コラム
公開日:2023.11.28
近年、農業現場でもIoTやクラウドの活用が進んでいます。国や自治体によるスマート農業の推進や、企業や篤農家の取組みによる収量アップや作業効率向上の事例が増え、その効果が実証されていることから、挑戦してみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。ハウス内環境を正しく知ることが環境制御の第一歩です。そこでこの記事では、日々農業現場を周る担当者たちに聞いた「施設栽培向けのおすすめモニタリングサービス」を4つご紹介します。
最初にご紹介するのは、中部地方の担当者がおすすめする「あぐりログ」です。IoTシステムの構築などを手がける株式会社IT工房Zが提供する、温室向け環境モニタリングサービスです。 とくに拠点のある愛知県内では多くの生産者の利用が見受けられます。ハウス内に専用のログBOXを吊り下げて電源をつなぐだけで設置が済み、すぐに計測がはじめられるのが特徴です。誰でも操作がしやすく、説明書を読み込む必要はありません。いつでもパソコンやスマートフォンを使用して環境値を確認できます。計測できる環境値は、温度・湿度・CO2濃度の3つ。さらに、オプションで日射・地温・土壌EC・土壌水分・排液量などのさまざまな環境センサーにも対応しています。
温度や湿度が設定した値よりも上回るとメールで知らせてくれるため、万が一作物に深刻な影響があるような変化が起こった場合にもすぐに対応できます。また、クラウドサービス上にはSNSのようにあぐりログユーザー同士でフォローして、お互いの環境データをシェアするといった機能も搭載されています。利用者の要望に応じて、無理のない料金プランで利用できるため、安心して導入できるクラウドサービスといえるでしょう。
次にご紹介するのは、関東エリアの担当者がおすすめするハウス向けのクラウド型モニタリングシステム「farmo」です。水田の水管理に利用する生産者が多いfarmoですが、ハウスでの利用(ハウスfarmo)も増えてきています。センサーの設置とアプリをダウンロードするだけで、ハウス内の温度・湿度・CO2濃度・照度・地中温・生長点温度・飽差・土壌EC・土壌水分のデータを確認できます。太陽光発電のため電源を確保する必要がなく、どんな場所にも設置できるのが特徴です。また、外部給電も可能で、太陽光が遮られてしまう場所の計測も行えます。
元々アプリを開発していた企業によって提供されているため、アプリの画面が見やすく、はじめて利用する方でもストレスなく利用できるでしょう。異常が起きた際には、プッシュ通知で知らせてくれるのもうれしいポイントです。栽培する作物によって8つのタイプから最適なものを選択でき、立体栽培や地ばい栽培など、さまざまな作物に対応しています。また、きのこ栽培や育苗ハウスにも利用可能です。月額料金は無料で、製品購入代金だけで利用できるため、利用頻度が少ない月が想定される生産者にもおすすめといえます。
次にご紹介するのは、九州や東海地方を中心に導入が進んでいるリバティーポートジャパン株式会社の環境モニタリング装置「はかる蔵(ぞう)」です。電源さえ確保できれば特別な工事は必要なく、親機・子機を設置するだけで気温・湿度・地温・日照・CO2濃度の測定が行えます。とくに、湿度の測定の正確性に優れ、精度の高い計測が行えるのが特徴。オプションを利用して土壌ECや土壌水分、外気温など、現場のニーズに応じた機能を追加することも可能です。 パソコンはもちろん、アプリをダウンロードすればスマートフォンからの観測にも対応。環境値の測定のほか、日誌機能も搭載されていて、潅水・薬散・施肥などの記録データを蓄積します。また、過去の作業記録や従業員のスケジュールの確認など、便利な機能が備わっているのも特徴のひとつです。日誌機能で蓄積されたデータは、GAP認証取得にも活用でき、認証取得を検討している方にもおすすめです。
観測地点を増やしたい場合には、子機を追加していくことで安価に増設できるため、多くのハウスを抱えている生産者にぴったりのサービスといえるでしょう。普及センターでも使用されているため、安心して使用できます。シンプル構造により購入しやすい価格設定になっています。
最後に。全担当者が口をそろえた「クラウドサービスと言えばプロファインダー」。こちらは統合環境制御のパイオニアである株式会社誠和が提供するクラウドサービスです。環境モニタリング装置「プロファインダー」で測定した環境値をいつでもどこでも確認できます。施設園芸界では知らない人がいないほど、定評のあるサービスです。 利用する際は「プロファインダー」とデータ自動送信器「プロファインダークラウド通信ボックス」をつなげるだけでOK。1分間隔で測定した温度・湿度・CO₂・日射量の4つのデータが自動でクラウド上に蓄積されます。ハウス内の環境測定以外に、生育調査が行えるのが特徴で、作物の成長度合いがグラフを見れば一目で確認できます。また、お友達機能を利用すれば、全国の生産者と取得したデータを共有するといった使い方も可能です。共有したデータは1つの画面にグラフで表示されるため、ほかの生産者との比較が簡単に行えるでしょう。
さらに、日本最高峰のトマト栽培施設「トマトパーク」のデータも見放題で、栽培に関するさまざまな情報を好きな時に見られるのも魅力的です。プロファインダー友の会に入会することで、栽培技術や収量の向上を目的としたセミナーなどに参加できるため、導入後のサポートも充実したサービスといえます。
環境のモニタリングによって、作物が健全に生育するために必要な情報を収集することができます。生育状態がよかったとき、悪かったときのデータを比較し分析することで、次の栽培に活かすことができるのです。また、パソコンやスマートフォンを利用して時間や場所を問わずにハウスの状況を確認できるのも大きなメリットです。作物の状況が心配で何度も見回りを行っていた方にとっては大きな作業改善になるでしょう。環境制御の第一歩として、モニタリング機器の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
▼参考サイト
〇株式会社IT工房Z「あぐりログ」
https://itkobo-z.jp/agrilog
〇株式会社farmo「ハウスfarmo」
https://farmo.info/product_house/
〇JA全農ウィークリー,リバティーポートジャパン株式会社「はかる蔵」
https://www.zennoh-weekly.jp/wp/article/18662
〇株式会社誠和「プロファインダークラウド」
https://www.seiwa-ltd.jp/product/2342/
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。