コラム

農業用遮光ネットで温度調整!最適な遮光率と高温ハウスの栽培管理

公開日:2018.03.07

農業(施設園芸)を行う上でまず必要になるのがビニールハウスですが、実は外気の影響を受けやすいのです。とくに夏の強い日差しを受けると、ハウスの中は高温状態となり作物が枯れてしまいます。そこで、ビニールハウス内の温度調節に使う農業用の遮光資材が“遮光ネット”です。
遮光資材には他にも遮光カーテンや遮熱剤等ありますが、この記事では、「農業用の遮光ネットを使った高温対策の方法」と併せて実践したい高温時の栽培管理についてご紹介していきます。

1. 極端な環境変化が生育障害の原因

夏秋栽培の産地において露地栽培・施設栽培ともに夏季の高温による生育障害(草勢低下、生育・着果不良、枯死)が問題となっています。とくに雨よけハウス栽培で長期収穫をするアスパラガス、トマト、ナスなどは、“ハウス内の高温”が作物へ悪い影響を与えています。
実はこれらの影響は単純に高温のみでなく、梅雨の日照不足→異常高温という両極端な環境に置かれるストレスによるものが最大の原因なのです。

例えば、



雨よけ施設トマトで4~5月定植の場合

6月には徐々に出荷が始まり樹勢に負担がかかり始めます。この頃梅雨の日照不足が重ると、着果負担と日照不足により4段以降の花芽が着果不良、成長点座止。また天候が回復し、夏の高温に晒され吸水不足によるカルシウム欠乏で尻腐れ果(写真:左)、ホウ素欠乏で心腐れ果(写真:右)となってしまうのです。

▲尻腐れ果

▲心腐れ果




雨よけ施設アスパラガス栽培の場合

梅雨の日照不足から一転して高温高日射に移行すると、萎れ、穂先の開き、扁平が起こりやすくなります。その後、成長点が枯死→灰色カビ病の発生原因となり、その後の乾燥によりさらにハダニ、スリップス(アザミウマ)の発生してしまいます。

2. 高温対策には遮光ネットが有効!遮光率と選び方

前述のケースを含めて、梅雨明けの高温対策には「対処療法」として“農業用遮光ネットの展張”という方法が考えられます。
農業用遮光ネットを展張する際には、まず適切な遮光率の遮光ネットを選ぶことが重要です。
選び方は作物によって異なります。遮光カーテンの選び方と同様、作物ごとに必要な日射量が異なるためです。
例えば、光を多く必要とするトマトの場合、遮光ネットの開閉が可能な場合は遮光率50%程度。開閉ができない場合は遮光率30%未満を目安にします。アスパラガスのように光飽和点・補償点が低い作物の場合は、50%の遮光率。展張でやや徒長気味となりますが許容範囲にあることが多いようです。これは晴天・曇天の両方の影響回避を想定していますが、単純な遮光ネットでは晴天時に高温になる懸念があります。そのため「白系」の遮光ネットの中から「熱線遮断タイプ」でなく「熱線反射タイプ」を選ぶことがポイントです。



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農業用遮光ネットの張り方には外側に展張する「外張り」と内側に展張する「内張り」があります。難しい作業ではないのでご自身で展張することもできますよ。
張り方のコツとしてはパッカーやハトメといったネットを固定する部材を使うと便利です。ハウスのパイプの径によって大きさが異なりますので確認してから購入しましょう。



熱線遮断の場合は遮光ネット自体が高温となり、屋根が低い雨よけハウスの場合は遮光ネットからの輻射熱が作物に影響を及ぼし、ハウス内も高温にもなりがちです。
最近では遮光率の低い反射型の塗布剤も普及し始めていますが、廃プラ処理対応や夏季以外の生育を考慮すると、塗布労力、コストともに課題があるように思われます。

3. 遮光ネットと併せて実践したい高温対策【換気と潅水】

高温対策は単純に遮光率の高い遮光ネットを張ればいいというような単純なものでなく、総合的に実践する必要があります。そこで、農業用遮光ネットの展張と併せて、換気や潅水も行います




換気の方法

1)ビニールハウスのサイド、間口のフィルムを最大限開放し、可能な限りの放熱を確保します。
2)ハウスの長さは最長30m以内にとどめ間口最上部からの換気効率を確保します。簡易のフルオープンハウスの施工も有効です。
※一部分の天井換気、妻換気装置も検証しましたが降温効果は不十分でした。





潅水について

成長点の枯死、果実の脱水、焼け症状は、植物が高温対応に必要量の吸水が不足することによるカルシウム欠乏、細胞の壊死です。必要量の土壌水分を維持することで吸水・気孔を開き続け、蒸散を維持することでカルシウム・ホウ素などの養分吸収、葉温低下、気化熱によるハウス内気温低下など、副次的な効果が見られます。実際、土壌水分、気孔開が維持(葉温測定で確認)されているハウスに入ると意外とひんやりした環境に驚くことがあります。




この記事では農業用遮光ネットによるハウス内の温度調整方法をご紹介しました。
異常な高温が続く日本の夏には、作物にとっても人間にとってもストレスがなく、過ごしやすい環境作りが必要です。ぜひ遮光ネットの活用と併せて換気と潅水にも取り組んでみてください。




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ライタープロフィール

【深田】
現在、農業機器メーカーのアグリアドバイザーとして栽培指導やセミナーの講演を行っています。
以前は県の普及指導員や専門技術員を長くやっていました。「金をかければ何でもできる」が嫌いで、現場農家の立場と目線でメーカーとして何ができるのかを考えています。