コラム

ANSポット栽培で新規就農!人気直売所は毎日完売「トマトの食味にこだわり抜いた」美食農園ラ・ファータの半澤さん

公開日:2021.01.29

宮城県名取市の「美食農園ラ・ファータ」は地元で大人気のトマト農園です。朝採れたてのトマトが直売所に並ぶと、すぐに完売してしまいます。園主の半澤さんがこだわり抜いた食味は口コミで人気が広まり、ナポリタンで日本一に輝いたハンバーグレストラン「閖上 港食堂HACHI」に採用され、ラ・ファータのトマトを使った看板メニューが誕生しました。また、ハウスの見学に訪れる新規就農希望者や大学生たちは年間約100人以上。「半澤さんのトマトの味を目指したい!」との声が止みません。そんなトマトを栽培する半澤さんは、就農してから5年。 “ロイヤルユーザーが後を絶たない魅力の食味”とは一体どのように作られているのでしょうか?

今回はおいしいトマトを栽培する秘訣や、就農のきっかけとなったANS培地(人工団粒構造培地)を活用した「ANSポット栽培システム」について取材しました!

1.就農5年で20トン超!土づくり不要・病気知らずのANSポット栽培

現在栽培しているトマトの品種やハウス規模、反収を教えてください。

大玉トマトの「未来116ミラクル」を栽培しています。ハウスは全部で6棟あり、全部で20aほど。反収約20トンです。

就農したきかっけは?

実家の稲作を手伝いながら企業に就職し、サラリーマンをしていたのですが、小さい頃から父親の背中を見て育ったこともあり、「いずれ自分も農業をやりたい」と考えていました。ただし、自分が就農するときには稲作以外にもチャレンジしてみたいと思っていました。そんなとき、稲作の肥料や培土を購入していた関東農産から「新規就農者も挑戦できる施設園芸用のポット栽培システムが出来た」と聞き、詳しく話を聞いてみることにしました。それがトマトを栽培する「ANSポット栽培システム」でした。

このシステムは一株ずつ独立していることで、土壌病害のリスクが少なく、連作障害に伴う消毒作業も不要。土を耕す作業など土づくりの作業が省力されるため、新規就農者も取り組みやすい。また、コントローラで自動潅水できるため、ムダな潅水がなく廃液がでないとのことでした。 稲作の経験から土づくりの大変さを実感していたので、土づくりが要らないことはとても魅力的でした。

導入の決め手は?

関東農産の話を聞いた後、展示会に行って色々な情報を集め、ヤシガラ栽培やロックウール栽培も検討しました。しかし、決め手となったのはANSポット栽培システムを導入したトマト農家(後の研修先)のハウス見学に行ったとき、食べさせてもらったトマトの味でした。あまりにもおいしくて、衝撃を受けたのです。「おいしいトマトが出来るのはこれだ!」と確信し、「このシステムを使ってトマト栽培をはじめよう!」と決意しました。

初心者だったとのことですが、栽培方法はどのように学んだのですか?

福島県のトマト農家のもとで、半年間研修をしました。研修先はANSポット栽培システムを導入した施設栽培と土耕栽培をやっていたため、どちらも経験することができました。 関東農産の担当者 佐藤さんは就農後も定期的に訪問してくれたり、こまめに連絡をくれて、栽培のアドバイスをしてくれました。佐藤さんのサポートはとても心強かったです。二人三脚で一緒にトマトを作ってくれたと思っています。

ANSポット栽培システムを使ってみていかがですか?

研修先で土耕栽培も経験しましたが、やはりANSポット栽培システムを使った施設栽培のほうが楽ですね。機械で自動的に水やりも肥料(液肥)も与えてくれる。追肥もしてくれる。あとは土耕だと栽培が終わったら根っこを全て抜かなきゃいけない。これがけっこう力を使います。しかし、ポットだと簡単に根が抜けて後片付けがとっても楽です。

栽培で苦労していることはありますか?

病気とカビが一番困りますね、灰色カビとか疫病とか。発生しないように換気と消毒を徹底しています。



【関東農産の佐藤さんより】
半澤さんが栽培をはじめた当初からお付き合いさせていただいており、5年で20作以上になりますが、すべてが順調だったわけではありません。病気が広まってしまったり、定植が上手くいかないこともありました。
中でも印象に残っているのは疫病が発生したときです。台風が立て続けに上陸し、窓が開けられず換気ができなかったため、ハウス内がどんどん蒸し込み、あっという間にハウス全体へ(疫病が)広まってしまいました。病気に侵された葉っぱはすべて落ち、トマトの実だけが残っている異様な光景でした。トマトの実に問題はないため出荷されるのかなと思っていたら、半澤さんは「しっかり光合成ができていないトマトはおいしくないから」と、出荷されませんでした。半澤さんのトマト栽培へのこだわりに、改めて身が引き締まる出来事でした。



2.地元に愛される食味で「日本一のナポリタン」とコラボ!

美食農園「ラ・ファータ」の由来はなんですか?

ラ・ファータはアラビア語で妖精という意味です。妖精のようにトマトで食卓を彩ってほしい、食卓を輝かせたいという願いを込めています。

どういったルートで販売しているのですか?

