コラム
公開日:2019.09.30
国内食料自給率3割と海外に7割の食べ物を頼っている日本。それに拍車をかけるように少子高齢化などの問題で農業の担い手不足が懸念されます。そこで、如何に少ない人数で効率よく農業をするのか、培ったノウハウをどう未来に伝えていくのか、そんな課題の解決策のひとつとして進められているのが、ロボットなどの技術を使ったスマート農業です。
この記事ではスマート農業の導入事例やメリット・デメリットなどの現状を見つつ、今後の課題についてご紹介したいと思います。
スマート農業とは、ロボット技術やICT(情報通信技術)を活用して超省力・高品質生産に取り組む新たな農業のことです。実際にスマート農業でどのようなことが行われているのかというと、農機の自動操縦や重いものを軽く持てるアシストスーツの導入、ドローンを使って除草剤を散布するなどがあります。
人材不足の解消や人件費の軽減、品質の安定化などのために導入している企業も増えてきています。始めるにあたって初期投資の問題もありますが、補助金などをうまく活用して取り入れることもできます。
実際のところはどうなのでしょうか。導入事例を見てみましょう。
うるち米の生産でミネラル資材の葉面散布時間を11.5時間から5.5時間に削減できた事例では、従来の動力噴霧機からドローン散布機を導入しました。葉面散布だけではなく、病害虫や雑草の防除作業もドローンの活用により作業の省力化、時間短縮ができました。
乳牛の搾乳で生乳生産量を473トンから896トンに増加できた事例では、搾乳ロボットとエサ寄せロボットを導入しました。コンピュータによる乳牛の管理や乳牛のストレスが軽減したことで1頭あたりの乳量が増加し、生乳の生産も増加しました。
また、1人あたりの労働時間を9.6hrから7.6hrに削減することもできました。
ピーマンの収量を12.8tから14t上げたIct活用事例では、環境測定装置、炭酸ガス発生装置、データの見える化(日照時間の例年比較・品種比較・潅水量・日射量など)を導入しました。感覚的にとらえるのではなく収量の増減を正確に捉えつつ、要因を分析して対策を行うことができたのが収穫量を上げることにつながりました。
トマトの収量を20tから29t上げたIct活用事例では、環境測定システム、統合環境制御(炭酸ガス・日中加温・オランダ式温度管理)を導入しました。生育段階に合わせた細やかな管理ができるようになったことにより、収量と品質があがりました。この事例では、機器を日中稼働させた分の経費が上がったのですが、それよりも収量と収益性が上がりました。
草花栽培の規模を70aから1haに拡大させたIct活用事例では、複合環境制御装置(室温・湿度・日射量・雨量・風速等)を導入しました。こちらも生育段階に合わせた細やかな管理ができるようになったことによる品質が向上し、温度管理や遮光も自動的に行えるようになったので、栽培面積を増やしても人を大幅に増やすことなく対応できるようになりました。
※施設園芸に関する導入事例は「全21事例」挙がっています。(平成30年度調査)
物事には一長一短が付き物、メリットだけはなくデメリットだってあります。大まかに言うと導入コストと人材です。どれだけの規模で何を望むかによって金額はピンキリですが、それに伴って初期投資費用がそれなりにかかります。導入設備やデータがあっても活用できる人材がいなければ意味がありません。
導入コストを抑える方法としては、農林水産省や中小企業庁などが行なっている補助金制度の活用やリースの活用等があります。人材に関しては、自分で学んだり、新たに人を募集するのも良いですが、既にノウハウを持ったコンサル会社にお願いするというのもおすすめです。
また、現在開発中のものや既存のスマート農業技術について記載された農林水産省のスマート農業技術カタログが公開されているので、導入前にどんなものがあるのか目を通してみることをおすすめします。
▲農業技術カタログ_一部抜粋
今回はスマート農業の導入事例や課題について紹介しました。省力化や品質向上、データの見える化や自動化に興味がある方は、ぜひ導入を検討してみはいかがでしょうか。
▼参考URL
・農林水産省、基本政策、スマート農業
<http://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/>
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。