コラム

殺虫剤と農薬の違いとは?種類・使い分け・ハウスの害虫対策を解説

公開日:2026.04.22

殺虫剤と農薬は、農作物の病害虫を防除するために使われる薬剤です。では、この2つの薬剤は何が違うのでしょうか?本記事では、意外と混同されがちな殺虫剤と農薬の違いや、ハウス栽培における害虫対策での使い方を解説します。

1.農薬と殺虫剤の違いとは?

農薬は「病気・害虫・雑草」から農作物を守るために使われる、薬剤全般のことです。

農薬とされる薬剤としては、以下が挙げられます。

•殺虫剤
•殺菌剤
•除草剤
•植物成長調整剤

このうち殺虫剤は、害虫の駆除に特化した農薬の一種です。
ただし「ゴキジェット」のような家庭用殺虫剤は、農薬には含まれません。

2.殺虫剤の種類と特徴をわかりやすく解説

ここでは、代表的な4種類の殺虫剤について紹介します。

液剤

液剤タイプは、水で薄めてから噴霧器や動力散布機等を使って直接吹きかける殺虫剤です。
アブラムシ類やコナジラミ類・アザミウマ類等の葉につく害虫に効果的で、葉裏にいる害虫にも高い効果を発揮します。

即効性がある薬剤が多いため、既に害虫が発生しているハウスにも使用できます。噴霧器や散布機を使えば、手軽に広範囲へ散布できます。
ただし、散布にムラがあると効果が薄まるため、均一に散布するよう注意しましょう。

粒剤

粒剤タイプは、土や株元に直接撒いて使用する殺虫剤です。
野菜栽培でも、害虫発生前の予防目的で使用されることが多い剤型です。根から吸収し効果を発揮する「浸透移行性」が高いため、アブラムシ類やコナジラミ類・アザミウマ類等の吸汁害虫の予防・発生初期の防除に向いています。

撒くだけで使えることから、殺虫剤の中でも特に手軽に使えるタイプです。
ただし、即効性には欠けるため、液剤タイプと併用して使用すると良いでしょう。

水和剤

水和剤タイプは、粉状の薬剤を水に溶かして散布する殺虫剤です。
液剤タイプと似ていますが、水和剤の方が安価で売られていることが多く、広範囲の散布に向いています。

コナジラミ類やアブラムシ類・ハダニ類のような葉裏につく害虫にも効果があり、有効成分が均一に散布しやすいため、ハウス内防除にもおすすめです。
一方で、粉が沈殿するため、散布中も攪拌(かくはん)が必要です。散布機の目詰まりに注意しましょう。

乳剤

乳剤は、油にしか溶けない有効成分を、界面活性剤等を用いて水のように散布できるようにした殺虫剤です。
油分を含むため、葉への付着性が高く、比較的長持ちしやすいのが特徴になります。

アブラムシ類やコナジラミ類・ハダニ類・アザミウマ類など幅広い害虫に使用でき、チョウ目の害虫に使われることも多い薬剤です。
ただし、作物によっては薬害が出る他、臭いがきつい製品もあるため、特にハウス栽培では使用用途に問題ないかを確認するようにしましょう。

3.農薬・殺虫剤を使用するメリットと注意点

農薬・殺虫剤には大きく2つの使用メリットがあります。

発生初期に防除しやすい

害虫は繁殖を始めてしまうと瞬く間に増殖するため、できる限り早めに対策することが重要です。発生初期の個体数が少ない段階で農薬・殺虫剤を使用すれば、効率的に増殖を抑え、被害を最小限に抑えることができます。
早いと数日で大繁殖する害虫もいるため、事前に粒剤を撒き、適宜液剤等の殺虫剤を使用するなど対策が後手に回らないように気をつけましょう。

