コラム
公開日:2019.02.07
ネキリムシ(根切虫)は植物の茎を食害する”カブラヤガ”や”タマナヤガ”などヤガ(夜蛾)の幼虫の総称です。写真を見てもらうと分かりますが、見た目はザ・イモムシです。
昨日まで元気だった苗が、翌朝になって地際から倒れていたらネキリムシを疑いましょう。
幼虫は土の中で越冬し、5月から10月にかけて何度も発生します。卵は、夜に成虫が飛来し1つずつ葉に産み付けていきます。孵化したばかりの頃は葉上で葉を食べていますが、大きくなると日中は土の中で過ごし、夜になると地表に出てきて茎を食害するようになります。
苗に致命的な害を与えられる前にネキリムシを見つけ駆除したいところですが、日中は土の中にいるため、見つけにくく駆除しにくい厄介な害虫です。
ここからはネキリムシの具体的な防除方法について紹介していきます。
まずは予防が第一です。”ギシギシ”のような雑草が多いとネキリムシがよく発生するので除草に努めましょう。
また、筒状のもの(ペットボトルの上下を切ったものなど)を地面に数cm差し込んで苗を囲うことで、被害が減少します。
被害株を見つけたら、周りの土の中に幼虫が隠れているので土を掘って補殺します。
地表から数cm程の所にいるので指などで浅く掘ると簡単に見つけられます。
スコップ等で深く掘ってしまうと土と混ざり見つけ難くなります。幼虫1匹でも次々と苗を切り倒されると被害は甚大なので、補殺は苦手という人もすぐに退治するようにしましょう。
無農薬での防除が理想的ですが、毎年被害が多発する圃場や被害が広範に及ぶ場合には農薬の使用が効果的です。「ダイアジノン®粒剤5」や「デナポン5%ベイト」、「オルトラン®粒剤」など対象作物が登録されている薬剤を使いましょう。
●「ダイアジノン®粒剤5」「オルトラン®粒剤」:
幼虫が、土壌に散布した薬剤に触ると殺虫効果を発揮
●「デナポン5%ベイト」:
強い誘引力で引き付け、虫に好んで食べさせることで殺虫する毒エサタイプの薬剤
「ダイアジノン®粒剤5」はネキリムシ類で40種類以上の作物群に登録があるので、多種類の作物を栽培している人におススメです。
天敵製剤としては「バイオトピア®」という天敵線虫を利用した微生物殺虫剤が市販されています。
攻撃性・運動能力が高い線虫が自分で動き回ってネキリムシに寄生します。寄生するとネキリムシの体内で養分を吸収しながら細菌を放出しネキリムシを殺します。
野菜類・豆類・いも類と多くの作物に使用でき、水に混ぜて散布できるので便利な天敵製剤です。
「苗半作」。“作物の出来の半分以上を決める”と言われるほど植物の苗作りはとても大切です。せっかくの良苗が、ネキリムシによって次から次へとかじり倒されては目も当てられません。万全の対策を行って被害を最小限に押さえましょう。
●参考文献
・植物の病気と害虫 予防、退治がひと目でわかる本、監修 高橋健一、主婦の友社編、株式会社主婦の友社、2015.
・バイオトピア、株式会社エス・ディー・エス バイオテック<http://www.sdsbio.co.jp/products/bioi/22785.html>
・バイオトピアによる線虫の殺虫方法<http://www.biocontrol.jp/tenteki_sentyu.html>
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。