コラム
公開日:2020.03.03
「緑肥」とは読んで字の如く緑の肥料のことです。作物を育てる前に栽培し、腐らせずに緑色をしたまま土壌に入れて耕す植物
を指します。うまく緑肥を使うと土壌の物理性や化学性を改善したり土壌に養分を供給したりと沢山のメリットが得られます。
緑肥に使える作物には様々な品種があり、作物によって使い方はもちろん得られる効果も異なるので、興味はあるけれどよく分からなくて使ったことは無いという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は緑肥についての効果やおすすめの作物、その育て方やすき込み方についてご紹介いたします。
緑肥は作物によって効果に違いがあります。ここからは「土壌の状態や悩みに合った作物」をご紹介いたします。
①保水性の向上:すき込まれた作物が団粒の形成に役立ち保水性が向上します。
・全ての緑肥、特にソルゴー、ライムギ、エンバクなどのイネ科
②浸水性の改善:土中に深く根を張ることで土壌をやわらかくして浸水性を向上します。
・全ての緑肥、特に直根、深根のクロタラリアなど
③保肥力の向上:分解された作物が腐食となり塩基置換容量(CEC)が増加します。
・全ての緑肥、特にソルゴー、ライムギ、エンバクなどのイネ科
④クリーニングクロップ:塩類を吸収して生育した緑肥を圃場外へ持ち出すことで塩類集積を改善します。
・全ての緑肥
⑤土壌微生物性の多様化:すき込まれた作物が微生物の餌になり、団粒が増えることで微生物のすみかも増えて土壌微生物が多様化します。
・全ての緑肥
⑥連作障害の軽減:緑肥を輪作に組み込んだりおとり作物として植えたりすることで連作障害を軽減します。
・ライムギやチャガラシ、カラシナなどのアブラナ
⑦土壌センチュウ害の軽減:センチュウ対抗植物をすき込むことでセンチュウ害を減らします。
・クロタラリア、マリーゴールドなど
⑧窒素の供給:大気中の窒素を養分に育つ(窒素固定能力のある)緑肥作物をすき込むことで土
壌に窒素を供給します。
・ヘアリーベッチ、クローバー、クロタラリアなどのマメ科
⑨景観美化:綺麗な花を咲かせる緑肥で景観を良くします。
・キカラシ、ひまわり、ハゼリソウなど
⑩土壌侵食の防止:作付けの無い期間に緑肥を植え付け風雨による土壌侵食を防止します。
・すべての緑肥
種類によって種まきやすき込みの適期が異なるので時期を逃さないことが大切です。種まきは地域ごとの適期に行いましょう。すき込み時期が遅くなると茎が固くなってすき込みにくくなったり種が落ちて雑草化したりするので注意しましょう。
すき込みは手作業では大変なのでトラクターのロータリー耕を利用します。1、2回すき込んだ後、1週間後にもう1度、3週間後に最後のすき込みを行います。すき込みから分解されて効果が現れるまでに約3週間かかるので、野菜などの植え付けはその後に行いましょう。
窒素固定により土壌を肥沃にするマメ科作物です。秋撒きのマメ科作物の中では最も生産量(すき込み量)が多くなります。10aあたり約5kgの種子を圃場全体に散まきします。つるが伸びすぎるとロータリーに絡まるので草丈が30~40cmのうちにすき込みます。
こちらも窒素固定によって土壌を肥沃にするマメ科作物です。丸葉と細葉の2系等がありますが夏撒きマメ科作物の中では茎が硬くなりにくくすき込みやすい丸葉系統がおすすめです。クロタラリアはセンチュウ被害の軽減効果もあります。10aあたり約5kgの種子を散まきします。播種後60~70日後にさやができる前にすき込みます。
耐寒性が強く冬に作付できる代表的なイネ科の緑肥です。すき込み量が多く有機物の供給に適しています。10aあたり約10kgの種子を散まきします。春早くからすき込むことができ、開花から結実までの期間が長いので雑草化の心配が少なくて済みます。
ハウスの前後作にクリーニングクロップとして使われることが多いイネ科の作物です。10aあたり約5kgを散まきします。生育が早く2ヵ月で2m程まで育ちます。クリーニングクロップとして使う場合はすき込まずに刈取って圃場から搬出します。
綺麗な紫色の花が咲き、開花期間が約18日と長く花を楽しむことができます。被覆も早く雑草防止に役立ち景観美化に効果的です。10aあたり2~3kgを播種します。種子が小さいので丁寧に播種し覆土・鎮圧します。播種後50~60日程度で開花し、花が終わったらすき込みます。
緑肥の種類は沢山ありますが、メイン作物にとってのメリットなど欲しい効果から考えると選びやすくなりますよ。上手に緑肥を利用して良質な土壌を手に入れましょう。
▼参考サイト
〇やまなし緑肥利用マニュアル、山梨県総合農業技術センター、2016
https://www.pref.yamanashi.jp/sounou-gjt/documents/ryokuhiriyomanyuaru.pdf
〇カバークロップ・草生栽培 栽培指針、千葉県、2012
https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/seikafukyu/documents/cover-crop.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。