コラム
公開日:2020.07.07
ここ数年で市民権を得た野菜の1つに、パクチーがあります。巷では、パクチーが好きすぎる人のことを「パクチスト」と呼ぶのだとか。栽培をしたくても、「パクチーって海外の野菜だから、日本で育てるのは難しいのでは…?」とお考えの方も多いかと思います。
そこで、今回の記事ではパクチーの育て方のポイント3つをご紹介します!
パクチーは、セリ科コエンドロ属のハーブです。タイ語でパクチー、英語でコリアンダー、中国語で香菜など、国によって様々な呼び名があります。それだけ世界中で使われているということですね。
特徴はその個性的な香りで、好きな人にとってはクセになりますが、苦手な人にとっては「カメムシみたいな臭い」として敬遠されることもあります。
日本では、ここ数年のパクチーブームが来るまであまり食べられていない印象がありますが、実は平安時代には海外から伝わっており、魚の匂い消しなどとして使われていたそうです。現在は、岡山県などに地域ぐるみでパクチー栽培に取り組む農家さんがいます。
パクチーの利用法は、地域によって異なるようです。タイやベトナムなどの東南アジア圏では、葉っぱの利用が盛んで、香りづけのためにサラダやスープなどに使われます。
ヨーロッパでは、種の利用がポピュラーで、コリアンダーといえば種のことを指します。乾燥して粉末にした種は柑橘系のような爽やかな香りになり、スパイスの1種として使われています。
また、パクチーは根っこも食べることができます。キレイに洗った根っこはスープに入れることでいい出汁が出ます。
パクチーは、種の発芽率があまり高くなかったり、夏にはとう立ちして葉っぱが固くなったりという特徴があります。栽培に失敗しないためのポイントを3つご紹介します。
パクチーは、2つの種が1つの硬い殻に包まれており、そのまま種まきをすると発芽率は低めです。そのため、種を蒔く前に殻を割っておくと発芽率を高めることができます。板でこするようにすると簡単に割ることができます。種まき前に数時間浸水させるとさらに発芽率が上がります。
また、パクチーは直根性のため植え替えを嫌います。できれば種は直播きで、ポット蒔きの場合は根が傷まないように苗が小さいうちに定植しましょう。
パクチーの種まきは、3-4月の春と9-10月の秋が適期です。春まきの場合は生育が早く、すぐに収穫することができます。一方でとう立ちして花が咲き始めるのも早いため、収穫期間は短くなりがちです。
秋まきの場合は生育がゆっくりで、その分収穫期間も長くなります。ただし冬の寒さに弱いので、沖縄などの暖地以外では屋内やビニールハウスで保温する必要があります。
花弁が形成された後に、花のついた茎が伸びていくことを「とう立ち」と言います。
春まきのパクチーは、夏季に入ると株の中心から太い茎が伸びていき、花が咲きます。花が咲くと葉っぱは硬くなり利用ができなくなります。そのため、葉っぱの収穫を長く続けたければ、花芽がついたらこまめに摘み取ることをおすすめします。ちなみに、この摘んだ花も食べることができますよ。
また、夏場はアブラムシやヨトウムシなどの虫がつくこともあるので、そちらもしっかり観察をしましょう。
パクチーは栽培の難易度はそこまで高くありませんが、販売まで考えると作付けの方法を工夫する必要がありそうです。新たな栽培品目の一つとして、パクチー栽培を検討してみてはいかがでしょうか。
▼参考文献
〇スパイス百科 起源から効能、利用法まで,丸善出版,2018年1月
▼参考サイト
パクチーカレンダー,株式会社刀川平和農園
http://www.tachikawa-heiwa.com/saibai-coriander.html
〇コリアンダー(葉)【地植え】の育て方,ハーブの育て方,住友化学園芸
https://www.sc-engei.co.jp/cultivation/details/3.html
ライタープロフィール
【内村耕起】
宮崎県の牛農家生まれ。大学院で植物工場での廃棄物利用に関する研究に従事したのち、全国の農家を訪ね歩いてファームステイ。岩手県の自然栽培農家で2年間の農業研修を経て、現在は宮崎県の山間部の村で自給的農業を営む傍ら、ウェブライターなどもしています。