コラム
公開日:2025.10.22

※本記事は2018/9/25に更新した記事をリニューアルした記事です
ハウス栽培で特に厄介なのが、ナスやミニトマト、キュウリ、バラなどに発生するハダニです。高温・乾燥条件で爆発的に増殖し、収量や品質を著しく低下させる原因となります。ハウス内では侵入防止も難しく、早期発見と初期対応が重要です。
この記事では、殺ダニ剤に頼らずに行える水スプレーや牛乳・酢などを使った無農薬対策をご紹介します。
ハダニは、ナス、きゅうり、ミニトマト、バラなど種々の野菜や花きの葉裏に寄生して植物の汁を吸います。ハダニによる吸汁部位は白くかすれたようになり、見た目が損なわれるだけでなく収量も低下します。蜘蛛の巣かと思ってよく見るとハダニの吐いた糸で植物が覆われていたということはよくある話です。
ハダニは体長0.5mm前後と非常に小さいので栽培施設内への侵入を防ぐことも発見することも難しい厄介な害虫です。さらに高温・乾燥条件では爆発的に増えるので、日頃から作物の様子をよく観察しハダニの被害を見つけたら一刻も早く駆除することが重要になります。

ハダニの駆除には「殺ダニ剤」が有効ですが、オルトラン®などの殺虫剤を使うとハダニだけでなく、天敵となる昆虫まで減らしてしまうリスクがあります。そのため、まずは無農薬の方法で発生初期のうちに抑えるのがおすすめです。
農薬を使えば駆除は容易ですが、発生初期であれば無農薬での駆除も可能です。
無農薬でのハダニ対策の基本は水攻め。高温・乾燥に強いハダニですがその反面、水にはめっぽう弱いのでそこを突きましょう。
まずは、水で駆除する2つの方法をご紹介します。
発生予防にも効果的な方法です。
葉裏を重点的に霧吹きで水をかけます。植物から水がしたたり落ちる程しっかりと株全体にかけましょう。
霧吹きは水の出方がミストからジェットまで調整できるものが便利です。ミストで乾燥した植物全体を湿らせ、ハダニの密度が高い部分はジェットでピンポイント攻撃してハダニを洗い流しましょう。ジェットにする時には植物が傷まないように調節つまみは徐々に回してくださいね。

バラなど鉢植えの花きや果樹限定ですが株全体を水に20分程浸します。
初めて行う際にはドキドキするかもしれませんが思い切ってドボンと浸けましょう。水の中で葉を優しくなで洗いすることも効果的です。ハダニの密度がずいぶん減少しますよ。

水だけではハダニを殺す力は弱いので、ここからは水+αでより効果的にハダニを駆除する方法を紹介していきます。
晴れた日の早朝に2倍に薄めた牛乳をハダニにしっかりと噴霧します。牛乳が乾くことでハダニの気門を塞ぎ窒息させます。翌日、野菜に付着した牛乳は水でしっかり洗い流しましょう。
そのままにすると牛乳特有の臭いが付いたり、牛乳の腐敗やカビの繁殖を招いたりする原因になります。

筆者は経験が無いので効果の保障はできませんが、牛乳のような臭みや腐敗の心配が少ないことがメリットで、カフェインが有効成分と考えられています。
飲用より濃く淹れたコーヒーをスプレーすると高い駆除効果があることがインターネット上の検索で見受けられますが、日本植物防疫協会の調査によると飲用より薄い濃度では実用的な駆除効果は期待できないと報告されています。

食酢、重曹、クエン酸は人や植物等への安全性が明らかな「特定防除資材(特定農薬)」 として登録されており、農作物の病害対策として利用できます。ただし、ハダニに対しては効果が限定的で、殺菌力が強すぎると植物の葉を傷める場合もあります。

ハダニはナス、きゅうり、ミニトマト、バラなど多くの作物に被害を与える厄介な害虫です。
乾燥を嫌う性質を利用して、水スプレー・牛乳・コーヒー・酢・重曹・クエン酸などの無農薬スプレーでこまめに対策を行いましょう。
今回ご紹介した方法はどれもすぐにできる簡単なものです。発生初期なら十分に駆除が可能ですので、ハダニの被害を発見したら手遅れになる前に試してみて下さいね。1回だけでなく何日か繰り返すことで無農薬とは思えない程の駆除効果を得られることでしょう。
【参考文献】
〇ハダニ類、あいち病害虫情報、愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室、1996.
〇資料3-4 コーヒー(抽出液)の薬効・安全性に関する情報収集の結果について、農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会 第6回合同会合、社団法人日本植物防疫協会、2005.
〇特定農薬(特定防除資材)として指定された資材(天敵を除く。)の留意事項について、農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長、2014.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。