コラム
公開日:2020.10.20
苗立枯病(なえたちがれびょう)はトマトやナス、きゅうり、オクラやネギなど様々な野菜に発生する病気です。本葉2~3枚目までに発生 することが多く、発芽すぐや定植したての苗がバタバタと倒れて枯死 します。
※苗のときに発生したものを「苗立枯病」といい、生長したから発生した場合には「立ち枯れ病」と区別することもあります。
発病後は急速に蔓延しがちで防除が遅れると甚大な被害をもたらします。発生後に農薬で治療することは困難なため
予防に重点を置き、播種前からしっかりと対策をとる ことが重要です。
そこでここからは、苗立枯病の原因や具体的な対策方法についてお伝えしていきたいと思います。
※イメージ写真
苗立枯病の原因菌には様々な種類がありますが、野菜類では主にかびの仲間である リゾクトニア菌 と ピシウム菌 が病気を引き起こします。どの菌も共通して土壌伝染し被害作物残さと共に土壌中で越冬し次の伝染源となります。
種子伝染もします。一般的にリゾクトニア菌は
乾燥状態で発生しやすく、被害の拡大は比較的緩慢 です。一方ピシウム菌は
多湿状態で発生しやすく、非常に早く被害が拡大し薬剤での治療は困難 です。
播種前に オーサイドⓇ水和剤 などを用いた種子消毒を行いましょう。野菜類の適用病害虫は ピシウム・リゾクトニア菌による病害(苗立枯病)となっており、野菜全般の種子に使用でき便利です。
育苗には病原菌に汚染されていない新しい土を用います。資材や施設は必要に応じて ケミクロⓇG などを用い入念な消毒を行いましょう。底面給液などで育苗する場合には給液に病原菌が入ると苗の全滅もあり得るので作業には細心の注意を払いましょう。
クロールピクリンやキルパーⓇ、バスアミド微粒剤 など 土壌を燻蒸処理する薬剤を使った土壌消毒 が効果的です。
土壌消毒から播種や定植までにはかなりの日数を要するので計画的に行いましょう。リゾクトニア菌とピシウム菌では有効な薬剤が異なるため、 症状から両者を区別する ことがポイントです。
胚軸から根にかけて褐変や黒変し、深く陥没するようにくびれて倒れます。
胚軸から根にかけて緑色を保ったまま軟化・腐敗し、茎の一部がくびれて腰折れ状に倒れます。
発病株は見つけ次第、抜き取り処分するようにしましょう。早く行えば行うほど効果的です。
発芽後や定植後に発病の恐れがあるときは ダコニールⓇ1000、リゾレックスⓇ水和剤、フロンサイドⓇSCなどの土壌灌注が有効です。オーサイドⓇ水和剤 のように散布タイプの薬剤もあります。土壌消毒剤と同様に 菌によって有効な薬剤が異なる 点に気を付けましょう。
発芽したばかりの苗がバタバタ倒れて枯れていく様は想像以上にガックリくるもがあります。幸先のよいスタートを切るためにも栽培前からしっかり対策をとって苗立枯病を防ぎましょう。
▼参考サイト
〇病害虫ナビ,苗立枯病,住友化学園芸
https://www.sc-engei.co.jp/resolution/pestanddisease/photolist/details/1295.html
〇苗立枯病,一般社団法人日本植物防疫協会
http://www.jppn.ne.jp/fukuoka/boujyo/kaboku/5101.htm
〇65話 ピシウム菌による野菜苗立枯れ,シンジェンタジャパン株式会社
https://www.cp.syngenta.co.jp/cp/columns/view/?column_id=67
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。