コラム

促成栽培と抑制栽培の違いとは?知っておきたい施設園芸の基礎知識

公開日:2019.10.31

農業できちんと稼ぐためには、商品の価値を高めるのが重要なポイントです。
この記事では、施設園芸の基本的な技術であり、作物の価格を高めることができる「促成栽培」と「抑制栽培」についてご紹介します。

1.「促成栽培」ってどういう意味?

促成栽培とは、主に加温や保温によって作物の生育を早めて、自然環境よりも早い時期に作物を収穫するための栽培方法です。よく行われるのは、冬の時期にハウスを加温して、キュウリやトマトなどの夏野菜をつくることです。 収穫時期の早さによって、早い順に「促成栽培」「半促成栽培」「早熟栽培」というように分類されます。



メリット

冬でも夏野菜を収穫することができます。通常は不可能な時期に出荷することで、商品としての価値を高めることができます。

デメリット

冬にビニールハウスを加温するため、重油などのボイラーを使用することがあります。燃料代が必要なため高コストになりがちです。

  • ▼関連記事

2.「抑制栽培」とは?促成栽培とは何が違う?

一方、抑制栽培の場合は、促成栽培とは反対のアプローチをとります。すなわち、生育を抑制することで、自然環境よりも遅い時期に作物を収穫します。
場所によって、寒冷地で夏に行う「冷涼抑制栽培」、温暖地で秋冬に行う「暖地抑制栽培」、生育後半のみ保温を行うハウス抑制栽培などがあります。



メリット

夏でも秋冬野菜をつくったり、冬に秋野菜をつくったりできます。また、加温のためのボイラーまでは必要なかったり、そもそも露地栽培なのでビニールハウスが必要なかったりと、促成栽培に比べればコストが低く済むのも利点です。

デメリット

促成栽培に比べると、果菜類は収穫期間が短くなりがちです。また、寒冷地といっても気候変動により夏は高温になったりするので、夏場の高温期をしのぐために工夫が必要な場合もあります。

  • ▼関連記事

3.トマトを例にした促成栽培と抑制栽培の比較

ここからは、促成栽培と抑制栽培の違いについて、トマトの栽培を例にまとめてみます。



栽培期間の違い

※地域にもよりますが、次のような栽培スケジュールとなります。


●促成栽培
・定植 9月下旬から10月、・保温、加温 晩秋から春、・収穫 11月から6月
●半促成栽培
・定植 11月から1月、・保温 11月から春、・収穫 2月から7月
●早熟栽培
・定植 3月から、・保温 春まで、・収穫 5月から
●通常
・種まき 3月から、・定植 5月から、・収穫 7月から10月
●抑制栽培
・種まき 6月から、・定植 7月中旬から9月中旬、・収穫 8月から11月



💡促成栽培から通常の栽培、抑制栽培へと、全ての作業期間が前から後ろにずれていっていることが分かります。




栽培期間の違い

※空気中の栽培環境を調整するには次のような機器が必要になります。



●促成栽培



ボイラー、送風機、制御装置など、加温と保温を行うための機器



●抑制栽培



自動窓、遮光シート、ミスト噴霧器、扇風機、制御装置など、高温の抑制と湿度調整のための機器



このように、同じビニールハウスでも、冬の寒さに備えるのか、夏の高温を防ぐのかによって必要な機器は異なります。また、コストに関しては、やはり冬季の加温のためのボイラーにかかる燃料費が大きいようです。

以上、施設園芸の基本である「促成栽培」および「抑制栽培」についてお伝えしました。農業できちんと稼ぐための工夫の一つとして、このように商品の価値を高める方法をしっかりと押さえておきましょう。

  • ▼関連記事

ライタープロフィール

【内村耕起】
宮崎県の牛農家生まれ。大学院で植物工場での廃棄物利用に関する研究に従事したのち、全国の農家を訪ね歩いてファームステイ。岩手県の自然栽培農家で2年間の農業研修を経て、現在は宮崎県の山間部の村で自給的農業を営む傍ら、ウェブライターなどもしています。








Facebook