コラム
公開日:2021.11.29
ハイポネックスジャパン主催「4種のBS資材を使ってみよう!」の実証試験で、実際にモニターしていただいたのは埼玉県本庄市できゅうりを生産している内野さんです。秋作のきゅうり栽培で使用していただきました。
※BS資材…バイオスティミュラント資材
◆実証区:ハイポネックスジャパン4種のBS資材(マイコジェル、ライゾー、ボンバルディア、グリベテン)を施用。2連棟ハウス(300坪)
◆慣行区:実証区のすぐ隣にあるハウス(600坪)
※補足:慣行区のハウスは日射比例で点滴潅水。実証区のハウスと潅水チューブは異なりますが、慣行区と同じ潅水頻度で日射比例潅水をしています。実証区のハウスは少し狭いため、従来の潅水チューブでもしっかり水を行き渡らせることができています。
△実証区のビニールハウス
▷マイコジェル…菌根菌が植物の根に共生することで養水分の吸収を高める他、連作によって弱った土壌などストレス環境に対する耐性が増し、病害虫への抵抗性を高めます。
▷ライゾー…植物由来の各種アミノ酸と有機酸が作物の根を活性化します。ダメージを受けた根の再生にも効果を発揮。開花期、果実肥大期、成熟期など植物が栄養を必要とする時期や、成り疲れ対策にもおすすめです。
▷ボンバルディア…『土壌構造の改良』と『作物の品質向上』、ダブルの効果が得られます。栽培過程や環境によるストレスを軽減し、作物の健全な生育を促します。
▷グリベテン…優れた浸透圧調整作用を発揮し、果実の水分や熱ストレスに起因する裂果を軽減します。秀品率が向上する他、カルシウム(Ca)欠乏症の軽減にも役立ちます。
BS資材についてどのようなイメージでしたか?
以前部会の集まりでBS資材に関する講演を聞いたことがありましたが、「よくわからない」というのが正直なところでした。今までは肥料の成分である窒素・リン酸・カリをどのように与えていくかというところを追いかけてきたので、「アミノ酸が植物に直接働きかける」「植物を元気にする」というBS資材は今までの考えから少しずれています。正直効果については半信半疑でした。
BS資材を使ってみようと思ったきっかけは何ですか?
春先にネコブセンチュウが発生してしまったことで根張りを意識するようになり、根について調べているうちに菌根菌(きんこんきん)というものを知りました。ちょうどそのタイミングでハイポネックスジャパンさんがモニターを募集していることを知ったのがきっかけです。「マイコジェルは菌根菌がわずか2週間で形成され、根張りがよくなる」というところに魅力を感じました。
実証区と慣行区の違いはありましたか?
菌根菌のマイコジェルを手潅水した実証区のハウスは初期成育がしっかりしていました。
また、枝が伸びて行く段階でも違いがありました。今年は最初の幾日かは暑い日が続き、乾燥で節間が詰まりやすい状態でしたが、急に曇天が続き温度が下がったため、徒長し始めたのです。施用していないハウスの枝は徒長でひょろひょろしていたのですが、実証区のハウスはあまり影響を受けませんでした。リン酸など養分の吸収がよくなって徒長を防いでくれたのかなと思います。樹が太かったのです。
同じ管理の中で、差をつけたのはマイコジェルの施用だけでした。“2週間で菌根菌が形成される”というスピード感のある資材なので、環境変化に間に合って根張りがよくなったのかもしれません。
根張りは目に見えませんが、どこで感じることができますか?
枝の出方とか、樹が太くしっかりしているというところで“根がしっかりしている”との判断ができると思います。
秋作のきゅうりはピンチ(摘心)したときにわき芽が出てくるパターンと、ピンチする前に出てくるパターンがあります。ピンチする前にわき芽が出て、枝を7割ほど動かせるのが理想なのですが、今回はその理想通りにすることができました。枝が伸びながらしっかり脇芽が出てきました。そうすると頭を止める前に何個か止めておくことができます。芯のすぐ近くに成る実と、頭を止めた時期が近いと一緒に実がつくのです。すると順番に種子が切れて、収穫の休みが少ないベストな形になります。
きゅうりの実に変化はありましたか?
