コラム
公開日:2020.01.24
シシトウは種類が豊富なトウガラシの中でも辛みが無く甘味種と呼ばれるもののうち、果実が細長い形をしている品種群を指します。同じくトウガラシの甘味種であるピーマンと同様に青い未熟果を収穫して食用にしています。
シシトウは露地栽培の他、ビニールハウスでの雨よけ栽培や施設を加温して行う促成栽培などにより一年を通して出荷されています。高温や病害虫に比較的強く育てやすい野菜ですが、育て方が悪いと辛い実ができやすくなります。
そこで今回は整枝やわき芽かきなど基本的なシシトウの栽培方法についてご紹介していきます。
※作型は加温設備が不要で取り組みやすい雨よけ栽培を想定します。
排水性が良く保水性の良い土壌を好むので排水性が悪い場合は土壌改良に努めます。
基肥として10aあたり「堆肥を4t」、「苦土石灰を140kg」、「N、P2O5、K2Oをそれぞれ25kg」施肥します。
育苗は加温設備が必要で労力も大きく難しいため市販の苗を購入することが一般的です。
4~5月くらいに本葉が7枚程の苗を畝幅1.5m、株間60cm、条間60cmの2条植えにします。風で倒れやすいので仮支柱を立てます。寒くなり果実の肥大に時間がかかると辛い果実ができやすいので地域ごとの植え付け時期を守りましょう。
高温乾燥で強い辛みが出やすくなるので真夏のかん水が重要です。
雨の降らない施設栽培では特に水切れに注意し真夏は毎日かん水しましょう。追肥は定植1ヵ月後から2週間ごとに行います。10aあたり合計で「25kgN」、「15kgP2O5」、「15kgK2O」の肥料を与えます。
定植から1ヵ月程したら仮支柱を外して本支柱を立てます。1番花より下のわき芽は全て摘み取り4本仕立てにします。2番花のところで4本の枝になる(花ごとに枝分かれする)ため、これらを主枝とします。
支柱の上部などから4本のひもを張って、それぞれの主枝をひもに吊り下げるように誘引して盃状に仕立てます。ひもの張り具合で生育を調整することができ、ひもを緩めると生殖生長に傾き、縮めると栄養生長に傾きます。
4本の主枝から出てくるわき芽は3葉で摘心します。わき芽は同じ場所から何度も出てくるので面倒でもこまめに摘み取ることが重要です。枝が込み合ってきたら内側に向かって伸びている枝を切り取り、日当たりと風通しを良くします。
5cm程に育った青い果実を収穫します。次々と着果するのでしっかり収穫しましょう。 収穫せずにいると果実が赤くなるだけでなく、曲り果が発生したり樹勢が弱まったりします。光沢がない、ちぢれているなど見た目の悪い果実は辛い場合が多いので出荷の際には気を付けましょう。
主な病気は青枯れ病や疫病、モザイク病です。青枯れ病と疫病の対策としては連作を避け土壌消毒を行うことが重要です。モザイク病は原因となるアブラムシの防除に努め、発病株はすぐに抜き取り処分します。
主な害虫はアブラムシやハダニです。多発すると駆除は困難なので農薬や天敵を有効に利用して初期防除に努めます。
整枝やわき芽かき、収穫は大変な作業ですが後々の収量に大きく影響します。 育て方の基本をしっかりと押さえて、辛みのない美味しいシシトウを沢山収穫しましょう。
▼ 参考文献
〇主要作物の施肥基準 3野菜 24ししとうがらし、宮崎県
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/08450106chap03yasai.pdf
▼ 参考サイト
〇営農情報 野菜の栽培方法 ピーマン・シシトウ、JAつやま
https://www.ja-tsuyama.or.jp/einou/greens/index31.html
〇ししとうがらし、ホームガーデン百科、(株)アタリヤ農園
http://www.atariya.net/index.htm
〇野菜 山田式家庭菜園教室 ピーマン、タキイ種苗株式会社
https://www.takii.co.jp/tsk/y_garden/spring/piment/index.html
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。