ色をしたチューリップで、咲き進むとピンク色に変化していくのが特徴です。クリスマスドリームと同じ一重早咲き系に分類され、露地栽培では3月下旬~4月上旬が開花期とされています。シトラスのような甘い香りが特徴で、チューリップの中では比較的強く香る人気の品種です。





●12~1月出荷の場合


△モンテカルロ





モンテカルロ

モンテカルロは、黄色の八重咲きタイプのチューリップです。八重早咲き系に分類されていて、露地栽培での開花期は4月上旬~中旬とされています。草丈は12~25cmと一般的なチューリップと比較すると低めで、切り花以外に鉢植えにもおすすめの品種です。






アンジェリケ

アンジェリケは、人気のある淡いピンク色をした八重咲きのチューリップです。八重晩咲き系に分類されていて、露地栽培での開花期は4月中旬~5月上旬とされていますが、促成栽培では12~1月に開花させることができます。





●2~4月出荷の場合


△バレリーナ





バレリーナ

バレリーナは、鮮やかなオレンジ色で愛らしい見た目が特徴のユリ咲き系のチューリップです。露地栽培での開花期は4月上旬~中旬とされています。魅力的な花形と甘い香りで人気のある品種のひとつです。






フレミングパーロット

フレミングパーロットは黄色と赤色の縞模様が特徴的なチューリップです。パーロット系に分類されていて、オウムの羽のようなフリル状の花弁がひと際目を惹品種となっています。露地栽培での開花期は4月下旬~5月上旬。草丈は長いものだと60cm近くになることもあります。



3.チューリップの育て方のポイント



チューリップは土耕・水耕栽培どちらでも育てることができます。ここからは、チューリップの促成栽培をはじめる際に知っておきたい育て方のポイントを見ていきましょう。




球根の管理

入手した球根は、涼しくて風通しのいい場所で保管します。12月の出荷を検討していて球根の花芽分化が完了していない場合は、20℃の環境で保管し花芽の発達を促しましょう。
チューリップの促成栽培では、開花や発根促進のために定植前に球根を冷蔵する必要があります。



12月出荷の場合

【予冷】7月下旬頃に開始して、13~15℃の環境で3週間程度冷蔵
【本冷】予冷が完了したら、2~5℃の環境で7週間冷蔵
【もどし冷蔵】本冷完了後、7~10日間で15℃になるように徐々に温度を上げていきます。
※1~3月に出荷する場合は、8月下旬から予冷を開始します。方法は、12月出荷と同様です。




土づくり

チューリップは追肥せずに、全量元肥で育てていきます。定植の10日前にチッソ・リン・カリを1kg/1a、堆肥を200kg/1a施用しておきましょう。pHは5.5~6.0を目標に土壌酸度を調整してください。



定植時期

【12月出荷の場合】10月下旬頃
【1~2月出荷の場合】11月上旬頃
【3月出荷の場合】1月上旬頃

定植

定植前に球根の発根部の表皮をはがしておきましょう。12~1月出荷の場合はハウス内を寒冷紗で覆い、かん水をして発根適温の15℃になるよう地温を下げておきます。11月上旬を過ぎたら寒冷紗を外しても大丈夫です。植え付ける際は、発根部を傷めないように注意し、球根の上部を1/3程度出して向きを揃えて定植します。





温度管理

【12月出荷の場合】
昼間は23℃、夜間は15℃~18℃を目標に、11月中旬頃から加温をスタートさせます。加温開始直後から1週間ほどは加温時間を短めに設定し、その後は通常の加温を行います。

【1~2月出荷の場合】
昼間20℃、夜間15℃を目標に、12月上旬から加温を開始します。

【2~3月出荷の場合】
目標温度は1月出荷と同様で、12月下旬~1月上旬に加温を開始します。

水やり

保温開始後は3~4日に1回、加温開始後は2~3日に1回潅水を行います。花色が出始めたときは少し控えめにかん水するようにします。葉の光合成能力を最大限引き出すためにも、晴れた日の午前中にかん水を済ませておくようにしましょう。





採花

採花は原則として、開花の1~2日前に行うようにします。採花する際は球根ごと抜き取って構いません。採花したものは球根を縦に切り、球根内にある茎を付けて長さを調整します。



水耕栽培のポイント

チューリップ栽培では、オランダで開発された水耕栽培専用のプランター(水耕用トレイ)を利用して栽培することも可能です。水耕栽培は開花までの日数が短く、年間に4作行えるので高い収益を得ることも可能です。水耕用トレイに100球程度定植し、潅水システムを利用して水をかけ流しながら育てていきます。



病害虫

チューリップ栽培では、特にモザイク病に注意が必要です。モザイク病に感染すると、葉や花弁の色割れが発生するので、この症状が出ているチューリップはすべて抜き取って処分してください。
モザイク病はアブラムシがチューリップを吸汁した際に伝染するため、アブラムシを発生させないことも重要です。万が一、アブラムシが発生した場合は早急に防除を行うようにしましょう。



  • ▼関連記事




他にも、チューリップ栽培では褐色斑点病や灰色かび病にも注意する必要があります。この病気に感染すると葉、花、球根などに病斑が発生します。どちらの病気も雨が多いと発生しやすいという特徴があるので、予防の薬剤散布を行うのが効果的です。また、感染した花弁などが落下するとそこから病原菌が増殖して大型病斑ができる恐れもあるので、落ちたものはきれいに拾い集めるようにしましょう。



チューリップの促成栽培では、品種の選定と球根の適切な保管を行うことが最も重要な工程と言っても過言ではありません。今回紹介したポイントを参考にしていただき、チューリップ栽培に挑戦してみてはいかがでしょうか。





  • ▼関連記事




▼参考文献
〇農林水産省「ユリ科チューリップ属」
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/kankyo/sizai/attach/pdf/index-15.pdf
〇富山県「チューリップの基礎知識」
https://www.pref.toyama.jp/1613/sangyou/nourinsuisan/nougyou/kj00014132/kj00014132-010-01.html#:~:text=%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AE%E9%87%8E%E7%94%9F%E7%A8%AE%E3%81%AF,%E3%81%AB%E5%88%86%E5%B8%83%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
〇富山県花卉球根農業協同組合「チューリップ病害虫の予防と対策」
http://www.tba.or.jp/staffblog/?p=2103
〇タキイネット通販
https://shop.takii.co.jp/
〇サカタのタネ
https://sakata-netshop.com/shop/g/g52500020/
〇株式会社フルール
https://www.tonami-fleur.com/tulip02_008.html
〇nae-ya「チューリップ パーロット咲き:フレミングパーロット(黄・赤縞)【球根】」
https://nae-ya.com/item/4590/
〇地方独立行政法人北海道立総合研究機構 農業研究本部 道南農業試験場「最近の研究成果とこれからの道南農試」
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/research/dounan/publication/anniversary/90th/kinenshi.html




ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。









Facebook