順調です。今年は天候不順で節間が詰まり、実も詰まり気味だったのですが、実証区のハウスは節間が全く詰まらなかったです。
病害虫の変化はありましたか?
慣行区のハウスに比べると、ベト病やつる枯れ病が少なく、病害虫にも強いのかなと感じています。実証区のハウスは、変化を感じるためにパートさんには任せず自分だけで面倒をみていました。きゅうりを収穫しながら葉を切ったり、よく手をかけていたので、これも要因の一つかもしれません。
施用方法は簡単でしたか?
マイコジェルは最初の手潅水のときに倍率を決めて薬剤に混ぜただけなので、手間なく使いやすかったです。
リン酸系の資材は“他の資材と2週間空けたほうがよい”とのことだったので、定植2週間後にライゾーを散布しました。2回目はその10日後に散布。1回目は手潅水で、2回目は白いマルチを被せたあとだったので、潅水に混ぜて施用しました。1万倍とか5千倍で施用するため、ライゾーはとても長持ちします。あと5年くらい使えそうです。成り疲れの症状にも効果があるそうなので、その症状が見えてきたら使ってみたいと思います。
ボンバルディアとグリベテンの葉面散布は、10月上旬、下旬、11月上旬の計3回、消毒のタイミングでやりました。こちらも消毒のついでに施用ができたので手間がありませんでした。
ハイポネックスジャパンのBS資材を使ってみたい人にアドバイスはありますか?
初期成育でも効果は見えたし、使ってみて損はないと思います。もちろん、天候や土壌によって効果は異なると思いますが、気になる方はぜひ試してみてください。
モニターしてみていかがでしたか?
今回は定植時からの成長段階の変化が目に見えて、実証区と慣行区の違いを感じることができました。目に見える変化があると効果を実感できます。最初の目的であった“根張り”が良くなったというのを感じられたのでよかったです。
栽培終了後には株を提供し、菌根菌の状態とリン酸成分を測定・分析してもらいます。マイコジェルはリン酸の吸収を促進するため、リン酸が土から減っているそうです。リン酸過剰になりやすいきゅうり農家にとって、かなりよい話だと思います。分析結果もたのしみです。
●取材担当者より
資材の効果は「すぐには感じにくいのでは?」と思っていましたが、実証区と慣行区のハウスを見学したところ、葉の勢いに違いを感じました。やはり実証区のハウスのほうが葉が大きく、生い茂っていて「元気」でした。興味がある方はぜひご自身のほ場で試してみてください。
たとえば、グリベテンもボンバルディアも、アルカリ性の資材や農薬とは相性がよくないそうです。組合せもあるため、注意してください。わらかない場合はハイポネックスジャパンの担当者に使い方を相談してみましょう。今回関東地区担当の方に取材同行していただきましたが、栽培や病害虫対策にもとても詳しく、しっかりサポートが受けられると思います。栽培に対する知見があるメーカーは大変心強く、よきパートナーになってくれるでしょう。
今回取材させていただいたのは…
埼玉県本庄市 内野さん
父親の病気を機に就農され、きゅうり一筋に栽培しているとても真面目な農家さん。自分の栽培の形を築くまでには寝る間も惜しんでハウスに通い、細かな栽培管理で大切にきゅうりを育ててきた。
また、地域で開催される勉強会や意見交換会等には積極的に参加し、環境制御についての知識を高めてきた。同地域では環境制御に取組む農家さんは少なく、最新技術を使った取り組みをしている数少ない若手農家だ。メーカーよりも詳しいのでは?と思うほど、機器を使いこなしている。そんな内野さんの元には年上の農家たちも情報交換に訪れている。
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