害虫被害を抑え、収量・品質を維持できる

農業害虫は、放置すると繁殖を繰り返し、吸汁や食害、ウイルスの媒介などにより農作物に以下のような被害を及ぼします。

• 吸汁による生育不良
• 食害による葉・果実の損傷
• 見た目の品質低下
• ウイルス病の媒介
• すす病の発生
• 大量発生による急激な被害拡大

農薬・殺虫剤を使用することで害虫の発生を抑え、被害の拡大を防ぐことが可能です。

これらの被害を防ぐことで、収量や品質の低下を抑え、安定した生産につながります。現状では、農薬・殺虫剤を適切に使用することが、商品として販売できる品質を維持するうえで重要な対策の一つといえるでしょう。

注意点

ここからは、使用時の注意点を解説します。

使用方法を守る

農薬・殺虫剤の注意点として、使用方法を守ることが重要です。具体的には、以下のような点を遵守しないといけません。

希釈倍率 濃すぎると薬害、薄すぎると効果不足になる
使用回数 残留基準を超え出荷停止・廃棄・法令違反のリスクがある
収穫前日数 出荷できなくなる可能性がある
適用作物以外に使用 法令違反になる

中には法令違反となるケースもあるため、使用方法は厳守する必要があります。
農薬・殺虫剤を使用する場合は必ず説明書を読み、適切な方法・用量で使用するようにしましょう。

薬剤耐性への対策

農薬や殺虫剤を使っても強い個体が生き残るケースがあり、生き残った害虫同士で繁殖することで薬剤耐性を持つ個体が発生します。特にハウス栽培では、同じ環境で連続して栽培するため害虫の薬剤耐性が発生しやすい傾向にあります。
同じ農薬・殺虫剤を使い続けず、定期的に作用機構の異なる薬剤に変更するなど対策が必要です。

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天敵への影響に注意

ハウス栽培では害虫の天敵や有用昆虫とされるテントウムシやクサカゲロウ、寄生バチや受粉に必要な昆虫がいて害虫駆除や受粉に貢献をしています。
しかし、農薬や殺虫剤を使ってしまうと、そういった益虫も一緒に駆除してしまうことになるのです。天敵や有用昆虫を導入している場合、影響がない薬剤か必ず事前に確認しましょう。

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安全対策を行う

ハウス内での散布は薬剤を吸い込みやすいため、保護具(防塵マスク、保護メガネ、手袋、長袖・長ズボン、長靴)を着用し、散布します。
作業後の手洗いや洗顔も徹底してください。

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4.農薬・殺虫剤の作用機構

農薬・殺虫剤は害虫や菌の「神経・呼吸・成長」の働きを妨げることにより駆除が可能で、これを「作用機構」と言います。
大まかには以下の4つのタイプに分けることが可能です。

神経系に作用 神経伝達を乱し、けいれんや麻痺を引き起こす
呼吸・エネルギー阻害 細胞のエネルギー生産を止めて弱らせる
成長阻害(IGR) 脱皮や変態を妨げて成虫になれなくする
摂食阻害・忌避 食べるのをやめさせる・近づかせない

最近では、害虫が音や振動を感知する器官である「弦音器官」の機能を阻害する殺虫剤が登場しています。
既存薬剤に抵抗性を持つアブラムシ類やコナジラミ類・ヨコバイなどにも効果があり、茎葉散布・灌注処理・株元散布など、さまざまな使用方法に対応できる点が特徴です。
これらはIRACグループ36に分類される新規作用機構の殺虫剤であり、薬剤抵抗性対策の新たな選択肢として今後の活用が期待されています。

💡豆知識

殺虫剤は有効成分の違いによって「系統」で分類されることもあり、代表的なものにリン系やネオニコチノイド系などがあります。有機栽培で使用できる農薬(有機JAS適合資材)もあるため、用途や栽培方法に応じて選択することが重要です。

農薬は農作物を病害虫や雑草から防除する農業用薬剤の総称で、殺虫剤はその中でも害虫駆除に特化した薬剤です。ただし薬剤によって配合された有効成分が異なるため、状況に合ったものを選ぶ必要があります。

使用する際は、希釈倍率や使用回数、収穫前日数などのルールを守り、状況に応じて適切に使い分けましょう。

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ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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