コラム
公開日:2020.02.05
同じ場所で同じ作物や同じ科の作物を続けて作ると病気や害虫が発生しやすくなり生育が悪くなります。この現象は「連作障害」と呼ばれ、酷くなると収穫がゼロになることもあります。連作障害を防ぐには“連作を避ける”ことが重要です。
しかし、連作障害の出やすさは作物によって異なり、連作可能なものもあれば5年以上は間隔をあけた方が良いものなど様々です。前作と連作にならないようにするのは簡単ですが、何年にもわたって「栽培区画のどこでどんな野菜を作ったか」、「それぞれの野菜について連作になっていないか」を考慮しながら次作の作付けを考えることは至難の技です。
そこでご紹介したいのが「輪作(りんさく)」という栽培方法です。
ここからは、連作障害対策として作付けを考える上で効果絶大な「輪作」について、基本からご紹介していきます。
連作障害を避けるために休作する間隔(輪作年限)が3年の野菜を植えたい場合を考えてみましょう。
栽培区画を4つに分けて輪作すると、元の場所に戻ってくるのは3年間の休閑を終えた4年後(5年目)のため連作障害の心配がありません。最初に作付け計画を作れば、ローテーションしていく中に休作期間が過ぎるため、「次はどこに作付けしたらよいのか?」とあれこれ頭を悩ます必要もありません。
※輪作年限については、目次3で解説しています。
◆春作
ナス科…トマト、ナス、ピーマン、じゃがいも等
ウリ科…キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン等
マメ科…枝豆、インゲン、エンドウ、大豆、サヤエンドウ、スナップエンドウ、ソラマメ、豆苗等
ヒルガオ科…サツマイモ、ヨウサイ等
◆秋作
アブラナ科…キャベツ、大根、白菜、小松菜、ブロッコリー、カブ、ケール、カリフラワー、古カブ、チンゲンサイ等
セリ科…ニンジン、パセリ、セロリ、三つ葉、パクチー等
アカザ科…ほうれん草、ピーナッツ等
ユリ科…玉ねぎ、長ネギ、葉ネギ、ワケギ、ニラ、にんにく、らっきょう等
ここからは輪作体系の作り方について見ていきます。
農業経営を第一に輪作を行う場合には収益の中心となる野菜を基幹作物に選び、ローテーションの中心におきます。トマトやピーマン、キュウリなど好きなものを選びましょう。
輪作作物を基幹作物と異なる科から選びます。
例えば、輪作年限が3年のウリ科の作物(キュウリ)を基幹作物とする場合には、ウリ科以外の作物から、キュウリの輪作年限である3年を超えないもの(輪作年限1年、アカザ科のほうれん草など)を選びます。
野菜によっては科や種類が異なっても、続けて栽培する(連作)には相性の悪いものがあるので避けるようにします。逆に相性の良いものもあります。輪作年限の目安と連作の相性については、次の表を参考にしてみてください。
● 表1.輪作年限の目安
輪作年限 | 野菜の種類 |
---|---|
カボチャ、サツマイモ、ゴーヤ、春菊、トウモロコシなど |
|
ほうれん草、コカブ、インゲンマメ、キョウナ、タカナ、タアサイなど |
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ニラ、パセリ、レタス、サラダ菜、三つ葉、白菜、ビート、生姜、セロリ、キュウリ、イチゴなど |
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ナス、トマト、ピーマン、メロン、白瓜、ソラマメ、サトイモ、ごぼう、ハナヤサイ、クワイなど |
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エンドウ、スイカなど |
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農地の力を回復させるために、一定期間作物を作らずに休ませることを休閑といいます。(休耕ともいいます。) 例えば、ナスは3~4年の休閑が必要なので、一度栽培してから3~4年は同じ場所での栽培を行わないように注意します。
● 表2.相性の組み合わせ
作物 | 相性が良い | 相性が悪い |
---|---|---|
キャベツ、ブロッコリー、ネギ |
ナス、キュウリ、ピーマン、じゃがいも |
|
カボチャ、枝豆、トウモロコシ、ささげ |
トマト、ピーマン、じゃがいも、唐辛子 |
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トウモロコシ、玉ねぎ、ほうれん草 |
大根、カボチャ、ニンジン |
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エンドウ、枝豆、わけぎ、ネギ、トマト、キャベツ |
ニンジン、スイカ、キュウリ、ごぼう、ネギ、わけぎ、エンドウ |
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トマト、キャベツ、大根、スイカ |
ネギ、わけぎ、エンドウ |
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白菜、玉ねぎ、キャベツ |
トマト、キュウリ |
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トマト、白菜、ブロッコリー、エンドウ |
ニンジン、大根 |
|
例えば、トマトを栽培していた区画に「ナス、キュウリ、ピーマン、じゃがいも」の後作は相性が悪いので避けるようにします。
トマトの後作として相性がよくおすすめなのは「キャベツ、ブロッコリー、ネギ」です。
▼(例)
輪作で基幹野菜の病害中防除を狙うなら、太陽熱消毒を取り入れやすい野菜、天地返しを行う野菜、センチュウ対策にマリーゴールドなど基幹野菜に対するメリットから候補を絞ると効果的です。
少量多品種で様々な野菜を育てたいときは区画全体を地形や日当たりから区分けして野菜の配置を考えてみましょう。畝の見取り図にそれぞれの野菜名を書いた付箋を貼ってプランニングしても良いですね。
できあがった輪作体系が適切か検証しましょう。科のチェックだけでなくローテーションによって日当たりが遮られないかも重要なポイントです。これが正解といった組み合わせはなく様々なパターンが考えられます。ベストだと納得できるまで何度も考えてみましょう。
輪作は難しい…という場合は同じ畝で複数の野菜を育てる「混作(こんさく)」という方法もあります。混作については以下の記事を参考にしてみてくださいね。
上手に輪作を取り入れて連作障害とは無縁の健康な土壌で、子々孫々にわたり美味しい野菜を収穫し続けましょう。
▼参考文献
〇家庭菜園大百科、板木利隆、社団法人家の光協会、2008.
〇野菜だより特別編集GAKKEN MOOK有機・無農薬おいしい畑の菜園プラン、鈴木昌子(編)、株式会社学研パブリッシング、2010.
▼参考サイト
〇JA倉敷かさや
https://www.ja-kurakasa.or.jp/farming/fruit_vegetable/201802a/index.html
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。