コラム
公開日:2022.01.24
鮮やかな緑色と、シャキシャキとした歯ごたえが人気のチンゲン菜(青梗菜)。日本で栽培されている代表的な中国野菜で、ハウスを活用すれば、ほぼ一年中収穫することができます。今回は、チンゲン菜をハウス栽培する際のポイントについて解説します。
チンゲン菜の生育適温は15~20℃で、8~10月に種をまく「秋まき」や、2~5月に種をまく「春まき」が栽培しやすいと言われています。一方で、チンゲン菜は、葉茎菜類の中では暑さにも寒さにも比較的強いことで有名。ハウス内の温度管理を工夫すれば「夏まき」や「冬まき」もでき、周年栽培が可能です。
連作障害が起こりやすいため、有機資材などで十分な土づくりを行いましょう。生育期間が短いので、施肥は基肥が中心です。
直播栽培の場合、1穴あたり2~4粒を播種します。本葉が2~3枚になったら逐次間引きをして、最終的に1本立ちにしましょう。移植栽培の場合はペーパーポットやセルトレイに播種し、本葉2~3枚の頃に定植します。栽植密度は株間15cm×条間15cmを基本に調節してください。
ハウスの最高気温が24~25℃になったら換気を行い、高温による生育や品質の低下を防ぎましょう。最低気温は12~13℃以上をキープできるようにします。
播種・定植直後はたっぷり、その後は土壌の乾燥状態を見ながら適宜潅水します。収穫の1~2週間前からは潅水量を抑えて、収穫後の日持ちをアップさせましょう。
草丈が20cmほどになったら、根元から切り取って収穫します。種まきから収穫までの日数は、夏まきで30~40日、春・秋まきで40~60日、冬まきで60~80日が目安です。
チンゲン菜は12~13℃以下の低温に一定期間さらされると花芽ができ、そのまま開花に向かう「抽苔:ちゅうだい(とう立ち)」が起こります。抽苔すると新しい葉ができなくなり、葉や茎が硬くなって品質が低下してしまうので、できるだけ抽苔しにくい(=晩抽性に優れる)品種を選ぶことが重要です。
ハウスの内張やトンネル、べたがけ資材などを活用して、チンゲン菜ができるだけ低温にさらされないよう保温してあげましょう。一日の平均気温が約3℃を下回ると生育が止まり、低温障害が発生する恐れもあります。特に生育初期は低温の影響を受けやすいので、丁寧な温度管理が必要です。
気温の高い時期に比べると病害虫の被害は少なくなりますが、水はけが悪く湿度の高い圃場では、白さび病・べと病・根こぶ病などが発生しやすくなります。水のやりすぎに注意し、適度な換気を心がけてください。できるだけ連作を避けることや、初期の農薬散布も大切です。
チンゲン菜は、中華料理はもちろん、和食や洋食のレシピにも頻繁に登場する万能野菜です。生育期間が短く、ハウスなら作付け時期も選ばないので、ぜひ栽培に挑戦してみてはいかがでしょうか?
▼参考サイト
○チンゲン菜とコマツナの主要病害(株式会社武蔵野種苗園)
http://www.musaseed.co.jp/research/%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%81%A8%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%84%E3%83%8A%E3%81%AE%E4%B8%BB%E8%A6%81%E7%97%85%E5%AE%B3/
○熊本の野菜<耕種基準>(熊本県野菜振興協会)
https://k-engei.net/yasai/general/koushu_standard.shtml
▼参考文献
○チンゲンサイの夏、冬まき栽培における遮光べたがけ及びマルチ資材の利用効果(愛知県農業総合試験場)
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010402775.pdf
○葉菜類冬どり栽培マニュアル2018年度版(北海道立総合研究機構 道南農業試験場・上川農業試験場)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/research/dounan/publication/manual/huyuyasai_manual_2018.pdf
○野菜栽培技術指針 葉茎菜類(秋田県農林水産部)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/aki3-12.pdf
ライタープロフィール
【にっく】
農業研究所の研究員として日本全国を飛び回ったり、アフリカ・東南アジアで農業技術普及プロジェクトに携わったり…国内外の農業に関わってきた経験を持つ農学博士です。圃場作業で汗を流すのが大好き。これまでの経験と知識を生かして、わかりやすい記事をお届けします!