コラム
公開日:2019.09.19
イチゴは人気の果菜類で農家だけでなく家庭菜園でもプランター等に植えられている姿をよく目にします。しかし大きな甘い実を収穫し続けることは難しく、栽培の難易度は高めです。
美味しいイチゴを沢山収穫するには水やり、芽かき、葉かき、ランナー取り、摘花、農薬散布等々と日々のお世話がかかせません。中でもイチゴの生育にダイレクトに影響する施肥はとても重要な作業です。
そこで今回はいちご栽培初心者向けにおすすめの肥料や追肥の時期をお伝えしていきたいと思います。
💡土耕栽培と養液栽培では施肥方法が大きく異なるため、それぞれについてみていきます。
代表的な品種のとちおとめについて紹介します。細かな施肥の方法や量は品種や栽培地域、ほ場の養分条件によって異なりますが大枠は同じです。
基肥として10aあたり10kgN、20kgP2O5、20kgK2Oを施用し、基肥の一部として牛糞堆肥を10aあたり2000kgを施用します。苦土単カルを100kg施用します。
追肥には液肥を用います。生育状況に応じてその都度与え、合計で10aあたり10kgN、5kgK2O5を与えます。
追肥を行うのは以下のような場合です。
マルチを行う前に追肥を行います。肥料は液肥を用い、10aあたり1~2kgNを与えます。
2. 基肥を少な目にして追肥で生育を調整する場合頂果房が肥大を開始してから地温が確保できる12月上旬頃までの追肥が効果的です。
マルチ後は10aあたり0.5~1kgNを与えます。
3月以降に地温が上がり始めたら施肥は中止しましょう。
使う肥料は品種や地域ごとに標準的なのものがあるので試験場やJAなどに聞いてみましょう。例えば兵庫県では「基肥にはBMようりん、CDUS682、いちご配合、追肥にはトミー液肥ブラック」という具合です。
一口に養液栽培といっても様々ですが、ここでは入手が簡単かつ比較的低コストで取組やすいピートモスを使った高設栽培を例に紹介します。基肥などに固形肥料を用いる方法もありますが、今回は管理の簡単な液肥のみを用いる方法を紹介します。
施肥はEC測定による濃度管理が基本です。培地を用いない水耕栽培の場合もEC管理を行います。定植して活着後から開花期までは施肥は控えめに、EC 0.6mS/cm程度の低濃度の養液で管理します。開花期から収穫期には旺盛な生育を支えるためEC 0.9mS/cmにします。4月からは気温が上昇し給水量や蒸散量が増加して給液量が増えるのでEC 0.6mS/cmに下げます。
使う肥料は奈良県ではIB化成S1号など土耕栽培と同様に地域ごとに標準的なものがあります。また「栃木イチゴ処方」など培養液の組成も地域ごとに適したものがあるので各県の試験場などに聞いてみて下さいね。
沢山の肥料を必要とする果実の肥大開始から収穫期にかけては、追肥をしたり養液のEC濃度を上げたりしてしっかりと養分を補ってあげてくださいね。栽培の難しいと言われるいちごですが効果的に肥料を効かせて美味しい実を沢山収穫しましょう。
▼参考資料
●栃木県農作物施肥基準 (ア)果菜類 いちご、栃木県.
●宮城県施肥基準 第3節 いちご、宮城県
●栽培マニュアル、兵庫県立農林水産技術総合センター、2015年.
●イチゴ高設栽培(ピートベンチ栽培)栽培技術マニュアル、奈良県.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。