農園前にある直売所での販売がメインで、残りは生協へ出荷しています。あとは地元のレストランでも採用いただいています。ナポリタンの日本一になったことがある「閖上 港食堂HACHI」は、地元でも有名なレストランです。そこの看板メニューとしてトマトを丸ごと使用した「丸ごとラ・ファータのスープナポリタン」を作っていただきました。ラ・ファータを商品名にも入れてもらって、有難い限りです。
シェフが地元の食材を使った料理を作りたいと探していたところに、どこかでうちのトマトの話を聞いたそうで、声をかけてくれました。家族みんなで食べにいったのですが、とってもおいしかったです。


(※1)2013年、11月。横浜赤レンガ倉庫で開かれた初めてのナポリタン日本一決定戦「ナポリタンスタジアム」で優勝

▲看板メニュー「丸ごとラ・ファータのスープナポリタン」



▲新メニュー「ラ・ファータのピザ風焼ナポリタン」





直売所では一日どれくらい販売しているのですか?

直売所には1日100袋くらい出しています。朝収穫したら、パートさんたちみんなで袋詰めをして、すぐ直売所に並べているので、その日の採れたてトマトです。最初は生協への出荷がメインでしたが、若い方からお年寄りまで、幅広い年代の方がロイヤルユーザーになってくださったため、今では直売がメインになりました。

部会など所属している組織はありますか?

部会に入っていないので、完全に独自でやっています。この周辺にはハウス栽培をしている農家がいないので、関東農産や研修先だった農家さんや先輩など、個人のつながりで情報を集めています。

また、毎年2月に関東農産で「土づくり研究会」という集まりがあって、全国の篤農家が一堂に会しています。忘年会のような感じですね。貸し切りのホテルで一年間の活動を報告しあったり、夜の懇親会で親交を深め、「また一年、みんなそれぞれの地でがんばろうね!」って各々のフィールドで戦ってくる。ここに参加するのが毎年の楽しみです。去年は僕もANSポット栽培システム導入の経緯や現在の取組みなど発表させてもらいました。全国に仲間がいると思うと心強いです。


※関東農産の土づくり研究会は、土耕栽培農家から施設栽培農家まで、120人ほど集まる一大イベントです。専門の先生を呼んで講演会を開いたり、関東農産の研究発表や農家の体験発表を行っています。

3.成功の秘訣は「味の追求」!トマト嫌いな農家だから作れた味

半澤さんが工夫している取組みはありますか?

ミネラルを増やすため、定植のタイミングでポットの中に“サンゴの砂”を入れています。他の人とは違う資材を入れておくことで、同じ場所で同じように栽培しても、まったく違う食味のトマトができるというのはポット栽培の魅力ですね。他の(ポット栽培)生産者も色々入れているみたいですが、みんな教えてくれません(笑)作物にとっての根域はポットの中しかないので、効果がわかりやすく、新しいことにも挑戦がしやすいです。

―なぜサンゴを入れてみようと思ったのですか?

元々畑にサンゴを入れていた経験があったので、トマトにもサンゴがいいのでは?と思い、応用してみました。それが大正解で、まったく違う旨味あるトマトができました。今も味の改良はしていて、どうしたらもっと美味しくなるのかなと日々試行錯誤しています。

おいしいと人気のトマトを作る秘訣はなんですか?

トマトをよく見ることです。日々しっかり観察しています。もうこれは趣味のようなもので、休まず毎日見ているため、家族からは「トマトオタク」と言われています(笑) 実は僕、トマトが苦手で、市販のトマトが食べられないんですよ。研修先で栽培しているトマトを食べた時、あまりのおいしさに僕の中の“トマト概念”が変わったんです。自分でおいしいトマトを作りたい!って強く思いました。だから味には絶対妥協しません。収穫時に一番おいしそうなトマトを必ず食べています(笑)

半澤さんが今目指していることはなんですか?

目指している味は、僕の師匠であり先生である研修先だったトマト農家の味目指す収量は30トン。これからハウスも増設する予定です。せっかく直売所まで買いに来てくれたのに完売になってしまうことがあるので、みなさんに買ってもらえるようにしたいと思っています。 あとは、補助事業を利用するためにも、法人化を目指しています。

新規就農を考えている方にアドバイスがあれば教えてください。

ポット栽培は土づくりが不要というのが最大のメリットです。根っこの病気も出ないので、初心者も挑戦しやすいです。僕は就農一年目で1作約4ヶ月で10トン収穫できました。
栽培の知識やノウハウも多少は必要ですが、わき芽処理や摘芯など、基礎ができていればトマト農家としてやっていけると思います。ただし、一番大事な水の管理と肥料の回数は、自動だからといって放っておいてはいけません。夏場には夏場に適した水の管理があるので、そこは手が抜けません。トマトをよく見て、適時必要な対応をしてあげることが大切です。

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(株)関東農産
ANSポット栽培システム



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今回取材させていただいたのは…

         
         

美食農園 ラ・ファータ 半澤さん
小さな頃から生き物が大好きで、田んぼのメダカや近所の猫、拾った鴨のたまごを育てていた半澤さん。マスク越しにも分かるやさしい笑顔の内には「おいしいトマトを食べてほしいから味に妥協しない」という熱い思いと、強いこだわりがありました。 自分のこだわりを貫いていく中に、「目指せ半澤さんのトマト!」と周りからの評価が高まっています。多くを語らないからこそ内に秘める思いは誰よりも熱く燃えているのでしょう。

●趣味:トマトを育てるのが趣味。 最近では淡水魚を飼ってアクアリウムを作ったり、飼育している鷹の面倒を見ることが楽しみ。鷹の名前はタカ(♂)

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ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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