コラム
公開日:2018.07.04
ハウス栽培は、激しい降雨や強風などの被害から守ってくれる、天候に左右されないというメリットがあります。
また外気温が氷点下に近づく冬場でもハウス内は若干温かく、更に室内を加温することによって作物を周年栽培できるといった点が魅力的です。
しかしその一方で、日差しが強くなり気温が暑くなる夏場には、空気のこもったハウスが日光に照らされることで更に暑くなり、締め切ったままのハウス内は40度を超えるサウナ状態になってしまいます。
そうなってしまわないように、日差しの強い時期には毎日ビニールハウスの両サイドを巻き上げたり、出入り口を開放して温度が上昇するのを防ぐ必要がありますが、無風の日や温室が連棟で並ぶ立地条件だと室温が下がりきらず、作物を守るためのハウス栽培が逆効果になってしまうことも。
高温の影響を特に受けるトマトやミニトマト、キュウリなどの野菜は、着花不良などの生理障害を引き起こし収量の減少に直結するので避けたいところです。
また、湿度が上がりやすいハウス内は病害虫も繁殖しやすく、使い方を間違えてしまうと作物にとって危険な環境になりかねません。
日光に照らされた空気がこもった高温のハウス内では、中で作業をする私たちの身にも危険が及びます。ついつい作業に夢中になってしまって熱中症なんてことも。ハウス内の気温を上手く下げて、適度に水分を摂りながら作業をしたいものです。
また、最近では熱中症対策として「冷風機」の導入も進んでいます。
主に食品工場や物流関係、倉庫関連事業で採用されており、熱中症対策として高く評価されています。
排熱が出ないので屋内設置も可能です。
今後農業分野でもハウス内の熱中症対策として人気が出てくるかもしれません。貸し出しを行っているメーカーもありますので、気になる方はぜひ試してみてください。
※写真提供:アメフレック様
ビニールハウスの高温対策はハウスサイドの巻き上げと出入り口の開放が基本ですが、併せて出来る、より効率的なハウス内の温度を下げるコツをご紹介しましょう。
噴霧したミストが気化することでハウス内の気温を下げることができ、ミストの粒が細かい方がハウス内の湿度が上昇せず冷却効率も良いとされています。
高圧ポンプをはじめとした設備投資が必要となりますが、高温対策と同時に散水まで行えて夏場の作業の効率化も図れます。
冷房+加湿+防除自動化システム「CoolPescon®」/(株)いけうち
シェード(遮光)をすることでビニールハウスの温度が上昇するのを防ぐことができます。遮光率は開閉できるかできないかで使い分け、栽培する作物に必要な光量を確保しましょう。
光量は光度計で計測できます。手元にない場合には、お近くのJAや各市町村の農政課がレンタルしてくれる場合もあるので相談してみましょう。
ファン(換気扇)を使うことで、通気性の悪いハウスでも空気を入れ替えて高温対策ができます。常に新鮮な外気が入ってくるので、高温対策だけではなく湿度を調整したり、植物が光合成するのに必要な二酸化炭素を取り入れることができます。
専用のファンのほか、業務用の扇風機でも代用できるのでハウス内の高温と多湿に悩んでいる人は試してみてはいかがでしょうか。
ライタープロフィール
【Sandersonia(サンダーソニア)】
花とスケートボードを愛するフリーライター。サンダーソニアとは好きな花の名前。
IoT技術による農業生産の革新と農協改革の今後に関心を寄せる。花屋、JA営農指導員を経て独立。生産から流通、花束やフラワーアレンジメントまで花の知識ならお任せを。